内容説明
大規模な反乱が勃発し、トマス・クロムウェルは奔走する。しかしヘンリー八世は彼に不信感をいだく……。庶民の生まれながら自らの才覚で一国の宰相となり、陰謀と欲望に満ちた16世紀イングランドを生きた男を新たな視点で描く傑作歴史小説三部作、ついに完結
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
110
クロムウェル三部作の第三部。完結に向かう。2009年の第一作もその後の第二作もブッカー賞を受賞したが、2020年のイギリスのロックダウンの頃に出版されたこの作品は大変に長く、またブッカー賞のショートリストに残らなかったため、翻訳はあきらめていた。英語で少しずつ読んでいたが翻訳が出ることがわかり感無量。ウルジー卿の失脚とそれに対するクロムウェルの想いがハンマーのように響いた前二作と違い、クロムウェルの苛立ちが目立つ第三部。修道院閉鎖に絡む争いを鎮める際に、金で解決できない兵の問題があらわになる。感想は下巻に2021/09/19
ケイ
101
再読。アン・ブーリン処刑後に起きた北部を中心とする反乱や、そこに派遣された貴族らの事を少し理解してから改めて読むと、クロムウェルの責任が大きくあるとされている修道院解体や宗教改革について、これはヘンリーらの無理強いがあったことをマンテルは描き出そうとしているように思える。ローマと袂と分かったアンの死後、メアリーの方にいた貴族らは当然のようにクロムウェルは自分たち側だと思い、ヘンリーの後継を誰にするかで睨み合いが始めていたのに、ヘンリーには世継ぎができた。ジェーンが生きていたら歴史はどうであったろう2022/05/28
ケイ
99
クロムウェル三部作を、今回は三部から再読する。何度読んでも飽きないのは、役職や登場人物の名前、人間関係、宗教についてなど、???な事項が少なくなってきたからだ。さて、首なしアンの死体から後は、クロムウェルの性格の破たんが見られる。クロムウェル自らの言いたいことを、他の登場人物に言わせているマンテル。第3部の下巻に行く前に、やっぱりウルフホールに戻ってみようか。2022/09/06
kaoru
69
物語はアン・ブーリンの処刑後の1536年に始まる。王のジェーン・シーモアとの再婚、王の娘メアリと王の和解、修道院解体、ヨークシャーの叛乱の鎮圧。王璽尚書となりすべてをこなすクロムウェルの辣腕に王も全幅の信頼を置く。高い地位を得つつも醒めた頭を持つ彼は王と一定の距離を持つことを自己に命じる。彼の追想に絶えず現われるウルジー枢機卿、粗野そのものの父、疫病で亡くなった妻と幼い娘。ウルジーの娘ドロテアの「あなたが父を裏切った」という誤解に涙し、アンセルマとの娘ヤネクと相対するクロムウェル。しばしば現れる鏡と→2022/01/22
k5
58
『ウルフ・ホール』三部作完結篇。これまでの作品よりだいぶ読みにくい。ヘンリー八世への反乱が起こって登場人物が増えていることもありますが、やはりアン・ブーリンという強烈なキャラクターを失ったのが大きいかも。それでも女性が魅力的な歴史小説で、ジェーン・シーモアやレディ・メアリが印象的に描かれています。相変わらずモテすぎな観のある我らがクロムウェルですが、強烈な女性に振り回されている方が魅力的だったな。下巻はいよいよ彼が窮地に追い込まれるのでしょうか。じっくり読みます。2022/03/05
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