内容説明
まともに思えることだけやればいい。
荻窪の本屋店主が考えた、よりよく働き、よく生きること。
効率、拡大、利便性……いまだ高速回転する世界に響く日常エッセイ。
荻窪に本屋を構えて5年。本を並べ、客の手に渡るまでを見届ける日々から見えること。
「いまわたしの手元には、『終わりと始まり』という一冊の詩集がある。どこかの書店でこの本が並んでいる姿を目にすると、わたしはそこに、その店の良心を感じずにはいられない」
「Titleに並んでいる本は声が小さく、ほかの本の存在をかき消すことはないが、近くによってみるとそれぞれ何ごとかつぶやいているようにも思える」
「『あの本の棚は光って見えるよね』。書店員同士であれば、そのような会話も自然と通じるものだ」……。
本を媒介とし、私たちがよりよい世界に向かうには、その可能性とは―――。
●写真:齋藤陽道
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
pohcho
60
荻窪の新刊書店「Title」を営む辻山さんの日常を綴ったエッセイ。「便利だが貧しい」という今の社会に一石を投じられている。昨年、コロナでトイレットペーパーが買い占められた店の光景を見て、「自分はこうした行為に抗うため、本を売っているのではなかったか」と書かれていたのが印象的だった。大きな書店に行くと最初はウキウキするけど、あまりに書籍が多くてだんだん疲れてしまう今日この頃。辻山さんが小さな書店でどんな棚を作られているのか、とても興味がある。いつかお店を訪問してみたい。2021/11/05
tamami
60
東京の近郊で個人経営の新刊書店主である著者の、日々を巡るエッセイ。今まで読書生活の中で、出合った本屋さんは相当な数に上るけれども、本書に記されたような雰囲気を持った本屋さんはほとんど姿を消してしまった。そんな本屋さんと、小さな声で語る店主の物語。身辺雑話から、著者、常連客の人となりまで。自分の読書生活の何割かは、本書に描かれた情景の中で形作られてきたとの思いが湧いてくる。人は生きるためにはパンが、その生活のためには心を慰めるものが必要という。人を人たらしめる存在としての本屋さんの姿がここには描かれている。2021/07/31
ネギっ子gen
54
【誠実な言葉には心が本当に慰められることを教えてもらえる。by和田靜香】瀟洒な装幀に、心の奥底まで沁みる齋藤陽道さんの写真多数と、新刊書店主が語りかける日常エッセイ。巻末に「本書に関わる本」。贅沢な書、輝く本。<人は分断され、心ないことばを投げつけ合うあいだ、互いを低く見積もり、損ね合っている。そんなとき心に沁みるのは、人を人として扱ってくれる、真正面から放たれたことばだろう。SNSの窓から見るよりも世界はずっと広い。店で扱う本は一見地味に見えたとしても、時間をかけ誠実に紡がれたことばから選びたい>と。⇒2025/02/09
佐島楓
54
静謐な時間のなかで選ぶ本。書店の醍醐味のひとつはこれであろう。早くワクチンを打ってTitleにお邪魔したいと心から思う。2021/07/15
阿部義彦
40
荻窪で本屋を自分で開いた辻山良雄さんの日々考えた事の本屋にまつわるエッセイ集です。「休日、他の書店に入ると、必要以上に大きな声をした本が優先的に並べられているのに気づいた。そうした自意識を隠そうともしない本に触れると心底ぐったりとして、その店からほうほうの体で出てしまう。」Titleのロゴマークの隠された秘密まで、この店にたどり着くまでの経緯や、著者の父のこと、店で出会ったお客とのやりとり、日々の雑務の間に感じたあれこれなどを小さな声で語ってくれてます。写真も満載で楽しめました。2021/07/31
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