内容説明
進化論で明らかにする、心が傷つきやすい本当の理由
不安や抑うつといった症状は、一見私たちにとってデメリットにしか見えません。
しかし、これらを引き起こすメカニズムが人類の歴史の中でなぜ淘汰されなかったのか、という進化論の視点に立ったとき、それらが私たちの生存のために必要な存在出会ったことが見えてきます。
またその視点から、その機能がなぜ現代において誤作動を起こし、不安などの症状を引き起こしているのかも考察し得るのです。
つらい気持ちが存在する理由を進化論で解き明かす、画期的な進化心理学。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
19
心理学的なお話はあまり好きではなく、というかむしろ嫌いなのですが、これは面白かった。不安や鬱のような現代社会を生きる上ではネガティブな要素でしかない精神のアレコレも、ぼくたち人間が進化して今日まで生き延びるためには時として抱かなくてはならない感覚だった筈。いい年こいて自分の繊細さ=傷つきやすさをいちいちアピールする方とはお近づきになりたくありませんが、心からそうした弱さに悩まれているのなら知識として受け止め、この脆さも進化の過程で身についたんだなと許容するくらいの余裕を少しずつ育むといいかもしれませんね。2022/08/09
くらすけ
11
悲しみ、飽き、不安などのネガティヴな感情にも役割があることが学べます。繊細な人は読むと自分の性質を受け入れられやすくなるかもしれません。厚い本ですが、著者の精神科として患者と関わったエピソードはユーモアもあるものもあり、読みやすい部分も多いです2021/11/30
ATS
9
精神医学×進化生物学=進化精神医学(evolutionary psychiatry)。進化精神医学序説といった内容であり断定的なものは少なく様々な仮説(推察)が挙げられている。今後の研究が待たれる。心身が病気に対して脆弱な理由は6つ。ミスマッチ(環境についていけない)、感染症、制約(自然選択の限界)、トレードオフ(機能には利点と難点がある)、繁殖(自然選択は繁殖を最大化するのであり健康を最大化するのではない)、防御反応(痛みや不安は脅威の前では有用)。良い本であるがもう少し端的にまとめてほしかった。2022/04/14
つまみ食い
8
精神疾患を含む病気を進化を通じた適応とみなす誤謬を批判し、「なぜ自然選択は私達を病気に対し脆弱にするような形質を残したか」という問を立て、咳や発熱のような痛みや不快を伴うが人体の免疫のための機能と同様に情動を捉える視点が面白かった2024/05/18
ぱくもと
6
適応主義は万能じゃない。人間のオスは授乳しないのになぜ乳首があるのか→特に意味はない。性別決定前に乳腺ができるから不必要でも残っちゃう。うつ、病統合失調症、発達障害などなど一見生存に不利に見えるが、なんで遺伝子淘汰されないのか。適応主義滴に深い意味があるかも知れないし、オスの乳首的なものかもしれない。本書では結論は述べず可能性だけを述べる。中央値個体を作るための仕組みは必ず少数のエラーを必要とする可能性もある。勿論、あなたがうつ病なら、うつ病のメカニズムは暴走抑制装置=正常だと都合の良い解釈をすれば良い。2023/01/25
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