内容説明
電気式五芒星と古文献を駆使し、オカルトと科学を混合させた技術で怪奇現象に立ち向かう、名うての“幽霊狩人”──トマス・カーナッキ。彼が事件をみごと解決して自宅に帰還するたび、わたしたち友人は食事に招かれ、その冒険譚に耳を傾けるのだ。無人の空間で起こった死傷事件、不気味な口笛の鳴り響く部屋の怪談、馬の魔物が出現する奇譚等々、ドイルの創造した名探偵ホームズと同時代に発表され、その怪奇版として名高いシリーズ全作を新訳で贈る。本邦初訳の資料的作品1編を含む、全10編を収録した。/【目次】礼拝堂の怪/妖魔の通路/月桂樹の館/口笛の部屋/角屋敷の謎/霊馬の呪い/魔海の恐怖/稀書の真贋/異次元の豚/探偵の回想/訳者あとがき
感想・レビュー
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sin
65
『妖魔の通路』専門家ぶった割には魔界との通路を結界に持ち込む迂闊さ!『月桂樹の館』推理らしく見せかけるためにあばく秘密結社の茶番劇!『霊馬の呪い』虚実の塩梅が不出来で、良い感じに積み上げた心霊現象をぶち壊す陳腐な真相!『異次元の豚』ただの知ったかぶり行き当たりばったりで却って最悪を招く、裏付け皆無の理屈っぽい真相解説、そんなことより肝心の患者の安否は?ホームズの推理を意識しすぎた作者の人物造詣は滑稽、中途半端な探偵小説であるより折角造り上げた雰囲気を活かした怪奇冒険潭に徹して欲しかった❗2019/07/01
藤月はな(灯れ松明の火)
50
電気式五芒星と「サアアマアア経典」を駆使して心霊現象に対処する幽霊狩人、カーナッキーが語る事件。「幽霊の正体、見たりて枯れ尾花」という話もあり、拍子抜けはするのですが中には本当に説明がつかない「真怪」もあるのが不気味。海洋怪奇小説をお得意とした作者の本領発揮な「魔海の恐怖」は生き生きとしており、「異次元の豚」の緊迫感は凄くてこちらも呑み込まれそうになる位でした。一番、ビジュアルを想像して怖さで震えたのは『口笛の部屋』だけどね!2014/11/14
Kouro-hou
21
ホームズ時代の心霊探偵カーナッキの連作短篇集の新訳版。旧角川ホラー文庫版から一篇追加有り。一人称が「私」から「ぼく」になり、にこやかに「帰りたまえ」と友人らを追い返していたのが「お開きだ」(原文"Out you go!")になっててw印象が違います。追加の「探偵の回想」は紹介の小冊子用掌編で、カーナッキ本人が過去の事件を振り返る体裁ですが、これがガチ要約。「実は○○が✕✕の理由で幽霊のふりをしていたのだ」そこまで書いたら宣伝にならないんじゃ?? 絶大長編『ナイトランド』も1/10に圧縮してるし要約は得意?2016/05/01
rokoroko
19
怪奇専門の探偵。昔こういうの読んだなぁ~ホームズと同じ時代のお話らしい。江戸川乱歩とか好きだったな。としみじみ。でも今はなんか違和感。どうしてなのか。強い照明と明るい町がこうした話を受け付けないのかな2024/03/04
Ribes triste
15
電気五芒星の魔法陣と太古の魔導書を武器に怪異現象に立ち向かうカーナッキの活躍…なのですが、恐怖心に負けて失敗することもあり、完全無欠じゃない人間らしいところがいい。怪異を論理実証した先に、とんでもない結末が登場するのも楽しい。「口笛の部屋」「霊馬の呪い」が好みでした。2019/10/31