内容説明
幕末師走。長州藩の志士山尾庸三と伊藤俊輔は、夜の九段坂で暗殺を決行した。義挙と信じていたが、改革派の村田蔵六から厳しく叱責される。翌年、二人は村田の助力で仲間と密航、ロンドンでその先進性に驚愕した! だが帰国してみると、世は守旧の激徒が暗躍し、村田の身にも危機が――。時は流れ、ハルビン駅頭。韓国併合に反対の伊藤が、凶弾に斃れる。〈天誅〉を主題に描く渾身の歴史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みこ
19
伊藤博文主人公の小説は初読みかも。私は歴史小説の評価ポイントに文章の熱量を重視しているが、本作は紛れもなく熱い。伊藤の長州愛の強さが読み手をグイグイと惹きつける。ただ、それがかえって仇となったのか少々尺が短くないだろうか。明治編をほぼすっ飛ばしたのは良いとしても、ダイジェスト感が否めなかった。2021/10/16
hukkey (ゆっけ)
13
正義と疑わず塙を誅殺した伊藤俊輔(博文)が、長州五傑でイギリスに密航し先進国の情勢を目の当たりにして帰国、命を狙われる側になりつつ開国と和平のために奔走し凶弾に倒れるまでの姿を、山尾庸三や村田蔵六(大村益次郎)の目線も交えて描いた物語。所々姿を隠すため史実が追いづらかったけれど、維新国家のために尽力する背中に徐々に昔の後悔が滲んでくると、現代にも訴えかけるものを感じた。皆言っているから殺る、その正否は他者(天)任せ。先を見据えた信念もないから長続きしないことに気付き、矛先を努力に変えた功績に説得力がある。2021/10/05
GOTI
4
☆★明治維新のころを扱った作品はいくつか読みました。本作は当時熱病に冒されたがごとく流行った「天誅」を伊藤博文の生と死に絡めて描いています。1863年攘夷派の伊藤俊介(後の博文)と山尾庸三は国学者の塙次郎を天誅と称して暗殺する。翌年二人は英国留学し彼我のあまりの違いに驚愕した。帰国した伊藤は開国派に転向する。時は流れ1909年、ハルビン駅頭で伊藤は安重根による「天誅」凶弾により倒れる。それにしても女遊びが過ぎて明治天皇から諫められた伊藤や尾去沢銅山汚職まみれの井上薫を美化しすぎているような気がします。2022/01/26
nonbiri nonta
1
伊藤博文が主人公。 山尾庸三とかもう少し活躍の場があるかと思っていたけど。 国家混乱時のテロリズムが何を生み出すのか(生み出さないのか)、いつの世も正義はひとつではないけれど、格好良く言えばその中でどの道を進むのかの選択が政治であり、身もふたもなく言えば勝てば官軍。2021/11/27