ちくま新書<br> 認知症 そのままでいい

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ちくま新書
認知症 そのままでいい

  • 著者名:上田諭【著】
  • 価格 ¥770(本体¥700)
  • 筑摩書房(2021/07発売)
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  • ISBN:9784480074096

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内容説明

日本の人口の4人に1人が高齢者となった現在、高齢者の5人に1人(85歳以上ならほぼ2人に1人)は認知症という状況である。認知症は老いた人の脳に起こる「自然な現象」であり、受容し悲観しないことが、介護する人・される人双方にとって幸せにあるためのスタート地点である。本書では、治らなくていい、と心から思えるように気持ちや見方を切り替え、認知症の人を助け、いたわり、共にできることを、認知症を専門とする精神科医の立場から考える一冊である。

目次

はじめに
序章 認知症を喜んで受け入れること
認知症は「特別な病気」ではない
堂々と認知症になれる社会へ
第1章 認知症の大誤解
1 認知症は予防できない、治らない
よくしようという発想は無用
認知症の危険因子とは
認知症の前段階で食い止められる?
認知症への進展を抑えられる?
加齢による脳機能の低下は必然
政府「減らす目標」の愚かしさ
認知症は「ふつう」、認知症でないことが「特殊」と考えよう
アミロイド撃退薬への過剰な期待は禁物
「アミロイド原因説」は、もう古い
抗アミロイド薬の現在地
2 早期発見しても治す薬はない
何のための早期発見か
「早くみつけて治そう」ではなく、「発見後にどうするか」が重要
抗認知症薬の効果の限界
東京都発行のパンフレットにも〝幻想〟が
抗認知症薬を保険適用外にしたフランス
日本でも異例の承認だった?!
心情への医師の鈍感さ
3 注意することで記憶はよくならない
「日付を誤らないこと」がそんなに重要か?
助け支えるが自然な人の情
4 認知症の人は明るく、元気である
アルツハイマー病の人は無気力、無関心か
周囲がいやな気持ちにさせていないか
第2章 認知症の人の行動をよみとく
1 行動心理症状(BPSD)とは何か
認知症は心を乱す病でもある
初期の人の心情を重度のそれと捉えていないか
「問題行動」「困った人」と決めつける前に
日々の「つまずき」に気づいてあげる、それを支える
脳の障害という視野の狭さを捨てる
2 一日中の物探し
探すものは何か
「ここは私の家じゃない」
どこに帰りたがっているのか
3 物盗られ妄想
「私の物を盗った」の奥にある心の叫び
認知症でない人の被害妄想
孤立・孤独が妄想を招く
4 近しい人を間違える
不快な感情が「誤認」につながる
息子や孫は間違えないのに、夫だけがわからない
自分を叱る夫を認めたくない
レビー小体型認知症、てんかんでも人物誤認が起こる
5 あてもなく歩き回る徘徊
徘徊とはどんな行動か
「なぜ出かけたいのか」を考える
頼る人の冷たさが「外へ出たい」につながる
迷い出る人の気持ちに思いを
介護者視点から当事者視点へ
第3章 認知症の人を受け入れ、向き合うために
1 本人の話を聴く
看護師を目指す高校生が抱いた違和感
「ナースルーム看護」の実態
「人」にいかに満足を与えたかを問う看護
あなたがもし診療を受けたとして……
認知症の本人は何に困っているのか
自己肯定感の回復こそを目指して
本人との対話を求める医学界の変化
高齢者の5人に1人が認知症になる時代
理解力の悪さを嘆かず工夫
知恵と工夫を総動員するチャンス
理解が悪くとも向き合い、話す
2 認知症のレッテルを貼らない
安易に認知症と決めつける傾向
診断にもっとも重要なポイント
「専門用語」で決めつける弊害
何かを隠す略語「ニンチ」
「徘徊」は認知症の代名詞ではない
「BPSD」の用語を捨てたい
言葉の「副作用」に気付く
3 人として尊重すること
見かけだけの症状で認知症と決めつけないで
「認知症だから」の思い込みがあだになる
礼を尽くして接する態度
人生の大先輩としてみる
当たり前の介護「ユマニチュード」
決めつける介護の対極
魔法ではなく、原点に
第4章 認知症をめぐる難題をときほぐす
1 監視・身体拘束をどう考えるか
最高裁判決をめぐる議論にない「本人」
身体拘束には整理した議論を
精神病の悪化状態
認知症の不穏行動
認知症の身体治療
2 認知症へのとらわれと誤診
「恍惚」は認知症ではなかった
認知症でなくせん妄の症状
「早期発見」の啓発が偏見を強める
身体的な病を見逃したかかりつけ医
「だるさで立てない」がなぜ認知症
「早期発見」至上主義を見直そう
認知症に隠れがちなうつ病
幻視が出たらレビー小体型認知症か
頻尿治療薬が原因で物忘れと人物幻視
幻視は悪とは限らない
3 医者にどう頼るべきか
医師にどう伝え、どう対処してもらうか
医者に頼る前に……という問いかけ
医者は脳と心の両方をみる
投薬に走らないための医者への問いかけ
看護・介護職はミニドクターになるな
90歳の物忘れ……「医学依存」にしたくない
認知症の進行と考えずわが身を振り返る
医師の意識が一番遅れている
医学モデルから生活モデルへ
参考文献
おわりに

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

厩戸皇子そっくりおじさん・寺

80
この本、いい本です。毎月毎月バラエティに富んだ新刊を各社の新書は出していますが、こんないい本が話題にならないなんてもったいない事である。「そのままでいい」等と言われたら不快に思う人もいるだろうとは思う。しかし、世間では認知症の早期発見をやたらに勧めているが、発見したところで特効薬も無く、治るものでもない。なのに早期発見を実行してみた為に、年相応の物忘れが認知症扱いされたりする。おまけに認知症になるという事は、他の病気同様に気遣われ、優しくされて良いのに、叱られたりぞんざいに扱われたりする。(レビュー続く)2021/11/15

みこ

18
一見すると認知症患者に対する慈愛の満ち溢れるタイトルだが残念な一冊だった。確かに現在認知症患者の置かれている好ましくない状況に著者が憤りを感じているのは分かるが、尊厳を保つことと主義主張を全面に受け入れることは別物である。車の運転を趣味としている人が認知症になった後に車を運転したいと言いだしたら認知症患者でも車の運転ができる社会づくりを目指すべきとでも言いだしかねない論調である。他の病気と変わらないというのなら、糖尿病患者が食事の制限を受けるように認知症患者もある程度の行動制限はやむを得ないのではないか。2022/01/13

イエローバード

12
認知症になりたくないのは、周囲に〝終わった人〟と思われるからだとわかった。昔から普通にいて、それなりに社会に溶け込んでいたのに、いつのまにか忌避される病となってしまったと。治すのは本人ではなく、そういう社会の意識なのかも。周りが尊重して接してくれれば、こわくない病なのかもと感じた。とても勉強になった。2022/11/08

ぱんだーZ

7
「認知症にだけはなりたくない」「認知症になったら終わり」そういった声を耳にするたび胸が痛む。認知症になる怖さよりも、認知症になった時、周りの人からそして家族から困った人扱いで見られること。そして自分が知らないうちに、よく知りもしない人たちに連れられ、よくわからない所に居させられ。わからない事が重なり、さらに家にいられなくなる。そんな扱われ方を思うと、そのほうがずっと怖い。そのままでいい。あなたのままでいい。礼節をもって、尊厳を守る態度で。それがあたり前の社会になりますように。 2021/11/03

nranjen

6
図書館本。3人待ちなのに、5ヶ月ぐらい待ちました。認知症を患っている父親を病院に連れて行くように強く言うケアマネさんに是非読んでいただきたい本です。後半に、あらゆる症状を認知症と決めつける周囲の目、看護師、医師の「決めつけ」の危険性と批判が書かれています。人として接すること、他の病気が隠れていることを見逃さないことが肝要だと理解しました。2022/03/07

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