筑摩選書<br> 日本回帰と文化人 ――昭和戦前期の理想と悲劇

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筑摩選書
日本回帰と文化人 ――昭和戦前期の理想と悲劇

  • 著者名:長山靖生【著者】
  • 価格 ¥1,595(本体¥1,450)
  • 筑摩書房(2021/08発売)
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  • ISBN:9784480017291

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内容説明

西洋文化を旺盛に摂取しつつ繁栄を遂げてきた近代日本は、昭和期に入ると急速に「日本回帰」へと旋回する。そのうねりのなかで文学者や思想家たちもまた、ときにそうした運動の主導者となっていった。和辻による日本古典美の称揚、保田らの「日本浪曼派」、北原白秋や斎藤茂吉の戦争詩歌、そして三木の東亜協同体論や京都学派の「世界史の哲学」――。戦後タブー視されがちであったこれらの作品を、当時の時代状況や彼らの内的論理に注目しつつ読み解き、「日本的なもの」の核心に迫る意欲作。

目次

はじめに──危機の時代における心理と思考
第一章 西洋憧憬と日本への思慕
欧化への抵抗──佐田介石の内外対比論
政教社の国粋主義
陸羯南──日本主義と国民の自由
岡倉天心──「アジアは一つ」の真意
新渡戸稲造──『武士道』の日本人
国家社会主義という第三の道
水戸学、ファシズム、皇国史観──錯綜する国家観
第二章 文学者たちの「日本回帰」
プロレタリア文学から文芸復興へ
保田与重郎と「日本浪曼派」──敗北の美学
永井荷風──無関心という抵抗
谷崎潤一郎──政府に睨まれた日本礼賛
堀辰雄──柔和で毅然とした抵抗精神
横光利一──反転する西洋憧憬
太宰治──アイロニーが世界を包むとき
坂口安吾──日本文化称揚の欺瞞性
第三章 戦意高揚する詩人たち
近代詩歌と軍歌──日本軍歌の哀調
日清戦争──与謝野鉄幹、正岡子規
日露戦争の記憶──夏目漱石、森 外、与謝野夫妻
北原白秋──南蛮趣味から戦争礼賛へ
萩原朔太郎──故郷との和解を夢見て
三好達治──死にゆく同胞への供物
高村光太郎──軍神を讃えねばならぬ
折口信夫、斎藤茂吉──国亡ぶを歌う
第四章 日本文化観の模索
国策としての「国民精神文化」
和辻哲郎──世界文化史への架橋
大川周明──アジア主義のジレンマ
中河与一──モダニズムから第三世界共闘ロマンへ
九鬼周造──「いき」という諦念
阿部次郎──人格主義から見た日本文化
第五章 日本精神と変質する科学主義
イデオロギーとしての日本精神
進化論と優生思想──加藤弘之、丘浅次郎、永井潜
愛国化する「科学」──中山忠直の日本学
生気説への接近──小酒井光次と哲学者たち
有機体としての国家──西田幾多郎の「安心」
第六章 大東亜戦争は王道楽土の夢を見るか
西田幾多郎──修正案としての「世界新秩序の原理」
田辺元──飛躍的想像力と国家構想
三木清──回避努力と妥協的協力
京都学派──「近代の超克」と「世界史的立場」
終章 それぞれの戦後
死んだ者、生き残った者
三木清の戦後獄中死
占領期検閲と横光利一
東京裁判を免訴された大川周明
「日本の悲劇」を課題化した和辻哲郎
亀井勝一郎が戦後改稿に込めた思い
保田与重郎の孤独、中河与一の硬直
「近代の超克」の清算としての『本居宣長』
あとがき
主要参考文献
人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ぷほは

3
勉強になったし在野の文筆家である著者に対して問題設定の厳密さや方法意識の欠如などを指摘することに、余り意味はないだろうが、ネットを軽く巡回すれば手に入りそうな記述が多いのも事実で、それは著者がこれまで書いてきたSFや探偵モノといったジャンル内の局域とは異なる次元に「日本」や「回帰」や「文化人」といった用語の厄介さがあることによると言えるだろう。何より昭和10年代に「日本回帰」した文化人たちをまなざし、回想している著者本人が「戦前回帰している文化人」めいて見えてしまう、その再帰性にどれだけ自覚的であったか?2021/07/27

onepei

1
けっこう辛辣2021/06/03

安土留之

1
 近代日本は、「西洋憧憬」と「日本への回帰」の間で揺れ動いてき。そして昭和10年代、日本回帰、日本賛美が「エコーのように」鳴り響き、戦争に突入していった。どうしてなのか、という問題意識で、著者は当時の文化人の言説を追いかける。  私自身の関心領域なので読んでみたが、期待はずれ。30人以上の文化人が取り上げられているのだが、どれも短い叙述なので、心理まで踏み込んだものではない。この時代に馴染みのない若い読者には入門書としていいかもしれないが、このテーマに関心ある人にとってはちょっともの足りない。 2021/05/21

Go Extreme

1
西洋憧憬と日本への思慕:欧化への抵抗 政教社の国粋主義 岡倉天心 新渡戸稲造 国家社会主義という第三の道 水戸学・ファシズム・皇国史観 文学者たちの「日本回帰」:プロレタリア文学から文芸復興へ 永井荷風 谷崎潤一郎 堀辰雄 横光利一 坂口安吾 戦意高揚する詩人:近代詩歌と軍歌 日清戦争 日露戦争の記憶 日本文化観の模索:国策としての国民精神文化 日本精神と変質する科学主義:イデオロギーとしての日本精神 大東亜戦争は王道楽土の夢を見るか:西田幾多郎 三木清 京都学派 それぞれの戦後:死んだ者・生き残った者2021/05/11

Lieu

0
教科書的な記述だが、明治の反・洋椅子、反・ランプの言説など知らないこともあり、勉強になった。日本浪漫派の保田與重郎の「イロニー」の評価についてはこの通りだろう。蓮田善明や伊藤静雄はどうか。本書を読むと、知識人たちが欧米留学中に受けた屈辱や失望が、彼らの日本回帰の思想に与えた影響は少なくないと感じられる。2022/01/10

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