ショーペンハウアーとともに

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ショーペンハウアーとともに

  • ISBN:9784336063557

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内容説明

《世界が変わる哲学》がここにある!

現代フランスを代表する作家ウエルベックが、19世紀ドイツを代表する哲学者ショーペンハウアーの「元気が出る悲観主義」の精髄をみずから詳解。その思想の最奥に迫る!

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本書『ショーペンハウアーとともに』は単なる注釈書ではない。一つの出会いの物語でもある。二十五から二十七歳のころ――つまり、一九八〇年代半ば――ミシェル・ウエルベックは、パリの市立図書館でほとんど偶然に『幸福について』を借りた。「当時、私はすでにボードレール、ドストエフスキー、ロートレアモン、ヴェルレーヌ、ほとんどすべてのロマン主義作家を読み終わっていたし、多くのSFも知っていた。聖書、パスカルの『パンセ』、クリフォード・D・シマックの『都市』、トーマス・マンの『魔の山』などは、もっと前に読んでいた。私は詩作に励んでもいた。すでに一度目の読書ではなく、再読の時期にいる気がしていた。少なくとも、文学発見の第一サイクルは終えたつもりでいたのだ。ところが、一瞬にしてすべてが崩れ去った」。衝撃は決定的だった。若者は、熱に浮かされたようにパリ中を駆け巡り、『意志と表象としての世界』を見つけ出す。それは、彼にとって「世界で最も重要な書物」となった。そして、この新たな読書はさらにすべてを「変えた」。

私の知る限りでは、いかなる哲学者もアルトゥール・ショーペンハウアーほどすぐさま心地よく元気づけてくれる読書を提供してくれる者はいない。「書く技術」の問題ではないし、この手のジャンルに見られる饒舌でもない。それは公衆に向って発言しようというほどの勇気をもつ者ならばあらかじめ同意書にサインすべき前提条件のようなものだ。『反時代的考察』第三篇は、ショーペンハウアーを否定する少し前に書かれたものだが、そこでニーチェは、この哲学者の深い誠実さ、廉直さ、正直さを賞賛している。ショーペンハウアーの声の調子、その一種の粗野な善良さについて名調子で語り、それを読めば読者は名文家や文体に凝る連中に対して嫌悪感を覚えるだろうと述べる。これこそ、広い意味での本書の目的である。
(本文より)

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Arthur Schopenhauer
アルトゥール・ショーペンハウアー
(1788-1860)
19世紀を代表するドイツの哲学者。
ドイツ観念論に東洋哲学を取り入れ、実存主義・ニヒリズムの先駆者としても知られる。
主著は『意志と表象としての世界』(1819年)。彼の唯一で独自な思想は、若き日のニーチェを熱狂させたほか、ヴィトゲンシュタイン、フロイト、アインシュタイン、トルストイ、プルースト、ボルヘス、ワーグナーなど、後世の哲学者・作家・芸術家などに多大なる影響を与えた。
今日においては『余禄と補遺』(1851年)からの抜粋である『幸福について』『読書について』などのエッセイが広く一般に親しまれている。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

harass

92
今では読まれることの少なくなった思想家についてのウエルベックのエッセイ。この著者の処女作でもあったラブクラフト本はぜひ読みたい本で、同じ出版社から出たこの翻訳はどうかと手にとった。著者が途中で投げ出してしまったそうで未完。訳者の解説や仏人学者の序文に詳しい経緯がある。正直ショーペンハウアーは未読でこれからも読むことはないと思っていたが、なかなかおもしろそうな思想家であると認識。この強烈な厭世観はウエルベックの世界観の一部であり、彼の小説を再読しようという気になった。新作も楽しみだ。まあファンなら。2019/08/03

どんぐり

72
「世界は私の表象である」というあまりにも有名なショーペンハウアーの哲学を紹介するウエルベックの思想的開示。「人生が苦痛であるとすれば、最良の行動は静かに片隅に引きこもり、すべてを終わらせる老いと死を待つだけ」というこの哲学者の言葉は、ウエルベックの『セロトニン』に登場する主人公の隠遁していく中年男性とも重なる。2019/12/07

やいっち

43
ウエルベックの本書は、朋あり遠方より来るの感が強い。欧米の弱肉強食の社会、方向性などない、ひたすらな生の盲目的進化(論)、野蛮なほどの生の生きんとする力を感じた。ショーペンハウエルの哲学(表現)は、同時に読み出したニーチェより遥かに凄まじい。狂暴ですらある。若き我輩を覚醒する力があった。ショーペンハウエルは、勉強家で貪欲に読書(勉強)した。ただ、自らの哲学を傍証する科学的成果を探していたようで、やや苦笑。ショーペンハウエルは、二十代で洞察し表現し尽くして、あとの人生は厭世家としての長い余生となった。2019/07/24

Y2K☮

34
ちょうど片岡義男の短編集を読んでいて「寓意のない小説」を書きたくなっていた。そのために必要なのは、まさしく己にとっての「表象」にすぎない世界を「観照」する姿勢だ。利害の打算はもちろん、人びとや社会のためという公益精神すら抱かず、ただぼーっと眺めて写し取る。「草枕」で夏目漱石が試みたのはこういうことか? 「意志」と「意欲」「概念」と「イデア」の違いも刺さった。延々考え続けてからふっと離れて風呂に入った時に秀逸なアイデアが浮かぶように、ロジックを排した直観もまた徹底した客観的思考を前段階に要するのではないか。2022/05/20

kazi

31
ウェルベックがショーペンハウアーについて語った一冊。『いかなる哲学者もショーペンハウアーほどすぐさま心地よく元気づけてくれる読書を提供してくれる者はいない。』、だそうです・・。金銭や名声による欲望の充足を最優先することで人間性を摩滅させた西洋文明への嫌悪感を描いたウェルベックの著作群から、ショーペンハウアーからの影響が大きかったであろうことが読み取れますね。現代においてショーペンハウアーが言う精神的充足を目指して生きている人はいるのだろうか?読んでも私は全然元気になれませんでした。以上、レビュー終わり。2021/02/22

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