内容説明
昭和二十三年十二月二十三日、東條英機をはじめA級戦犯が処刑された。なぜ皇太子明仁の誕生日、のちの「天皇誕生日」が選ばれたのか。そこにアメリカが仕掛けた「暗号」から敗戦国日本の真実を解き明かす、『昭和16年夏の敗戦』完結篇。
再刊にあたり書き下ろし論考「予測できない未来に対処するために」を収録。
〈解説〉梯久美子
(『ジミーの誕生日』『東條英機 処刑の日』改題)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤瀬こうたろー
33
「昭和16年夏の敗戦」の後継の本で、本作は、東京裁判にからみ、被告人たちの起訴日や死刑を執行した日について、その隠された意図を描いたもの。正直、日本史好きの私としては同じ話を聞いた事があり、そんなに目新しさがなかった。開戦前に有識者たちが日本の敗戦を正確にシミュレーションしていた事実を描いた前作の衝撃と比べるとインパクトが弱い。むしろ、昭和天皇の訴追や退位を巡っての攻防が面白かった。しかし、東京裁判どころか天皇誕生日もわからない日本人が大半を占めるご時世になろうとはマッカーサーやケーディスもびっくりかな。2024/03/25
ikedama99
15
とびとびになったが、ようやく読み終えた。アメリカが天皇と皇太子にしかけたものに、凄みを感じる。その内容にせまる、いろいろな方向からの情報も読ませてくれると思った。日付を思うごとに繰り返し思い出すことになるであろう事柄の重さは時間を超えた時限爆弾のようにも思える。「昭和16年夏の敗戦」が国内のことだったが、これは戦勝国が相手に仕掛けた、己の強大な力を思い出せるシステムだったと思う。読んでよかった。2025/10/10
フンフン
10
2009年の発表時には『ジミーの誕生日』というタイトルだったのを2011年に文春文庫化するにあたり『東条英機処刑の日』と改題し、本年中公文庫にするにあたって1983年に発表した『昭和16年夏の敗戦』との関連を明確にするため『昭和23年冬の暗号』と改題したとのこと。でも知らない読者は猪瀬の新作かと思って買っちゃうかも。それをねらっているんだろうけど、旧作をタイトルだけ変えて何度も出すのはいかがなものか。ミステリー仕立てにしてあるけど、平成の天皇誕生日が東条処刑日だって誰でも知ってるがねえ。2021/10/30
ψ根無し草
4
無骨でドキュメンタリータッチな「昭和16年夏の敗戦」とはまた違って著者と共に終戦直後の日本にタイムスリップし謎を巡るかのようなワクワク感すら感じた。平成を生きてきた私たちにとって12月23日は天皇誕生日だったと言うのは当然だが、もう一つの出来事についてなかなか意識することはない。令和になり改めて上皇陛下の慰霊意味を考えされられる一冊となった。2025/10/28
てんぷら
4
一気に読んでしまった。面白かった。 敗戦後の軍隊含めた国内の混乱や、昭和天皇の処遇についてのエピソードはまさに歴史の分岐点で、興味深かった。 本書のテーマでもある12月23日を、上皇陛下がどう捉えてきたか、深く考えさせられると共に、背負っている宿命に向き合い続ける誠実さに、尊敬という言葉では言い表せない程の感情が湧き上がった。2025/07/09




