ちくま新書<br> 北方領土交渉史

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ちくま新書
北方領土交渉史

  • 著者名:鈴木美勝【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2021/09発売)
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  • ISBN:9784480074188

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内容説明

雪解けが近づいたこともあった。しかし現在、ロシアとの交渉には冷たい氷の壁が立ちふさがり、「固有の領土」はまた遠ざかってしまった。戦後、歴代総理や官僚たちが使命感のために、政治的レガシーのために、あるいは野心や功名心に突き動かされて、この困難に挑み続けてきた。そして、ゆっくりとであっても前進していた交渉は、安倍対露外交で明らかに後退してしまったのだ。その舞台裏で何が起こっていたのか。国家の根幹をなす北方領土問題を、当時のインサイダー情報も交えて子細に辿りながら、外交交渉の要諦を抽出する。

目次

はじめに
天地人
三層構造
四つの視点
プロローグ プーチンとの〈虚ろな約束〉
口頭確認の罠
進言を無視した安倍
日露解釈ギャップ
外交と「文書」
第一章 歴史の「忘却」──宿命の対米依存
第一節 対ソ外交の原点
政と官の権力闘争
鳩山の信念「領土より人命」
鳩山外交の指南役・杉原荒太
戦後処理の段階的解決論
党人派・河野の貢献
第二節 第一の大波──官僚派対党人派の外交対立
ドムニツキー書簡──ドラマの幕開け
ダレス覚書──米国ファクターの出現
訓令一六号──日ソ交渉の下準備
鳩山・重光の溝
第三節 官僚政治家・重光葵の対ソ外交
交渉全権人事──重光の意図
「二島返還論」含む三段階案
マリクの囁き──松本全権、一瞬の期待
握りつぶされた「二島論」
第四節 自民党結党と対ソ外交
重光訪米の奇妙な旅
重光訪ソ──豹変と挫折
豹変の謎を解析する
杉原は重光をどう見ていたか
第二章 政治家の野望と北方領土
第一節 中曽根対ソ外交
ゴルバチョフとの初会談
政治家の野心をめぐる「鞘当て」
在野のブレーンを活用
プリマコフの牽制球「二島返還論」
第二節 安倍晋太郎の野望
外務官僚への五項目指示
安倍・中曽根の鞘当て
外相・安倍外し
第三節 闘論・中曽根対ゴルバチョフ
元老外交始動
ゴルバチョフのロジック
「新思考外交」のほのかな香り
中曽根の誤算
第四節 悲運のニューリーダー
安倍晋太郎の発病
「英知をもって解決しよう」
安倍「バックチャンネル外交」
幻の「二島返還・中間協定」案
安倍の死と、揺らぐゴルバチョフ政権
第三章 もう一つの「バックチャンネル外交」
第一節 ペレストロイカの風──対日「新思考外交」
ベルリンの壁崩壊直後に来日した男
ヤコブレフ「第三の道」発言の波紋
小沢の対ソ連アクセス・ライン
衆議院地下の理髪店──小沢の安倍配慮
外務省の安倍サポート
第二節 小沢訪ソの期待と誤算
ソ連の軸足は小沢に
動き出した「小沢訪ソ計画」
「新思考外交」の敗北
小沢、訪ソを決行
第三節 小沢・ゴルバチョフ会談の 末
機能しなかった「バックチャンネル」
再会談でも「ゼロ回答」
力を失ったゴルバチョフ
ゴルバチョフを遮る〝地雷〟
第四章 外務省主導の原点・変化・分裂
第一節 北方領土が最も近づいた日
ボリス・エリツィンの対日外交観
コズイレフ秘密提案
〈リーガル・マインド型〉外務官僚主導
第二節 「法と正義」志向の領土交渉
橋本龍太郎の政治主導
橋本対露外交始動
対露三原則「相互利益」「信頼」「長期的視点」
クラスノヤルスク合意の成果
的中した丹波の懸念
第三節 外務省ロシア・スクール盛衰史
「ロシア人に心の施錠を解いてはならぬ」
「ロシア・スクール」の系譜
エース丹波、ロシアとの因縁
外交血族エリート・東郷の戦い
第四節 外務省対露外交──主導構造の変化
ペレストロイカを初めて評価
外務官僚の三類型
ロシア・スクールの分裂
「二島」か「四島」か
曖昧な首相特使
ロシア・スクールなき対露外交へ
第五章 安倍対露外交──敗北の構造
第一節 「経産官僚」主導の起点
プーチン側近の訪日
セーチンのロジック
「新しいアプローチ」路線の基点
エネルギー・ファクター
「エネルギー・マン」の関与
第二節 「新しいアプローチ」形成の軌跡
谷内主導「原田政府代表」就任の経緯
安倍外交の先導役
絡む内政、絡む宗男
のめり込む安倍
谷内の「対露大戦略」
「谷内構想」を素通りした安倍
「新しいアプローチ」を提起
第三節 二〇一六年の変
高揚する安倍「道筋が見えてきた」
冷ややかなプーチン発言
安倍とプーチンの温度差
第四節 エネルギーカードの誤算
ロシアの本音は大型プロジェクト投資
ロスネフチ株争奪戦・今井‐片瀬の連携
伏魔殿──ロスネフチの暗闘
極東発展相ウリュカエフ逮捕
ロシアの狡猾さを侮った安倍政権
第五節 長門敗戦
一二・七プーチン・ダブルショック
「協議対象は五六年宣言の二島のみ」
「日本は真の独立国家なのか」
ロシア側の根拠
長門市での日露首脳会談
安倍官邸の「敗戦処理」
「四島帰属」論放棄の予感
第六章 北方領土はどれだけ遠のいたか
第一節 プーチンの切り返し
戦後日本外交の総決算
安倍三選を目指して
三度目のウラジオストク演説
安倍の挑発とプーチンの返し技
不意打ちに安倍完敗
策士プーチンの面目躍如
「東京宣言」の消失
プーチン「引き分け」発言
第二節 シンガポール合意後の後退
「饒舌外交」対「沈黙外交」
歴史問題と化した領土交渉
第三節 安倍対露外交の終焉
「北方領土」を口にしなくなった安倍最側近
「固有の領土」を封印した安倍
冷めた空気の中で二六回目の首脳会談
谷内口封じ策、宗男流プロパガンダ
安倍対露外交の「不都合な真実」
エピローグ なぜ北方領土問題は解決しないのか
菅対露外交の模索
「シンガポール合意」は負の遺産?
「四つの視点」再論──日露関係は米露関係
「ロシア史観」レトリックの罠
あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

叛逆のくりぃむ

9
 今までの北方領土交渉の系譜を踏まえて安倍政権における対ロシア外交について冷静に論じているのが見てとれた。ロシアスクールの盛衰についても佐藤優氏とはまた違った点が見てとれる。ただ安倍晋三氏の不慮の死によってロシア側も手蔓を失ってると思う。 2023/05/08

わび

3
再読。第二次安倍政権に至る日露交渉史を時事出身のジャーナリストが描く。首相中曽根と外相安倍の鞘当て、安倍政権下での「外務省外し」など著者一流の政局描写は面白さと同時に胃もたれしそうにもなるが、戦後外交最大の難題を振り返ることで、外交が成功する要諦について考えさせられるところは多い。著者は大情況、リーダーシップ、フォロワーシップ(政官の連携)の一致を重視するが、ロシアが西側との対立を深める趨勢では、四島返還の原則を棚上げした所で交渉が進展する余地があったように思えず、政権がここまで固執した真意は謎である。2024/05/09

Go Extreme

3
天地人 三層構造 4つの視点 プーチンとの“虚ろな約束”:口頭確認の罠 進言を無視した安倍 日露解釈ギャップ 外交と文書 歴史の「忘却」―宿命の対米依存:対ソ外交の原点 自民党結党と対ソ外交 政治家の野望と北方領土:中曽野 安倍慎太郎 中曽根対ゴルバチョフ もう一つの「バックチャンネル外交」:ペレストロイカの風 小沢・ゴルバチョフ会談の顛末 外務省主導の原点・変化・分裂:法と正義志向の領土交渉 安倍対露外交―敗北の構造:2016年の変 北方領土はどれだけ遠のいたか なぜ北方領土問題は解決しないのか2021/10/20

たけふじ

3
外交を推進するためには「大情況」「リーダーシップ」「フォロワーシップ=官僚/国民世論」の3要素がかみ合わなければならない。筆者の指摘するこの視座が全てである。対米偏重の外務省の中で流動性のないロシア・スクール。業を煮やしてイニシアティブを取ろうとする政治家。もうこの時点でリーダーシップとフォロワーシップが違う方向を向いている。安倍政権ではフォロワーシップの旗手を経産省に移し替えた。両者は同じ方向を向いたものの、大情況を読み切ることはできなかった。2021/10/13

tatsuya izumihara

2
1956年日ソ共同宣言を鳩山一郎が締結して以来交渉の浮き沈みがあった。阿部晋三の時点で明らかに後退している。プーチンと30回近く会談をしているがプーチンの望みは経済援助で北方領土返還の意図は無くすれ違っている。官僚と政治家のタッグも重要な要素となる。鈴木宗男が主導した方が良かった気がする。しかし現在、北方領土にはロシア人が暮らしている中で返還は現実的なんだろうか??この書籍は2島返還論、4島返還論、官僚との国内外の駆け引きが詳しく書かれている。著者の推論のある。文章表現が解りずらいところがあった。2022/02/18

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