内容説明
病院で二つの文化が一つの命をめぐって衝突したとき、何が起きたか。異文化の患者へのケアの意識を塗り変えた傑作ノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐倉
12
患者と医者が全く違う文化・自然観を持ち言語すら通じない場合、何が起こるのか?1980年代のアメリカで起こった衝突を元に描き出していく。タイトルはモン語の”カウダぺ”を訳したもの。てんかんという現象に対して、近代医学はニューロンの放電と解釈するがモン族は精霊によって選ばれたシャーマンの資格を持つものと解釈する。近代医療側は「なぜ言う通りにしないのか」、モン族の家族は「なぜ娘の体と魂を傷つけるのか」とお互いへの疑念と憤りが積み重なっていく。正解ではなく納得、著者の言う”共通の言葉”を見つけだすことは難しい。2024/05/31
yooou
8
☆☆☆☆★「グラントリノ」に登場するモン族の人々はCAIに先導され共産主義と戦ったひとたちだった。モン族は文字を持たず英語も話せないままアメリカに移住。重い癲癇に苦しむ娘を持つ家族は、医療機関と思い違いにより対立していく。なんというお話なのか。激しく感情をゆさぶられました2022/01/26
ミムロ犬
4
西洋医療とモン族患者、またはその伝統医療との衝突を描いたノンフィクション。こういう異文化の軋轢を描いたものによくあるように(一方の側から見たら)突飛な行動の描写にクスッとくる箇所があると思えば、患者の状態悪化にともなって医者と患者家族の関係が切迫した状況になりもする、かなりスリリングな一冊だ。 この本が描く文化共存への眼差しは必読だ。異文化を許容しましょうという無内容なものではなく、西洋医療もまた「異文化」に過ぎず、エスニックな背景を持つ医療を患者に押し付けているかもしれない、という自覚を促している。
ori
2
いやーーー。これ素晴らしい本だった。副題に「医療者とモン族の患者、二つの文化の衝突」とあるそのままの内容で、80年代アメリカ、てんかん発作で運ばれたモン族の小児患者、その両親と医療者の長い闘いと苦悩のノンフィクション。モン族とは何者か?その歴史的・社会的・文化的な背景もきちんと説明があってわかりやすい。端的に言えばラオスの山岳農耕民族。難民としてアメリカに移民。時間の感覚等も違ったから、英語が通じないという以上に江戸時代の人と西洋医療のアメリカ人医師が話をする感じで全くお互いに通じない…2022/11/01
あん
2
すごい本!著者の真摯さ。良い書籍をありがとうございます。おかしなものでアメリカ人にもモン族にも本気で腹が立ってきて疲れちゃった。読んでいて、歴史の話の時はハラハラしたけど、リー家のシーンになると無意識にホッとしていたのはやっぱり愛の存在の有無なのか。2022/06/16