岩波文庫<br> ウェイクフィールドの牧師 - むだばなし

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岩波文庫
ウェイクフィールドの牧師 - むだばなし

  • 著者名:ゴールドスミス/小野寺健
  • 価格 ¥924(本体¥840)
  • 岩波書店(2021/07発売)
  • 2025→2026年!Kinoppy電子書籍・電子洋書全点ポイント30倍キャンペーン(~1/1)
  • ポイント 240pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784003221310

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内容説明

英国の片田舎にすむ牧師一家の物語.善良で楽天的な田舎牧師が,破産にはじまり,娘が誘拐されたり,火事に遭ったりと,絶えず災難に見舞われるが,屈することなく,大らかに生きてゆく.世俗的な知恵もある牧師のユーモラスな人柄の魅力が全篇に漲り,英国文化の微妙な滋味を教えてくれるゴールドスミス(1728-74)の佳作.(新訳)

目次

作者のことば┴第一章 考え方も容姿も血縁としてそっくりな、ウェイクフィールドの一家のこと。┴第二章 一家の災難。財産を失うと、かえって有徳の人としての誇りが高まるということ。┴第三章 移転。人生の幸福は、けっきょく、ほとんど自分の力で手に入れるのである。┴第四章 どん底の生活でも幸福は得られるもので、それは境遇よりも気質によるという実例。┴第五章 あらたに身分の高い人を紹介される。われわれがいちばん期待するものは、たいていいちばんの命取りになる。┴第六章 田舎の炉辺の幸福。┴第七章 都の才子が語る。どんなまぬけでも、一晩か二晩なら他人をおもしろがらせることができるものだ。┴第八章 小さな幸運は約束しないが、大きな幸運をもたらすかもしれない恋愛。┴第九章 身分の高い二人の婦人が登場する。服装が高級だと教養も高そうに見えるようだ。┴第十章 一家が、自分たちより地位の高い人々と競争しようとする。貧しい者が自分たちを境遇以上に見せかけようとするときの、さまざまなみじめさ。┴第十一章 一家はあいかわらず、気位が高い。┴第十二章 運命は、ウェイクフィールドの一家を、みじめな境遇に落とす決意でいるらしい。屈辱は往々にして現実の災難以上に辛い。┴第十三章 バーチェル氏を、敵だと思ってしまう。ずけずけと不愉快な忠告をするので。┴第十四章 新たな失敗または一見災難と見えるものが、じつは幸運になるかもしれない実例。┴第十五章 バーチェル氏の悪だくみのいっさいが、たちまちばれる。悧巧すぎることの愚かさ。┴第十六章 一家は策をもちいるが、相手の策はそれを上まわる。┴第十七章 どれほど貞節な女性でも、長期にわたる甘い誘惑にはめったに抵抗できないということ。┴第十八章 失った子供を正道にもどそうとする、ある父親の追求。┴第十九章 現政府に不満で、われわれの自由の喪失を恐れている人物のこと。┴第二十章 新奇を追って満足を見失った、ある思索的な放浪児の話。┴第二十一章 下等な人間同士の友情は長つづきしない。おたがいに興味がなくなれば終わりである。┴第二十二章 心の底に愛があれば罪はたやすく赦せる。┴第二十三章 罪を犯した者でなければ、いつまでもみじめな気持ちに閉ざされてはいない。┴第二十四章 新たな災難の数々。┴第二十五章 どんなにみじめに見える境遇にも、何か慰めがある。┴第二十六章 牢内の改革。法を完全に守らせるには、罰だけでなく賞もあたえなくてはならない。┴第二十七章 前章のつづき。┴第二十八章 この世の幸不幸は徳不徳というより、分別の使い方の結果である。神は、この世の幸不幸は本質的に取るに足りないもので、その分配に気をつけるほどのことはないと考えている。┴第二十九章 この世での幸福な者、不幸な者の神の扱いは、平等だということ。また快楽と苦痛という性質ゆえに、不幸な者は来世ではかならずその補償を受けるということ。┴第三十章  幸福な展望が開けはじめる。不屈の人間になろう。そうすればついに、幸運の女神がわれわれに微笑んでくれよう。┴第三十一章 昔の善意が、こんどは思いがけない利子をつけて報いられる。┴第三十二章 結び。┴解説

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

272
18世紀イギリスのいわば教養小説。1766年の刊行。本書の主人公(物語の語り手でもある)は、学究肌の牧師である。自身の信念に従って6人の子どもたちに恵まれるが、そんな彼の一家を次々に災難が襲い掛かる。破産、火災、投獄、次女の誘拐等々、これでもかというくらいの不幸続きである。もうほとんど荒唐無稽と言ってもいいくらいに。それでも彼は全く屈することなく、神を信じ、人を信じて生きて行く。ある意味で、それは確かに幸せな生き方であるのかもしれない。イギリスの古典的な小説という評価もわからなくはないのだが。2017/06/28

ケイ

119
冒頭の「ロバート・バートン」からの引用、それに続く「作者の言葉」の含蓄のある内容に、期待に胸をふくらませて読んだ。そそっかしさや牧師自身の持つ俗物根性により、物事の本質を見抜けぬために波瀾万丈の家族の流浪となる。しかし、彼の奥底にある感じる力は、常に彼に警告はしていたのだ。後で気付いて改めればいいのだろう。牧師とて人間なのだから。そして、間にしばし挟まれる彼の行う人情溢れる説教の内容に感動した。最後まで腹立たしかったのは、牧師の妻だ。その心の狭さや心根などは、ソーンヒルと変わらなく思えた。母親だろうに。2016/12/12

まふ

118
1776年ゴールドスミスが書いたプリムローズ牧師一家8人の波乱万丈の生活記録。誠実で善良な家長の牧師が6人の子供を育てるうちに財産を投資で無くし零落するのが悲劇の始まりで、長女オリヴィアが略奪婚のように攫われたり様々な事件に巻き込まれる。牧師はその元凶である地主のソーンヒルと対決するが逆に家賃滞納で監獄にぶち込まれる。どうなることかと思ったら、最後はすべてが一気に奇跡のように解決し、読者は留飲を下げる。ジェイン・オースティンの約30年前の一階級下のハンブルな牧師階級の物語である。面白かった。G1000。2023/11/23

のっち♬

59
片田舎に住む牧師一家が、破産、誘拐、火事、投獄など度重なる災難に屈せずに大らかに生きる様が描かれている。穏やかでユーモラスな語り口も相まって心地よい程に荒唐無稽で牧歌的な雰囲気。英国の政体や法律など様々な皮肉・風刺を交えつつ、どんな目に遭っても人も神も信じ続ける牧師の善良さが終盤に急展開と大団円を導く。世俗的な面もある牧師から悪役まで魅力的に描かれ、「無数の欠点があるにもかかわらず面白い」本。「人生の歓びや幸運には、どれをとっても信じられない偶然のおかげの場合が実に多いのだ」押し付けがましさのない無駄話。2018/08/26

NAO

56
プリムローズ牧師一家に次々と降りかかる不幸の中で、牧師の家族とはいっても俗っぽさについつい魅かれてしまう女性たちの中にあって、プリムローズ牧師は必死で慎ましい生活を守り、家族と隣人への愛を貫こうとする。一家揃って俗物的だったとはいえ、度重なる不幸の中でも、腐ることなく正しくあり続けようとしたからこそのこのハッピーエンド。イギリスの美しい田園風景の中、人々の細やかな心の機微がユーモラスに描かれている。勧善懲悪ではあっても説教くさすぎることもない朴訥な雰囲気のこの話を「むだばなし」とする作者のユーモア。2016/11/01

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