内容説明
ショッキングな幕切れで知られる竹本健治の「恐怖」を筆頭に、ノスタルジックな毒を味わえる宇佐美まことの図書館奇譚「夏休みのケイカク」、現代人の罪と罰を描いた恒川光太郎の琉球ホラー「ニョラ穴」、誰からも省みられないホームレス男性の最期を描いた平山夢明の衝撃作「或るはぐれ者の死」など、現役の人気エンタメ作家による力強い作品と、小松左京のアクロバティックな発想が光る怪奇小説「骨」、土俗的恐怖とフェミニズム的視点を融合させた直木賞作家・坂東眞砂子の「正月女」、耽美的なゴシックミステリーで没後も熱烈なファンをもつ服部まゆみの和風人形怪談「雛」、昨年11月惜しくも急逝した小林泰三氏渾身の一作「人獣細工」などレジェンド級の名品が、ホラー小説の豊かさをあらためて提示する。心霊・怪談系の作品が多かった『再生 角川ホラー文庫ベストセレクション』に対し、『恐怖 角川ホラー文庫ベストセレクション』にはSFや犯罪小説、ダークファンタジーなどの発想を用いた作品も収録。この二冊合わせ読むことで、日本のホラー小説の神髄を味わうことができる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
H!deking
89
このシーズンにピッタリな恐怖をテーマにしたベストセレクションですね。ハズレ無しのアンソロジーでした。夢兄のはぐれ者の死はやっぱり名作ですね。何度読んでも面白い!2023/09/04
ままこ
89
8編のミステリ度の高いホラーアンソロジー。恒川さん「ニョラ穴」タイトルから奇怪。服部さん人形の怪異『雛』、坂東さん「正月女」この因習恐ろしすぎる。どちらも狂った想いからくる執着心が怖しい。宇佐美さん「夏休みのケイカク」背筋が凍るどんでん返し。小林さん「人獣細工」マッドサイエンスホラー。平山さん「或るはぐれ者の死」理不尽さが際立ち、一番怖かった。どの作品も戦慄のラストが待っている…。2022/09/02
こら
80
待ってましたのベストセレクション第二弾。豪華作家陣がドドン!8作品とも名に恥じない名品揃いでしたが、個人的には、小松左京「骨」、坂東眞砂子「正月女」、小林泰三「人獣細工」がお気に入り。小林作品はあまり読んだ事なかったけど、この生理的嫌悪感を齎す作風は好み。あとがきによれば、『再生』が好評だったので、今作刊行に繋がったとの事。これは第三弾が待ち遠しい!2022/05/05
さっこ
79
ホラーの名手による短編8話。怪異あり悪意ありで面白かった。宇佐美さんだけ既読でした。小林泰三さんの世界はやはり没頭して読んでしまいます。新作が読めないのは本当に残念。坂東さんと小林泰三さんの作品が特に面白かった。2021/12/20
sin
78
竹本・恐怖とは…考察は一巡して新たな恐怖に行き当たる。小松・井戸掘りの際に出土した骨…発掘する死の堆積、結末は容易に察しられるが狭間へと誘う筆遣いが良い。宇佐美・同情は過去に遡り自らがさらけ出されてやり直しを迫る。坂東・病ゆえ?それとも人本来の繰り事か…人を呪わば因習に沈む。恒川・おぞましい怪物の棲まう島で…。平山・或る弱者の視点、弱者の境遇、否、人に強弱ありや?服部・俗っぽく臆病な店主が遭遇した不可思議は夢想にあった怪異に結ぶ。小林・まるで読経のように単調な独白が結末のビジョンへと引き摺っていくようだ。2022/07/07