内容説明
幽霊が見える大学院生・橋野は、この世に未練をのこしている彼らのために何かできないかと模索する日々を送っている。
ある日、さまよっている女性の霊を追いかけて入った能楽堂で比良坂紅苑と出会う。
そこで比良坂の舞によって幽霊が成仏する瞬間を目の当たりにしたのだった…。
恋人に自死したと伝えてほしいと頼む男の霊、別の人物の腕をもつ異形の霊、同じ松が生えている対岸の家を見つめる老人の霊……彼らが抱え込んでいる想いとは?
魂を浄化する力をもつ能楽師とおせっかいな大学院生が幽霊がかかえる謎を解く美しき幽霊譚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
真理そら
59
タイトル通り能楽師の比良坂紅苑は橋(掛)を超えて舞うとき異界に溶け込むのだが、それは僕ー大和女子大学の院生・橋野昴が見える体質だからこそ成立する。「清経」「鵺」「高砂」という演目にふさわしい迷える幽霊が登場して物語が展開していく。個人的には奈良の町の現在や能を巡る描写を楽しく読んだが、紅苑と僕の関係にBL要素はなくそれぞれの抱える家庭の複雑な事情もさらりと流されているので、読者層をどう想定しているのだろうかという疑問が残った。2021/10/11
hirune
35
【Kindle】死者を見ること聞くことができ その願いを叶えたい昴と、能を演じることで死者を浄化又は成仏させることができる比良坂。出会いからいくつかの怪奇を解決していくことで2人の関わりが深まっていく。昴は解決が出来なかった死者の思いを叶えられるし、比良坂はこの先ずっと使える有能なスタッフを得た…これはwin-winってことでいいのかな😅死者の事情が思ったより一捻りあって面白かったです。2022/04/17
あたびー
33
#日本怪奇幻想読者クラブ 男子だが女子大の院に進んだ橋野昴は視える人である。悩める霊がいるとついつい手を差し伸べてしまう。ある日キャンパスで知り合った能家元比良坂紅苑のまわりで弟子と言う訳でもなく所用を足す手伝いをすることに。能の演目と霊の抱える事情がシンクロして霊が昇華するのを目撃し、自分もその様に霊を助けられればと考えるように。木犀あこ氏は大学で能を専攻されたので、この作品は本格的な能の講釈にもなっている。奈良の街並みと幽玄な能の舞台の雰囲気が素晴らしい。そして氏のバディ物の相方はいつも怖い😅2021/10/19
のりすけ
20
霊が視え話せる昴。霊を浄化させることが出来る比良坂。奈良を舞台に描かれる、ホラーよりも文芸寄りの作品。とても丁寧な作風でこれで終わりだとしたら勿体ない。続編を希望。舞台になった女子大、うちの父が勤務してたので懐かしい。猿沢からならまち、佐保川も、私がいたころとはすっかり変わってるんだろうなぁ。2022/07/25
一五
10
若き能楽師と大学院生の幽霊譚。能はさっぱりなので、解ってないかもだが、演目に添った幽霊の浄化(成仏?)面白い。 奈良舞台なのも楽しい 第2作出ないかな~2023/10/31