内容説明
英国の片田舎にすむ牧師一家の物語.善良で楽天的な田舎牧師が,破産にはじまり,娘が誘拐されたり,火事に遭ったりと,絶えず災難に見舞われるが,屈することなく,大らかに生きてゆく.世俗的な知恵もある牧師のユーモラスな人柄の魅力が全篇に漲り,英国文化の微妙な滋味を教えてくれるゴールドスミス(1728-74)の佳作.(新訳)
目次
作者のことば┴第一章 考え方も容姿も血縁としてそっくりな、ウェイクフィールドの一家のこと。┴第二章 一家の災難。財産を失うと、かえって有徳の人としての誇りが高まるということ。┴第三章 移転。人生の幸福は、けっきょく、ほとんど自分の力で手に入れるのである。┴第四章 どん底の生活でも幸福は得られるもので、それは境遇よりも気質によるという実例。┴第五章 あらたに身分の高い人を紹介される。われわれがいちばん期待するものは、たいていいちばんの命取りになる。┴第六章 田舎の炉辺の幸福。┴第七章 都の才子が語る。どんなまぬけでも、一晩か二晩なら他人をおもしろがらせることができるものだ。┴第八章 小さな幸運は約束しないが、大きな幸運をもたらすかもしれない恋愛。┴第九章 身分の高い二人の婦人が登場する。服装が高級だと教養も高そうに見えるようだ。┴第十章 一家が、自分たちより地位の高い人々と競争しようとする。貧しい者が自分たちを境遇以上に見せかけようとするときの、さまざまなみじめさ。┴第十一章 一家はあいかわらず、気位が高い。┴第十二章 運命は、ウェイクフィールドの一家を、みじめな境遇に落とす決意でいるらしい。屈辱は往々にして現実の災難以上に辛い。┴第十三章 バーチェル氏を、敵だと思ってしまう。ずけずけと不愉快な忠告をするので。┴第十四章 新たな失敗または一見災難と見えるものが、じつは幸運になるかもしれない実例。┴第十五章 バーチェル氏の悪だくみのいっさいが、たちまちばれる。悧巧すぎることの愚かさ。┴第十六章 一家は策をもちいるが、相手の策はそれを上まわる。┴第十七章 どれほど貞節な女性でも、長期にわたる甘い誘惑にはめったに抵抗できないということ。┴第十八章 失った子供を正道にもどそうとする、ある父親の追求。┴第十九章 現政府に不満で、われわれの自由の喪失を恐れている人物のこと。┴第二十章 新奇を追って満足を見失った、ある思索的な放浪児の話。┴第二十一章 下等な人間同士の友情は長つづきしない。おたがいに興味がなくなれば終わりである。┴第二十二章 心の底に愛があれば罪はたやすく赦せる。┴第二十三章 罪を犯した者でなければ、いつまでもみじめな気持ちに閉ざされてはいない。┴第二十四章 新たな災難の数々。┴第二十五章 どんなにみじめに見える境遇にも、何か慰めがある。┴第二十六章 牢内の改革。法を完全に守らせるには、罰だけでなく賞もあたえなくてはならない。┴第二十七章 前章のつづき。┴第二十八章 この世の幸不幸は徳不徳というより、分別の使い方の結果である。神は、この世の幸不幸は本質的に取るに足りないもので、その分配に気をつけるほどのことはないと考えている。┴第二十九章 この世での幸福な者、不幸な者の神の扱いは、平等だということ。また快楽と苦痛という性質ゆえに、不幸な者は来世ではかならずその補償を受けるということ。┴第三十章 幸福な展望が開けはじめる。不屈の人間になろう。そうすればついに、幸運の女神がわれわれに微笑んでくれよう。┴第三十一章 昔の善意が、こんどは思いがけない利子をつけて報いられる。┴第三十二章 結び。┴解説
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