内容説明
第二次世界大戦の悲劇を繰り返さない――戦争の抑止を追求してきた戦後日本。しかし先の戦争での日本の過ちは、終戦交渉をめぐる失敗にもあった。戦争はいかに収拾すべきなのか。二度の世界大戦から朝鮮戦争とベトナム戦争、さらに湾岸戦争やイラク戦争まで、二〇世紀以降の主要な戦争の終結過程を精緻に分析。「根本的解決と妥協的和平のジレンマ」を切り口に、真に平和を回復するための「出口戦略」を考える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
127
終わらせ方を考えずに戦争を始める奴はバカだと何かで読んだ。至言だが実際に終戦へ動き出すと、関係者は自分の名誉や政治的思惑に足を取られ最適の終わり方をとれる方が珍しい実態を歴史的に検証する。勝者は少しでも敵を懲らしめて利益を増大させようと図り、逆に敗者は責任回避と損切りに奔走するのだ。そのため「現在の犠牲の低減」を優先して戦争原因の根本的解決がされずに放置され「将来の危険の除去」がなされず、再び戦争を招く悪循環に陥る。アフガンでタリバンが政権を奪還したのも、アメリカが出口戦略を掴みかねているからではないか。2021/08/27
skunk_c
79
20世紀以降の戦争の歴史を見ていくと、いかに戦争を終わらせるのが難しいかを痛感するが、本書は「現在の犠牲」と「将来の危険」とのトレードオフな関係に対してどのような判断と対応を取って戦争が終結したかを、2回の世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争~アフガニスタン・イラク侵攻といった、主にアメリカが関わった戦争の「終わり方」を整理して検証している。やはり完璧な終結は難しく、色々瑕疵もあったが、総じて第2次大戦のヨーロッパは比較的上手く終わったとする。太平洋戦争については日本の外交力の弱さが浮き彫りになる。2022/09/12
kk
47
「紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」という視覚から、現在コストと将来リスクの均衡で戦争の終わり方を考察。よく練られた、整理の良い論旨に感心。他方、戦争のあれこれに関わる多くの要因、例えば戦争目的、政治的な行き足、戦局の実相などなどの中、なぜ「根本・妥協」軸に特に注目すべきなのか、よくわかりませんでした。新書なので定性的な説明は当然ですが、せっかくですから、ゲーム理論的な定量モデルを組んで諸要因をパラメーター化し、その中で注目要因の優越を示すといった工夫も面白いのではないでしょうか。2022/11/30
燃えつきた棒
39
ウクライナの行く末を案じつつ手に取った。 読んでみても、あまり明るい見通しは得られない。 戦争においては、権威主義国家の方が民主主義国家よりも有利なのだろうか? 戦争では、兵士の命をより軽んじた方が勝つのだろうか? 【本来軍事的に優位に立つはずのアメリカがハノイに追いつめられたのは、ハノイの損害受忍度の高さ(交戦相手よりも大きな損害を受忍する覚悟がある)にあった。一九六六年一二月、ハノイのホー・チ・ミン国家主席は「アメリカ人が二〇年間戦いたいなら、われわれも二〇年間戦う」と述べた。→2023/12/25
007 kazu
35
「紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」すなわち「将来の危険」「現在の犠牲」を天秤にかけ、優位勢力側はその終わらせ方を探るという。20世紀の戦争を事例としたケーススタディをあげる構成は新書らしく適度な平易さで読ませてもらった。前者の事例として世界大戦におけるドイツ、日本に対して厳しい条件を突きつけた例は非常にわかりやすい。戦争を始める側は本来的には上記のジレンマを見込んだうえで政治、軍事的ゴールが最初からあるはずで情勢の変化によって結果、上記のジレンマにはまり終わり方を探るということ(続く) 2025/04/08
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