内容説明
考古学は物的証拠を手掛かりに、過去の人々の行為を再現する学問だ。したがって石器時代や縄文・弥生などの古い時代だけでなく、近現代までもが研究対象となる。もちろん物的証拠も幅広く、銃弾といったものさえ証拠になる。犯罪捜査さながらにスリリングな学問であり、時には一国の歴史を書き換えることすらある。アメリカで長く国民的英雄とあがめられていた将軍の遺跡が、実は先住民への暴力の跡だったことが分かった「リトルビッグホーン古戦場」などは代表的事例だ。歴史の生き証人を足元から掘り起こす考古学。その魅力を余すことなく伝える、読んで楽しい入門書!
目次
Ⅰ 考古学はどんな学問か
考古学はどんな学問か──その現状と未来
無文字史学と文字史学
今日の日本と旧石器捏造問題
Ⅱ 縄文文化を復元する
貝塚の調査
魚骨の研究
縄文人の食べ物
よみがえる縄文の文化伝統
漆を使いこなした縄文人
縄文工人の世界
縄文人と数
Ⅲ 歴史考古学の広がり
犬猫・大名・ぜに
六道銭に見る江戸時代の銭貨流通
手のひらの中の国家
古戦場の考古学──最近のアメリカ歴史考古学の新しい試み
歴史考古学の発達と考古学の未来
おわりに
初出一覧
解説 時空を超えて考古学の面白さを究める(櫻井準也)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんがく
13
古今東西、様々な歴史的事実を遺物を手掛かりに明らかにしていく様は見事。縄文時代を扱うにしても、食事などのよく見るテーマから、数の認識などのなかなかヨソでは見かけないテーマまで。歴史学の人間として、先史時代以外についても積極的に考古学の成果を利用していきたい。2021/04/19
さとうしん
11
標題作の第Ⅰ章で、文字通り考古学はどんな学問か、考古学ではどういう発想をするのかをザックリ語ってくれる。冒頭のトイレの種類と配置の例えが秀逸。実の所考古学にまつわるエッセー集という趣きだが、縄文時代の食料事情が意外と安定していたのではないかという評価、縄文土器から見出せる縄文人の数に対する意識、アメリカで先史考古学が人類学の中で扱われる背景などを面白く読んだ。2021/02/26
乙郎さん
5
考古学の入門者を何冊も残している日本考古学の第一人者によるエッセイ風味の集成。タイトル通り考古学とは何かについて書かれているのは最初のみで、それ以降は筆者の専門である縄文時代の貝塚から当時の生活様式を探る様子や、縄文漆、土器の型式から聖数へ。後半は歴史(文字時代)考古学のきっかけから始まり、古銭からわかる江戸幕府の経済対策、アメリカ歴史考古学と日本の比較など。縄文時代は専攻してなかったのだけれど(難しかったし)、やはり読みものとして面白かった。2024/02/04
星乃
3
面白すぎる。縄文時代は貝塚のイメージがあったが、種実類を多く摂取していたり、すでに漆工芸を体得していたり、魚醤を作ったり、数の概念もあった(かも知れない)。たしかに、弥生以降の稲作導入により食料を安定的に確保できるようになったが、縄文は縄文で、今日、我々が想像するほど飢えていたわけではなかったようだ。他にも、江戸の古寛永通宝の流通やアメリカの古戦場にまつわる考古学の事例など、興味深い。2024/10/21
あんどうれおん
3
ベテランの考古学者が、自身の専門分野を中心に幅広く考古学を語った一冊。過不足なくタイトル通りの良書です。ものの状態をたよりに状況を考察する流れの解説が特に面白いと思いました。魅力いっぱいの領域を真剣に楽しんだ著者の様子が伝わってくるようです。2022/09/19
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