内容説明
西洋文化を旺盛に摂取しつつ繁栄を遂げてきた近代日本は、昭和期に入ると急速に「日本回帰」へと旋回する。そのうねりのなかで文学者や思想家たちもまた、ときにそうした運動の主導者となっていった。和辻による日本古典美の称揚、保田らの「日本浪曼派」、北原白秋や斎藤茂吉の戦争詩歌、そして三木の東亜協同体論や京都学派の「世界史の哲学」――。戦後タブー視されがちであったこれらの作品を、当時の時代状況や彼らの内的論理に注目しつつ読み解き、「日本的なもの」の核心に迫る意欲作。
目次
はじめに──危機の時代における心理と思考
第一章 西洋憧憬と日本への思慕
欧化への抵抗──佐田介石の内外対比論
政教社の国粋主義
陸羯南──日本主義と国民の自由
岡倉天心──「アジアは一つ」の真意
新渡戸稲造──『武士道』の日本人
国家社会主義という第三の道
水戸学、ファシズム、皇国史観──錯綜する国家観
第二章 文学者たちの「日本回帰」
プロレタリア文学から文芸復興へ
保田与重郎と「日本浪曼派」──敗北の美学
永井荷風──無関心という抵抗
谷崎潤一郎──政府に睨まれた日本礼賛
堀辰雄──柔和で毅然とした抵抗精神
横光利一──反転する西洋憧憬
太宰治──アイロニーが世界を包むとき
坂口安吾──日本文化称揚の欺瞞性
第三章 戦意高揚する詩人たち
近代詩歌と軍歌──日本軍歌の哀調
日清戦争──与謝野鉄幹、正岡子規
日露戦争の記憶──夏目漱石、森 外、与謝野夫妻
北原白秋──南蛮趣味から戦争礼賛へ
萩原朔太郎──故郷との和解を夢見て
三好達治──死にゆく同胞への供物
高村光太郎──軍神を讃えねばならぬ
折口信夫、斎藤茂吉──国亡ぶを歌う
第四章 日本文化観の模索
国策としての「国民精神文化」
和辻哲郎──世界文化史への架橋
大川周明──アジア主義のジレンマ
中河与一──モダニズムから第三世界共闘ロマンへ
九鬼周造──「いき」という諦念
阿部次郎──人格主義から見た日本文化
第五章 日本精神と変質する科学主義
イデオロギーとしての日本精神
進化論と優生思想──加藤弘之、丘浅次郎、永井潜
愛国化する「科学」──中山忠直の日本学
生気説への接近──小酒井光次と哲学者たち
有機体としての国家──西田幾多郎の「安心」
第六章 大東亜戦争は王道楽土の夢を見るか
西田幾多郎──修正案としての「世界新秩序の原理」
田辺元──飛躍的想像力と国家構想
三木清──回避努力と妥協的協力
京都学派──「近代の超克」と「世界史的立場」
終章 それぞれの戦後
死んだ者、生き残った者
三木清の戦後獄中死
占領期検閲と横光利一
東京裁判を免訴された大川周明
「日本の悲劇」を課題化した和辻哲郎
亀井勝一郎が戦後改稿に込めた思い
保田与重郎の孤独、中河与一の硬直
「近代の超克」の清算としての『本居宣長』
あとがき
主要参考文献
人名索引
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