内容説明
中国の南北朝時代とは、五胡十六国後の北魏による華北統一(439年)から隋の中華再統一(589年)までの150年を指す。北方遊牧民による北朝(北魏・東魏・西魏・北斉・北周)と漢人の貴族社会による南朝(宋・斉・梁・陳)の諸王朝が興っては滅んだ。南北間の戦争に加え、六鎮の乱や侯景の乱など反乱が続いた一方、漢人と遊牧民の交流から、後世につながる制度・文化が花開いた。激動の時代を生きた人々を活写する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
117
五胡十六国から南北朝にかけての中国王朝興亡史は、十以上の国が並立した最も不可解な時代だ。英雄も大戦もなく、血なまぐさい権力闘争と滅ぼし合いに明け暮れるのが百年以上も続いたのだから。日本の戦国時代など児戯かと思えるほど激動期が長く続いたのは、政治や民族や宗教が固定化しなかった時期だからこそだとわかる。狭い日本では伝統や血統に従っていればひとまず安心な部分もあったが、広大な大陸では力だけが正義という現実が骨身にしみていたのだ。現在の共産党による容赦ない統治も、無慈悲な歴史の果てなのだと痛感させられた。2021/11/23
Tomoichi
57
三国志の時代が司馬氏の晋による統一で終わるから隋による中華統一までの時代って知識がすっぽり抜け落ちていたので購入。しかし想像以上に短命王朝と殺し合いでグチャグチャ。ある意味三国志より面白いんじゃないかな。2021/11/21
kk
57
中国が支部五裂して王朝や権力主体が目まぐるしく交代した五胡十六国・南北朝期。本書は、そんな煩雑でめんどくさい時代を対象に、限られた紙幅の中、社会や各民族の時代的な特徴などをうまく捉え、手際よくわかりやすく仕立てています。基本的な視点としては、この時代を各民族や社会勢力が相互に入り混じるダイナミックなプロセスとして受け止め、そうした攪拌の中で隋唐帝国が胎動したものと論じています。いわゆる拓跋国家論へのアンチテーゼとなっています。事の当否は分かりませんが、とにかく読み応えのある一冊でした。2021/11/19
サアベドラ
55
最新の研究成果を取り入れた南北朝時代の通史。2021年刊。著者の専門は北周官制史。北朝は遊牧民で南朝は貴族という古い見方や、近年の見立てである拓跋遊牧国家としての北朝諸王朝という見方、この2つに対し本書は北朝で行われた遊牧民と漢人の共同や南朝で創出された新しい伝統といったトピックを取り上げて、より解像度の高い見方を提示している。複雑で等閑視されがちな時代であるが、遊牧民と漢人がせめぎ合い、新しい中世的中国を生み出したダイナミックな時代であることが理解できた。無残な死が多すぎる血塗れの時代ではあるが。2022/01/05
巨峰
54
五胡十六国の話は南北朝期への導入で、南北朝のことがメイン。解りにくい時代をできるだけわかり易くその前とは違うその後の中国に続く時代であるとよく分かりました。人としては、幼い皇帝が廃位したあと尽く殺されるのが哀れを感じる。十五、六の子供ばかりなんだぜ2022/03/13