講談社学術文庫<br> 日本の古式捕鯨

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講談社学術文庫
日本の古式捕鯨

  • ISBN:9784065247204

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内容説明

本書の中心は太地五郎作氏の著作『熊野太地浦捕鯨乃話』です。古式捕鯨とそれを行った人々の思考と感情を、内部から正確に観察し繊細に表現した驚異的な著作です。国際社会からの深刻な問い「日本人はなぜ捕鯨をあきらめないのか」という問いに対して、答えるための必読書です。
捕鯨には二つの側面があります。
一つは海中を泳ぐ「富」=鯨を捕らえた後、その富を貨幣へと変えるマニファクチュアの原初形態があったことです。鯨を、肉、油、髭、骨、皮などに分けて、利用しつくすための加工過程のすべてが集合し緊密に組み合わされています。
そして、二つめが鯨を捕るという行為に、組み込まれた「戦争機械」において、人間は媒介を通さず、直接的に自然の力と戦うことです。物理的な力では鯨に劣る人間が、知力をもって集団で鯨に対峙し、執拗な攻撃を加え、鯨を弱らせ、最後に羽刺と呼ばれる若者が海中に飛び込み、一騎打ちをおこないます。その戦いで鯨を仕留めることが、この戦争機械の活動の終了地点となります。
この古式捕鯨の二重構造は、とても日本的と言えるでしょう。非農業的マニファクチュアと農業型ものづくりマニファクチュアは、「半農半漁」を営んでいた海民の生活形態の二重構造と関係が深いと思われます。
以前の輝きを失った日本のものづくりは、農業的マニファクチュアを基礎として発達をとげてきたが、その方法論は、非物質的情報産業が中心の現代では通用しなくなっているのかもしれない。
日本はものづくり、産業の根本に立ち返った自己認識を必要としている。そのとき「異形のマニファクチュア」としてそのレガシーを今日に伝える、太地古式捕鯨の本質を再考することは、未来の文化再生に向けて重要な意義を持つ。本書は、過去を追慕するだけにとどまらない、未来的な意味を持っています。

【目次より】
学術文庫版序文(中沢新一)

太地五郎作『熊野太地浦捕鯨乃話』について

原本口絵より

熊野太地浦捕鯨乃話(太地五郎作)
・太地捕鯨の起源 ・徐福来熊の批判 ・事務所の事 ・大納屋の事
・山見の事 ・沖合の事 ・勢子船の事 ・六鯨の事 ・鯨切り捌きの事
・明治十一年の大惨事
  和田金右衛門「明治十一年寅十二月二十四日 旧十二月朔日也 背美流れの扣へ」
 追 記 ・太地にて初めて洋式にて鯨を捕りたる ・きおいの式
 鯨潮を吹く吹かぬの説に就いて実例を説明して置く

熊野太地浦捕鯨の談
 昔の鯨の捕り方 ・捕鯨の起源 ・熊野捕鯨の終末の原因 ・太地にて初めて洋式捕鯨の事

鯨肉の料理に就いて

原本あとがき

鯨を捕るということ(サイモン・ワーン)

解 説 中沢新一

目次

学術文庫版序文(中沢新一)
太地五郎作『熊野太地浦捕鯨乃話』について
原本口絵より
熊野太地浦捕鯨乃話(太地五郎作)
・太地捕鯨の起源
・徐福来熊の批判
・事務所の事
・大納屋の事
・山見の事
・沖合の事
・勢子船の事
・六鯨の事
・鯨切り捌きの事
・明治十一年の大惨事
●和田金右衛門「明治十一年寅十二月二十四日 旧十二月朔日也 背美流れの扣へ」
・追 記
・太地にて初めて洋式にて鯨を捕りたる
・きおいの式
・鯨潮を吹く吹かぬの説に就いて実例を説明して置く
熊野太地浦捕鯨の談
・昔の鯨の捕り方
・捕鯨の起源
・熊野捕鯨の終末の原因
・太地にて初めて洋式捕鯨の事
鯨肉の料理に就いて
原本あとがき
鯨を捕るということ(サイモン・ワーン)
解 説 (中沢新一)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

こぺたろう

8
「熊野太地浦捕鯨乃話が本書の中心」と、紹介文にありました。「熊野太地浦捕鯨乃話」は、古書で何千円もする本だったので中々手にする機会がありませんでした。今回、文庫本という形で広く読めるようにしてもらえたことに感謝。中沢新一氏の解説も、一読の価値があると思います。2021/10/24

Go Extreme

3
『熊野太地浦捕鯨乃話』について 熊野太地浦捕鯨乃話: 太地捕鯨の起源 徐福来熊の批判 事務所の事 大納屋の事 山見の事 沖合の事 勢子船の事 六鯨の事 鯨切り捌きの事 明治十一年の大惨事 和田金右衛門「明治十一年寅十二月二十四日 旧十二月朔日也 背美流れの扣へ」: 太地にて初めて洋式にて鯨を捕りたる きおいの式 鯨潮を吹く吹かぬの説に就いて実例を説明して置く 熊野太地浦捕鯨の談: 昔の鯨の捕り方 捕鯨の起源 熊野捕鯨の終末の原因 太地にて初めて洋式捕鯨の事 鯨肉の料理に就いて2021/11/03

takao

2
ふむ2023/07/07

宮崎太郎(たろう屋)

1
前に中沢新一さんのラジオで、戦後に零戦をアメリカの自動車メーカーが解体して組み立てた時どうしても理解できない工程があった。それは西陣織の細かい工程の中に秘密があり、太地町の捕鯨の工程の技術からきてるという話しが印象に残ってようやく読めました。海からやってくる巨大なエネルギーを得るために細かく役割を振り、捕獲から解体までの流れの勇ましさ。2023/09/15

ケイケイ

1
ネットフリックスで見た和歌山で秘密裏に続いている捕鯨の盗撮ドキュメンタリー「コーブ」を見て、反対側からの視点でも学びたいと手に取った一冊。 そのサイモンワーンと中沢新一の解説も素晴らしい。 すでに失われた日本古式捕鯨にかつて存在した自然哲学とはなにかに迫る。 西洋的な捕鯨の視点からでは見えない価値観、しかし世界の捕鯨反対に勝てるわけがない中で 我々はなにを次の時代に残していくべきか、考えさせられる。2021/11/28

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