内容説明
魔界と化した「豊穣の海」の真実
海には陸とはまったく異なる社会があり、陸のルールは海では通用しない。そんな「無法の大洋」では、密漁や乱獲、不法投棄のほか、奴隷労働、人身売買、虐待、殺人といった犯罪行為が長年にわたって放置されてきた。本書は、決して一般の人の目に触れることのない、領海外で横行する違法・脱法行為の驚くべき実態を詳細に描いたノンフィクションである。
わたしたちが普段口にしている海産物は、店頭に並んでいる近海物の鮮魚や干物だけではない。冷凍品や缶詰といった水産加工品の原材料の多くは、グローバル化した巨大産業である国際漁業の現場からもたらされている。そして、そのかなりの部分が、目を背けたくなるような過酷な労働や乱獲などによる生態系の破壊によって得られたものだということが、本書にはこれでもかというほど描かれている。日本の消費者が好む海の幸には目に見えないコストがかかっているという「不都合な真実」を突きつけているのだ。
独立を宣言した海上要塞、公海上で行われる人工妊娠中絶、借金のかたに取られた船を回収するレポマンの活動など、知られざる海の実態を克明に描いた『NYタイムズ』ベストセラー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
DEE
13
国境も曖昧で、法の抜け道はいくらでもあるのに船に乗った人間の逃げ道はない洋上。そこで毎日のように行われている犯罪を追ったノンフィクション。著者の体を張った取材力が凄い。密漁は日常茶飯事、中絶禁止の国では法の届かない海の上で中絶が行われる。人身売買、船員への虐待と搾取、船そのものの乗っ取りなど、海の上は想像以上に暴力に満ちていた。下巻へ。2021/09/24
羊山羊
11
今年下半期のノンフィクション枠暫定1位の傑作。角幡唯介「漂流」を何倍もダークにしたかのような、金と力が支配する世界を描く圧巻の1冊。シ―シェパードの船に乗り込んで南氷洋の違法操業船を追いかける所でもう本著にぞっこん!そしてこう見ると、日本で知られる悪の姿とはまた違った、もう一つのシ―シェパードが見えてくる。海に携わる、ということはきっとこれからもこれまでもこういうことなのだろうと、肌で理解できる、超おすすめな1冊。そこには人権問題など口の端にも乗らない、アウトローの世界が広がっている。2021/09/21
mashumaro
8
これから、シーチキンの缶詰を開ける時、スーパーで魚を買う時、その安い価格を支える海の奴隷を思い出さずにはいられない内容でした。地球の7割を占める海は公の法律が及ばない世界が広がり、自分の国を主張することさえもできる。どんな無法もまかり通るが、大海においては所詮ケシ粒ほどの人間の営み。海というのは大きな恵みを与えてくれると同時に、人間を寄せ付けない世界だと痛感した。2022/04/03
勝浩1958
8
命を落とすかもしれない危険な取材と海洋における無法状態に唯々驚くばかり。それにくらべると私の日々の営みのなんて安穏としていることかと感謝したくなってきます。 ある特定の産業が抱える闇の部分を当の業界が見て見ぬふりを決め込んでいるそのことが発覚したら、世間の怒りが沸騰し、犯罪捜査のメスが入り、不買運動が起こるだろう。しかし海ではそんなことにはならない。世界中の港で毎年何億ドルも支払われる賄賂は、”非公式関税”として貨物と船舶燃料のコストに加算される。世界中で大小取り交ぜて毎年何万隻もの船が盗まれている。2021/10/17
穀雨
7
「警察の目がきわめて行き届きにくい海の上では、こんなことがまかり通っているんですよ」と告発する、ニューヨーク・タイムズ記者によるルポ。韓国や台湾の遠洋漁業船における劣悪な労働環境や出稼ぎ労働者に対する虐待には衝撃を受けたが、日本の遠洋漁業船ではどうなっているのだろうと思った。人工妊娠中絶ヨット「アデレイド」号の話は、暗い話が続く本書にあって数少ない希望の持てるトピックだったが、アメリカ連邦最高裁が人工妊娠中絶に関する立場を最近ひっくり返したことで、どういう影響を受けているのか気になった。2022/07/23




