内容説明
森林と災害のつながりは,日本人にとっては馴染みあるテーマであり,気候変動に伴う斜面崩壊や土石流災害が多発する現在,さらに関心は高くなっている。森林がもつ防災・減災機能のなかでも本書で扱った水土保全機能は古くから注目され,研究も進められてきた。一方で,過去の研究の多くは小流域における皆伐実験であり,細かな水文・地形変動プロセス,樹種による影響の違い,間伐による密度管理の効果,下層植生の影響などは評価されてこなかった。本書では森林における水の動きに着目し,森林における水収支,森林からの流出と斜面崩壊,土石流災害,河川と森林,津波と海岸林,原発事故について,上記諸点も加味した最新の知見を紹介する。
目次
序章 森林と災害
第1章 水循環に及ぼす森林の影響
第2章 表層崩壊
第3章 土石流
第4章 河川における水害と樹林
第5章 海岸林の津波被害と津波被害軽減機能
第6章 原子力災害がもたらす森林‐渓流生態系の放射性セシウム汚染
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナクマ
24
(序章_p.3)生態系が災害外力に対して抗する力は、いわゆるコンクリート構造物と比べて弱い。また、遷移と撹乱、さらに人為的管理によって変化するため、これらをどうやって客観的な機能評価に組み込んでいくかは非常に難しい課題である。◉自然へのダメージをいかに少なくし、かつ、いかに恩恵を享受するか。もちろんムシのいい話なのだが、人類はそうやっていくしかない。問題は、そのギリギリの境界線が、人の数・時代の数だけあることで。だから、科学という共通認識が必要。◉水循環、表層崩壊、土石流、河川水害、海岸林、セシウム汚染。2019/11/24