内容説明
【第69回芸術選奨 文部科学大臣新人賞(文学部門)受賞作】チベット、台湾、クアラルンプール、京都……。言葉の魔力がいざなう、アジアへの旅路。はるかな歴史を持つ僧院で少年僧が経典の歴史に触れる「……そしてまた文字を記していると」、雨降る村でかつて起こった不思議な出来事を描く「Jiufenの村は九つぶん」、時空を超え、熱帯雨林にそびえる巨樹であった過去を持つ男の物語「天蓋歩行」など、アジアの土地をモチーフに、翻訳家でもある気鋭の著者が描く、全五編の幻想短編集。
目次
……そしてまた文字を記していると――チベット
Jiufenの村は九つぶん――台湾、九フン
国際友誼――日本、京都
船は来ない――インド、コーチン
天蓋歩行――マレーシア、クアラルンプールほか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ふう
80
アジアの五つの地域に5つの物語。「…そして、また文字を記していると」墨で書かれた文字が意味を持ち、命をもっているかのように動き、世界を造っています。その幻想的な情景と描写の美しいこと。ケン・リュウの作品でも感じた、言葉や文字の力に通じるアジアです。最後の「天蓋歩行」。東南アジアの熱帯雨林が醸し出す濃い熱気と湿気に『間昼間は逢魔が時』となり、森なのか人なのか、人以外の何かなのか区別のつかない世界に入り込んでしまいます。台湾の村の物語も独特の雰囲気で好きです。2021/08/09
エドワード
41
多彩なアジアの風土をめぐる旅。音の捉え方が独特だ。極彩色の異国の仏を祀るチベットの灰色の僧院。台湾の九份は雨の町。クアラルンプールとは泥の川の合わさる町という意味だ。湿潤と乾燥、岩山と森林、様々な視点から眺める町の成り立ち。日本は確かにアジアの一角だ。日本(京都)の章だけは学生たちが主人公となり読みやすくなる。イライラするiritate、リスらしいsquirrel、言葉遊びの面白さ、東大寺お水取りから考察する混淆する文化の奥深さ。筆者・谷崎由依さんの名前を中国語で訛ると<国際友誼>と聞こえるのには笑った。2021/10/25
まさ
28
谷崎由依さん初読み。1編目のチベットの情景から魅了された。そして音の使い方にも。アジアの5つの地で感じるその地らしさ。訪ねたことのない地でも谷崎さんの言葉が誘ってくれる。言葉の魔力か、そこから見える世界はきっと自分にしか見えていないのだろう。共読であっても少し違う世界が見えているかのような、夢を見ているかのような読後でした。何度も読んで情景を映し出していきたくなるなぁ。読みやすかったのは3編目。谷崎さんの音が出てくるとは!2021/11/20
秋良
24
湿度が高い東南アジアの空気が立ち込めるような、霧の向こうの風景を透かし見るような不思議な短編集。日常の世界からほんの少しずれている。チベットの僧院が舞台の第一話で何か変だなと思ったら全話変だった。乾燥してるはずのチベットですらなんか湿気がある気がした。ねちっこいのとは違うんだけど……なんなんだこれは?2026/03/18
小太郎
23
この本はジャケ買い、アジアの紀行エッセイかなと思って読んだんですが、これがゴリゴリの純文学短編集でした。ルビやオノマトペをアルファベットにしたり独特の感性表現や言葉遣いは新しい感性を感じました。物語を紡ぐときにはいろいろな方法があるしここの小説群は彼女の方法論から作られたものだと思います。但し自分には合わなかったのは残念。舞台になった私の大好きなチベット、台湾、京都、インド、マレーシアなどの土地の匂いが全く感じられなかったのはどうしてかなと考えてしまいました。ジャケ買いもたまには失敗。2021/08/25
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