帝国大学の朝鮮人 - 大韓民国エリートの起源

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帝国大学の朝鮮人 - 大韓民国エリートの起源

  • ISBN:9784766427356

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内容説明

何のために日本へ旅立ち、韓国・北朝鮮で何をなしとげたのか?
留学生たちの激動の歴史

近代日本のエリート養成所であり、朝鮮独立運動の水源地でもあった
帝国大学で学んだ朝鮮人たちの足跡がはじめて明らかにされる
韓国のベストセラー歴史書
▼1945年の解放以降、大韓民国の樹立にさまざまな人々が参加した。そのうち左右を問わず、近代日本のエリート育成装置であった帝国大学に留学した朝鮮人は欠かせない存在であった。彼らの多くは帝国日本の官僚として服務し、帝国の先端知識や官僚の経験を元手に、1945年の解放後も韓国と北朝鮮の行政、経済、司法、知識体系に大きな影響を及ぼした。もちろん帝国大学に留学した全員が出世をねらう官僚になったわけではなかった。急進マルクス主義の洗礼を受けて変革運動に飛び込んだ人物もいたし、世俗的な成功と時代の制約の間で葛藤し、学問の道に進んだ人物もいた。

彼らは解放後の大韓民国の社会に有形無形の影響を及ぼし、いまもなお亡霊のように浮遊している。本書は、植民地時代に日本に留学した朝鮮人たちが、なぜ留学し、何を学び、戻って何をしたのか、著者の長年の調査と入念な資料・文献の渉猟によって明らかにする。

巻末には東京帝国大学と京都帝国大学の朝鮮人留学生名簿を掲載。

目次

日本語版序文
はじめに
 
プロローグ──玄海灘を渡った青年たち
 植民地留学生の苦悩、志士か出世か?/植民地(人)/帝国(エリート)の間の分裂/帝国大
 学朝鮮人留学生の集団伝記

第1章 帝国大学──近代日本のエリート育成装置
 ヨーロッパ(ドイツ)の大学を翻案する/法学部エリートが支配する国/新人会、あるいは抵抗
 と転向の精神構造/帝国大学とノーベル賞、そして講座制

第2章 京都帝大の朝鮮人学生、帝国の事業家になる
 大阪工団に魅了された植民地の少年/民族企業家か、帝国の反逆者か/帝国大学という社
 会資本/「京城紡織奨学生」と階級再生産

第3章 帝国大学に留学した朝鮮人たち
 日本「内地」の帝国大学を選んだ理由/帝国大学朝鮮人留学生の規模/帝国大学の玄関口、
 旧制高校/帝国大学の学生は特権階級?

第4章 官費留学と帝国の奨学金
 貧しい帝大生/日本帝国の官費留学生/官費留学生は親日派か?/人間的な厚意と帝国の
 利益のあいだ/自疆会はなぜ朝鮮人学生を支援したのか?/自疆会の奨学金をもらった留学
 生

第5章 寮生活──帝国エリートのアイデンティティを育む
 大学予科としての旧制高校/寮という特殊な共同体/バンカラ/ストーム/デカンショ節/旧
 制高校生の読書/帝国大学の入試/勉強と娯楽と恋愛

第6章 帝国大学の教授たち
 帝国大学のキャンパスの風景と教授たち/吉野作造と金雨英/河合栄治郎と李東華/河上
 肇と延禧専門学校・普成専門学校の商科/藤浪鑑と尹日善

第7章 総督府の特権層となって帰ってきた朝鮮人たち
 帝国大学の朝鮮人留学生の進路/植民地版の科挙、高等文官試験/行政官僚たちの弁
 明/司法官僚たちの弁明/高秉國、あるいは例外的人間/植民地官僚たちの解放以降

第8章 植民地人、科学技術を通じて帝国の主体を夢見る
 科学者と祖国/植民地版「文科ですみません(ムンソンハムニダ)」/差別を克服する「科学」フ
 ァンタジー/植民地文学が描いた科学技術者/京都帝大の二人の朝鮮人教授/科学者の選
 択──道徳と合理のあいだ/李升基の科学は道徳的か?

第9章 帝国の知で帝国に抵抗した人々
 星になった青年、宋夢奎/「熊」と呼ばれた闘士、朴英出/劉亨植、帝大出身の小市民の肖
 像/親日派の父と左翼の息子/学生運動の大学生から総督府警察に/マルクス主義者か
 らピンク映画ブローカーに

第10章 女人禁制の領域、帝国大学に進学した朝鮮人女性たち
 帝国大学に登場した女子学生たち/辛義卿、帝大初の朝鮮人女子留学生/趙賢景、九州帝
 大最初の女子留学生/金三純、最初の女性農学博士/梨花女子専門学校と帝国大学/申
 眞順、北朝鮮の文学芸術を動かした帝大生

第11章 植民地人たちの帝国大学同窓会
 連合学友会から帝国大学同窓会に/関東大震災と一九二〇年代の京都学友会/『学潮』と一
 九二〇年代の帝大留学生の認識/『同窓会報』と植民地後期の帝大生の認識/植民地留学
 生会から帝国の地方郷友会に

第12章 帝国大学の留学生は解放後に何をしたか
 大韓民国臨時政府と「行政研究委員会」/帝国大学法学部と制憲憲法/「四捨五入改憲」と
 帝大出身者/権力と知識人、二人の同窓のそれぞれの処世/閔寬植と高校平準化/帝国
 大学と「文学」の社会的地位

第13章 大韓民国の知の再編を主導する
 帝大出身者と解放後の教育・学術/植民地の清算と「国大案」騒動/「教授自治」の理想と虚
 像/日本の知からアメリカの知に/「朝鮮学」から「韓国学」に

第14章 北朝鮮の知の制度を確立した帝国大学の卒業生
 金日成総合大学の創設/「愛国米」と「人民の大学」/帝大出身者が金日成総合大学に行っ
 た理由/日本の知からソ連の知に/崔應錫の医療システム

エピローグ──「帝国大学留学」の歴史化のために

原注 

 訳者あとがき
 付録 東京帝国大学・京都帝国大学朝鮮人学生名簿
 人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

崩紫サロメ

19
植民地時代、帝国大学で学んだ朝鮮人たちは何のために学び、後の韓国・北朝鮮に何をもたらしたのか。韓国でベストセラーとなった本書は、帝国大学という知の制度と関連した近代韓国の経験を道徳的な二分法ですべて「悪」と規定し、それを「摘出」すれば問題が解決するかのような姿勢を批判し、帝国大学が韓国社会に及ぼした影響の実像を「歴史化」する作業を試みる。本書が描き出す学生たちの像は多様で葛藤に満ちており、それを安易に類型化することの危険性を感じさせる。少数ではあるが帝国大学で学んだ女学生について触れていることも興味深い。2021/06/21

BLACK無糖好き

18
植民地時代に日本の帝国大学に留学した朝鮮人エリートたちの多くが、解放後、韓国と北朝鮮の国家形成に大きな役割を果たした。個々人の生きた証を丹念に辿りながら、その歴史の一端を照射する(あくまでも歴史の側面にすぎないが)。本書にもよく登場する任文桓の回想録を思い出す。◇韓国の憲法起草委員をはじめ、やはり帝国大学法学部出身者の活躍が目立つ。金日成総合大学の招聘に応じた帝大出身者もいる。高待遇だったようだ。また、北朝鮮は韓国からエリートをかなり拉致したが、それは巻末の帝大朝鮮人卒業生名簿からも散見される。2022/03/15

とりもり

5
タイトルから勝手に京城帝大の話かと思ってたら、旧帝大全てを卒業した当時のエリートたちの話だった。これほどの留学生が帝大で学んだということも知らなかったし、主に官僚や教育者として戦中・戦後ともに韓国(そして北朝鮮で)活躍したということも知らなかった。もちろん植民地出身ということでいわれのない差別を受けることも多かった筈だが、同時に恩師や同僚との別け隔てのない交流などの心温まるエピソードもあり、非常に中立的な立場で叙述されている点に好感を持った。日本人でも珍しかった女性の留学生がいたことも驚き。★★★★☆2022/10/10

カラコムル711

3
あまり取り上げられてこなかった史実を掘り起こしたことに興味を持った。特に日本の帝国大学に進学した朝鮮人女性がいたとは驚いた。今後もさらに研究を広げ深めてもらいたい。 2022/02/13

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