ちくま新書<br> 地域学入門

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ちくま新書
地域学入門

  • 著者名:山下祐介【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2021/09発売)
  • 2025→2026年!Kinoppy電子書籍・電子洋書全点ポイント30倍キャンペーン(~1/1)
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  • ISBN:9784480074294

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内容説明

自分を知るには、足下の地域を知らねばならない。本書は「私」を知る学問としての地域学を提唱し、その実践として、近代化で見えなくなった地域の実像を、生態、社会、文化、歴史の側面からとらえ直す。津軽というミクロの視点から、生命の場としての地域を内包する国家というシステム全体の視点まで、さまざまな視座を往還しつつ、国家や都市の論理と対抗する生命の場としての地域を浮かび上がらせる。限界集落や地方消滅問題に挑んできた気鋭の社会学者による地域学のすすめ。

目次

序章
地域学への社会学からの三つの視角
地域を知ることと自分を知ること
つながっている世界を切り取ることから地域は現れる
特定の時空・環境に、生きている自分をつなぎとめること
大きな変化のうちにある地域と私という自覚
国家と地域の深い関係
近代化の中の地域──五十年前の姿を割り出す
Ⅰ 生命の章
1 地域が生まれる条件
生命を育む場としての地域
どこかからおとずれ、定着することから地域は生まれる──縄文時代
定着の条件──土地、水、エネルギー
小さな国としての地域の始まり──弥生時代
2 地域の原型としての江戸時代
江戸時代までに多くの地域はつくられた
地域間の格差の形成と分業化
3 生命の営みから村々を見る
折笠村の場合〈事例1〉
田茂木村の場合〈事例2〉
村のなりわい
4 町と都市を考える
生命の営みとして
城下町の土地と水──弘前城〈事例3〉
交通──食糧とエネルギーの運搬
5 地域をつなぐ道
道という生命維持装置
地域の結節点としての都市
道はさらに都につながる
都市の移動、城館の盛衰
山陽道の変遷〈事例4〉
道沿いの町の生成と記憶
6 生命の場としての地域
分業の中の多様な地域
様々な生業
生命の営みと社会・文化
Ⅱ 社会の章
1 人口集団としての地域──自然と社会
人は社会の中に生まれる
人口の量と構成を決定するもの──自然増減と社会増減
地域の人口学
2 社会の発展と地域の歴史
国が地域をつくる
国々の発生と国家統一──弥生時代の開発と戦争
ローカルな力が地域をつくる──勢力の統一化と分散化
三つの伝統的社会集団──いえ、むら、くに
家・村・国の変化としての歴史──弘前藩の場合〈事例5〉
3 家と村
生活共同集団としての家
結婚、出生、継承
家々が集まって村をつくる、町をつくる
砂子瀬村の場合〈事例6〉
山村の暮らしと家々の共同
村の集団
4 町と町内社会
町と家
上土手町の場合〈事例7〉
学校、道路、神社、アーケード
町内社会の形成とその意味
会社という家──〈家連合=村〉としての都市
5 都市と国家
都市について──みやこ、いち、まち
城下町と町々、村々
江戸・京・大坂という広域機能都市
6 近代国家と地方自治体
近代国家がつくる新たな地域
西欧からの近代化の導入
社会が一つになっていく
地方自治体の形成とその変遷
小さな国家──地域としての自治体
この国の本質はどこに
Ⅲ 歴史と文化の章
1 文化というもの
文化集団としての地域
地域と国家の力がせめぎあう構造
2 歴史と文化から村や都市を考える
大川原村の場合〈事例8〉──火流しの由来
マタギの村──山村の信仰
城下町・弘前の文化的構成〈事例9〉
都市の祭り──ねぷた〈事例10〉
都発のものと地域発のもの
方言と気質──地域に共有される物語
文化を構成する信仰と歴史
3 祈りの場
過去と未来を現在につなぐ祈り
神社のこと
地域のくらし──祈りの場と神
広域の中の神様──岩木山の場合〈事例11〉
地域の中の信仰の形を読み解く
人が神になる
氏子組織と祭祀
お寺のこと
死後の世界と祖先崇拝
人と土地をつなぐ信仰──国家と地域の強い絆
日本の神、西洋の神
4 歴史をたどる
先祖にたどる地域とのつながり
地域は歴史の中にある──文献・遺跡・遺物・神社など
地域に残る主観的資料
七戸・十和田周辺〈事例12〉
馬産、奥州街道、つぼのいしぶみ、二ツ森貝塚
過去と未来、国家とのつながりに地域を見る
文化の中に生きる──その変化の大きさを考える
5 地域を伝えていく機構
学校の機能
公民館と地域
博物館と文化行政
変化の起点はどこか
Ⅳ 変容の章
1 大変容の中の私たち
近代化を地域学の対象にする
産業化と軍事化──明治維新から太平洋戦争まで
戦後もつづく挙国一致体制
日本の人口転換と人口減少問題
生まれない社会をつくり出したもの
私たちはどこに行くのか──新しい事態
2 生命を成り立たせるものの変化
水と土地利用の変化
移動と交通の変化──小さな環境から大きな環境へ
エネルギー供給と物質循環のグローバル化
3 二十一世紀にたどりついたもの
ハイブリッドな社会と環境
人間の変容と郊外──国家と個人しかない認識へ
学校とマスメディア
地方紙について
個人と地域と国家
コスモポリタニズムと国家ナショナリズム
国家ナショナリズムから地域ナショナリズムへ
地域の殻が破られる
4 抵抗としての地域学
西欧近代化との出会いとどう決着をつけるのか
手元に問題解決する手段を確保しておくこと
地域学からはじめよう
あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

tamami

50
大学の講義を聴くような雰囲気の中で読む。著者は、この半世紀ほどの変化が、地域のあり方を根本から変え、人間存在のあり方を大きく変えつつあるという。その中で、改めて地域を知り、学ぶことの必要性を説く。始めに著者は、現在より約50年前のある地域について、命と環境、社会、文化の側面から、その原型ともいうべきものを見ていく。その上で後半は、地域の大きな変化の経緯を辿り、現在の実像を分析していく。著者は、変化の起点は西洋発の「近代化」であるという。明治以来の日本は、それに抗するために欧米的国家を絶対的なものとして造り2022/02/04

1.3manen

38
地域学とは、地域と自分を同時に学び、深めていくこと(014頁)。地域学とは、具体的な時空にいる私を、特定の生態環境のうちに照らし出していく学びの作業(016頁)。文化は過去の歴史の蓄積である。各地でなされた経験が各地に異なる記憶を刻む(198頁)。地域には歴史と文化が埋め込まれている(244頁)。総論的な本だが、SDGsの視点からみると、場としての地域、暮らしの拠点としての地域が滅びるところも増える見通し。どう維持するか?  2021/11/05

寝落ち6段

13
人は地域に生きている。地域は、人がいないと存在しない。地域とは、人の営みなのだと思う。地域を見る角度は無数にある。歴史、文化、地形、経済など。嘗ては閉鎖的な地域でも、今は国際社会の流れを受けることになっている。どこの地域で生きるのも自由だが、忘れてはならないのは、人は地域で生活を営んでいるということ。地域を知るということは、己の生活の基盤を見つめるということ。私は別にその地域に寄与すべきとは思わない。大切なのは、己はどこで生きて、生かされているかを知れということ。知って生きるのが、地域の為なのだと思う。2024/01/22

tsubomi

4
2021.12.18:著者が弘前大学の関係者なので地域といっても青森県の津軽地方に関する記載が多いです。地域学というと、「東北学」や「津軽学」など赤坂憲雄さんが提唱した多様な文化や民族の共生する日本列島とさらに多様な文化や民族の住む大陸や太平洋諸島との交流の歴史などを研究する学問というイメージでしたが、この本の冒頭から考えさせられました。‘地域’とはその人がどこを切り取るかで意味合いが全然違ってきて、切り取る人の主観が色濃く反映されるという指摘。地域を知ることで自分を知るのだという解説に納得です。2021/12/18

kayaki

2
「愛国心」とはいうものの九州出身の私にとっては九州人としての誇り、「愛郷心」の方がそれを上回っている。そもそも「国」とは、江戸時代までは”肥前国”のように日本の中の地域を指すものだった。それが明治になってnationを指すものとなった。──東京一極集中を基礎とする日本国に対する「愛国心」。もしや東京人が叫ぶ「愛国心」とは、「東京一極地域愛」ではなかろうか(※本書では言及されていません、一読者の感想です)。地方が危ない。ひいては日本の多様な文化が危ない。地域学は危機的状況の「認識装置」(304頁)なのだ。2022/03/18

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