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内容説明
1054年、キリスト教は西方カトリック教会と東方(ギリシャ)正教会に分裂。その後カトリックは宗教改革を経てプロテスタントと袂を分かつが、正教はキリスト教の原点として、正統な信仰を守り続けている。ギリシャ北部にある正教の聖地アトスは、多くの修道院を擁し、現在も女人禁制の地。修道士たちは断食や節食により己の欲を律し、祈りにすべてを捧げてその地で生涯を終える。本書では日本人で初めて聖山アトスで司祭としてケリ(修道小屋)で祈りを捧げることを許可された著者が、聖地での暮らしを紹介しながら、欲望が肥大しきった現代にこそ輝きを放つ正教の教えを解説する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雲をみるひと
39
正教と正教徒の慣習や考え方を紹介した本。旅行者目線でのアトス山紹介本と思って読むと少し面食らうかもしれないが、日本人でこのテーマを扱える人は限られていると思われるし興味深い。作者のアトス山やギリシアでの経験も踏まえているので、他の正教をテーマにした本より学術面に薄く実生活や実態に踏み込んだ内容だと思う。2021/10/18
canacona
28
アトスに興味があって読んでみました。女人禁制、信仰に生涯を捧げる修道士。私は典型的な日本人らしく、神社にもお参りするし、お墓はお寺に、結婚式は教会でした。こんな私からすると、信仰に生涯を捧げるというのは異世界にも近い。そしてやっぱり食事についてが一番興味深く読みました。タラモサラダってギリシャ料理なんだ!どれもすごく豊かで美味しそう。ムール貝のトマト煮込みやフライ、エビのスープなど。聖歌を口ずさみながら収穫をする描写は、信仰ばかりの生活と思っていた修道士の人間らしい生き生きとした表情が見えた気がしました。2023/03/13
紫羊
18
写真家である息子さんの聖山アトスの本に登場する、ギリシャ正教司祭であるお父さんが書かれた本です。古代ギリシャ哲学の研究から東方キリスト教に関心が移っていき、ついには聖山アトスで司祭になった経緯と、聖地での暮らしがわかりやすい言葉で語られています。2023/03/19
いくら丼
7
聖山アトスが気になって探して、信仰者の視点を通して正教を知れました。最後にはコロナ禍での話も。どんな状況下であれ命を賭して祈り続けるのは、ここではきっと当たり前なんですね。女性に対して"開国"するようにとも勧告があるようですが、ここは男性信徒にとって、祈りに専念する隔離空間であるのが大事だろうなあと。「関係者以外立入禁止」とか、「○歳未満入場禁止」とかは珍しくもないわけで、別に良いんじゃなかろうか。巻頭だけでなく巻末にもカラー写真があり、全体像を知った上で最後に見ると、ぐっとイメージが深まって良かった。2022/09/23
田中峰和
7
免罪符あるいは贖宥状で処罰を免除したカトリックは、ルターなどの宗教改革に繋がりプロテスタントなど分裂していった。それに比べるとギリシャ正教はカトリックと分裂して以来、千年も頑固に教えを守ってきた。本書は日本人で初めて正教の聖地アトスで司祭となった著者が、現地での暮らしのレポートと正教の教えを解説してくれる。口絵に大量の頭蓋骨の前に著者が立つ写真がある。ポルポト政権下の大虐殺を連想させるおぞましい写真だが、事情は違う。正教では一度埋葬した遺体を数か月後に骨だけ掘り出して安置するらしい。理解に苦しむ習慣だ。2021/12/20
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