岩波文庫 偶然性の問題

著者名：九鬼周造

岩波書店（2021/07発売）

• ISBN：9784003314630

内容説明

あらゆる事象はゆくりないめぐり逢いであり，その邂逅の源泉に原始偶然が厳存する――．古今東西にわたる驚嘆すべき文献的研究と実質的具体的な現実観察に拠り，偶然性を定言的偶然，仮説的偶然，離接的偶然の三つに大別してユニークな形而上学的思索を展開し，偶然性の本質を解明した九鬼周造（1888―1941）の主著．（注解・解説＝小浜善信）

目次

凡例┴序┴序説┴一　偶然性と形而上学┴二　必然性の本質とその三様態┴三　偶然性の三様態┴第一章　定言的偶然┴一　概念と定言的偶然┴二　綜合的判断の偶然性┴三　特称判断の偶然性┴四　孤立的事実としての偶然┴五　例外的偶然┴六　定言的偶然の存在理由┴七　定言的偶然から仮説的偶然へ┴第二章　仮説的偶然┴一　理由的偶然┴二　理由的消極的偶然┴三　理由的積極的偶然┴四　因果性と目的性┴五　因果的偶然と目的的偶然┴六　目的的消極的偶然┴七　目的的積極的偶然┴八　目的なき目的┴九　故意と偶然┴一〇　アウトマトンとテュケ┴一一　目的的偶然から因果的偶然へ┴一二　因果的消極的偶然┴一三　因果的積極的偶然┴一四　複合的偶然┴一五　仮説的積極的偶然の一般性格┴一六　周易と偶然┴一七　同時的偶然と継起的偶然┴一八　偶然性と時間空間的限定┴一九　歴史と偶然┴二〇　偶然の客観性┴二一　仮説的偶然から離接的偶然へ┴第三章　離接的偶然┴一　離接的偶然の意味┴二　様相性一般┴三　様相性の二つの体系┴四　偶然性と可能性との類似関係┴五　偶然性と不可能性との近接関係┴六　様相性の第三の体系┴七　三種の体系の概括┴八　偶然の遊戯と蓋然性の概念┴九　偶然性の時間性格┴一〇　偶然性と驚異の情緒┴一一　偶然と芸術┴一二　偶然と運命┴一三　形而上的絶対者┴一四　有と無┴結論┴一　偶然性の核心的意味┴二　偶然性の内面化┴「偶然性の問題」手沢本への書込み┴注解（小浜善信）┴解説（小浜善信）┴九鬼周造年譜

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[テトラ]

卒論の主要テキストにしました。

2017/12/29

[おおにし]

九鬼周造のラジオ講演原稿「偶然と運命」を読んで興味をもった彼の運命論をもっと詳しく知りたくて読んでみたが、難解な哲学書に歯が立たなかった。わかりやすい九鬼哲学解説書があれば読んでみたい。

2020/10/04

[CCC]

「偶然」という言葉がどう使われてきたかという部分からのアプローチが長すぎるように感じたが、分類、細分化しているところは良かった。再検討の余地は多そうだけど、それだけ取り組みがいのある話とも取れる。『「いき」の構造』が遊びだとすると、こっちは本番といった趣か(これはどっちが良いという話ではないけど)。ただ的的性性しててあまり頭に入る文章ではなかった。注解には本当に助かった。

2018/05/31

[キョートマン]

「偶然」と聞いてまず連想するのは確率。しかしこの本では、数学の確率が偶然とは何かについては何も語っていないと言う。たしかにそうだなと思った。それでは偶然とは何かについて、何だか興味深いことを言っていたがまだ説明できる気はしないので、いつか腰を据えて再読したい。

2022/09/22

[hakootoko]

「世界はなぜ存在するのか」とふと思うのは、悲しみに暮れてではなく悲しみに打ち勝った暁へ落ちるそのときだ。死が直線飛行し、生が帆翔するのではなく、生と死の波状飛行が翼を閉じて墜落するなら、神の存在と全ての偶然性は一つである。林檎が落ちれば万有引力、恋に落ちれば存在と無。これは問題の偶然性、有限性が開く無数の無限、具体的普遍。偶然を鳥瞰する偶然の編隊飛行が暗い地上から朝焼を落ちて行く。遇うて空しく過ぐること勿れ。偶然よ、鳥となって、ときを知らせる、存在と無を告げよ。すっす、すっす、すっすっす。

2022/02/28