内容説明
やがて訪れる死や衰弱は、誰にも避けられない。自分や親しい人が苦境に立たされたとき、私たちは「独りでは生きていけない」と痛感する。ケアとは、そうした人間の弱さを前提とした上で、生を肯定し、支える営みである。本書は、ケアを受ける人や医療従事者、ソーシャルワーカーへの聞き取りを通じて、より良いケアのあり方を模索。介護や地域活動に通底する「当事者主体の支援」を探り、コロナ後の課題についても論じる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
97
【推薦します!】本書は、20年近く医療福祉現場での調査研究を重ねてきた著者が、<今のところ自分自身は病や障害の当事者ではないし、対人援助職に従事してもいない素人である。そもそも、日常生活においては人に迷惑をかけてばかりで、「ケアとは何か」という大きな内容を大上段に語る資格を持っているような人間ではない>と逡巡しながらも、対人援助職の方々から教わったことなら書けるのではないか、と思い到る。著者が出会ってきた敬愛すべき援助職の人たちは、「こんなことを大事にしながらケアをしていた」という“学び”をまとめた本。⇒2022/08/12
佐島楓
77
医療施設に患者として入ったとたん、「人間」から「管理の対象」になってしまうのはなぜだろうとつねづね大きな疑問を抱いてきたので、本書に記してあるような患者の聞こえない声を聞く取り組みをしてくださっている医療者の方々には感謝しかない。共感する力が必要となる仕事は向き不向きが激しく、精神的余裕や人生経験も試されるのだと思う。見ず知らずの他人に寄り添うという姿勢が、言葉の上だけでなく感覚でも共有されるようになっていってほしい。お互いに人間である以上簡単なことではないけれど。2021/08/01
けんとまん1007
65
ケアとは人間そのものなのではと思う。人という字の成り立ちにも通じるものがある。身体性(からだ)を取り戻すこと、つながりを持つ・作る事の大切さを考える。ケアをする・されるという関係性は、後からついてくるものではないだろうか。人と人として、その場に共にいること自体に意味がある。いることが辛いこともあるが、そこで、何かを感じる感性だ。つながり・関係性を持つことが自立だという視点も、以前、どこかで眼にした記憶がある。改めて、そのことも考える。2023/02/07
フム
38
人間は自力では生存することができない未熟な状態で生まれる。誰かの支援を必要とする弱い存在であるということが、人間の出発点であり、本質であるということを筆者の言葉で再認識した。本書は医療や福祉の現場で実践するケアラーを読者として想定して書かれている。しかし、人間の営みとして誰もがケアしたりされたりしていることを考えると、本書で書かれている内容は全ての人に大切なことだと思った。2021/10/30
ケイトKATE
29
ケアについて、著者は初めに”ケアとは生きることを肯定する営みだ。たとえ大きな苦痛や逆境の果てに、定めとしての死に至るプロセスであったとしても、生を肯定する。”と書いている。これについて私は同意できる。また、ケアにおいてコミュニケーションやサインをキャッチする大切さも理解できる。出会いの場を作り、小さな願いごとを大切にするのも重要である。本書では社会において、ケアの大切さが分かりやすく書いている。もっとも、ケアをより良く受け入れるためには、社会を覆っている生産性や効率性との決別が必要ではないかと思う。2021/11/12