内容説明
本格ミステリの巨匠エラリー・クイーンは、フレデリック・ダネイ、マンフレッド・リーという従兄弟同士の合作作家。プロット担当のダネイと小説化担当のリーは、毎回、手紙と電話で意見を交換しながら作品を創り上げたが、その合作の実際は長く秘密にされてきた。本書は二人の往復書簡によって、二つの異なるタイプの才能が細部の検討を重ね、時に激しい議論を戦わせながら、中期の傑作『十日間の不思議』『九尾の猫』『悪の起源』を完成させていく過程を明らかにした貴重なドキュメント。
「この書簡集を夢中になって読み終えた今、私は、フレッドとマニーがこれだけ争っているのに本が完成して出版されたという事実を、信じることができない。しかし、二人がそれをやってのけたことを神に感謝しよう!」
――ウィリアム・リンク(本書序文より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
91
クイーンは神の私にとって、聖書に等しい彼らの小説がどのような過程を辿って誕生したかが赤裸々に語られていると聞いていたので読むのが怖い本だった。実際、往復書簡に満ち溢れる罵詈雑言の応酬と自説を譲らぬ頑固さは、よくこれで合作ユニットを長年やってこれたなと思えるほどだ。私生活上の苦悩も加わってストレスもマッハだったろうに、ダネイもリーも決して仕事に手を抜かず全身全霊を創作に捧げていた様子がわかる。2つの強烈な個性が遠慮なくぶつかり、化学反応を起こしたところに傑作が生まれる。米国でのクイーン再評価の日を切に望む。2021/09/23
中原れい
55
はー、長くかかてしまったけど面白かった。いやマジで、お互い作品について苛烈なほどの意見交換をしているのに個人や家族の事情に対する思いやりの厚さもすごくて、いいもん読ませてもらったなと思います。衝撃だったのは見立て殺人もの好きなの日本人だけ?って箇所でしたが^^; パズルなお兄さんも心配性のアメリカおじさんも好きなのでよかったファンとしては、すべての作品についてこういうの欲しかったなと無理をねがってみます。2023/02/27
ハスゴン
27
普段はあまり読まない書簡集ですが、コレがエラリーのとなると話は別です。後日読み返してみたいです。2021/06/29
くさてる
24
プロット担当と小説担当のふたりによって作り上げられた、エラリー・クイーンという作家。一番好きな「九尾の猫」や「十日間の不思議」といった名作の創作の裏側が知れて興味深かったですが、それ以上に、ふたりの創作者の真剣勝負なぶつかり具合がすさまじく、圧倒されました。作家は同時に生活者でもある、そんな当たり前の事実と、作品を創り上げようとする情熱とこだわりの凄み。良かったです。2021/11/06
くるみみ
20
三谷幸喜氏が絶賛してたので図書館で借りた。エラリー・クイーン作品読んだこともないし、プロットとライティングを分業して、エラリー氏とクイーン氏でも無いことも知らなかったけれど『手紙や電話で2人で喧嘩と言ってもいいようなやり取りで作品を作っていた』という部分が、人の争いごとが好きな私(悪趣味)は興味を惹かれなかなかのページ数だけど楽しく読めた。かなり辛辣な攻撃の合間に作品についての自分の意見を述べ、結びは互いの家族を思いやるというパターン。何となくリー氏の手紙の内容の方が理解できた。何か作品読んでみなきゃ。2021/08/09