内容説明
「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」突然の依頼に、作家の〈私〉は驚愕する。心に封印し続けた悲劇は、まさにその地で起こったのだ。私は迷いつつも、真実を求めて執筆するが……。評判の占い師、悪夢が憑く家、鏡に映る見知らぬ子。怪異が怪異を呼びながら、謎と恐怖が絡み合い、直視できない真相へとひた走る。読み終えたとき、それはもはや他人事ではない。ミステリと実話怪談の奇跡的融合。(解説・千街晶之)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナルピーチ
270
天井に見える小さな染み。毎日の様に眺めていると、いつの間にかそれは広がって、やがて色濃くなっていく…。1話目『染み』から始まる5つの怪談話。これは実話?!それともフィクション?!そのリアリティのある筆致に身震いを寄せつつ読み終える。結局のところはどっちなんだ?疑問に思うが、本書は何度も読み返してはいけない。考えてはいけない。だってこんなことわざがあるでしょ。『火の無い所に煙は立たない』根拠を探してはいけない。自ら火を起こしに行く必要なんてしなくていい。深読みすればする程、怖さはどんどん色濃くなっていく…。2022/03/16
馨
268
『妄言』は別の本で読了済み。でもこの話の裏にはこんな奥行きがあったのかと新鮮でした。どこまでが本当の話か途中分からなくなる短編ホラー。これを書いた芦沢さんしかり、これを読んだ私までも何かに取りつかれるのではないかと少し怖くなりました。2021/09/24
あきら
182
夏になってきたので、怪談が読みたくなる。 単なるホラーでない、ミステリー要素も強い作品でした。怖さというよりもちょっとした違和感を感じながら読み進める感じでした。 人はなんとか理解できるように落とし込もうとする。勿論自分も含めて。スッキリとした答えを求めたくなる。 とにかく夏の夜にぴったりのお話です。 面白かった。2021/07/16
bannai
145
芦沢さんの本はこれが初めてでした。ノンフィクションだとしたら、まだまだ続きがありそうですね。怪談というと映像で見ることがほとんどで、書籍でこのように読むのは初めてでしたが、映像とはまた違った怖さがあるということを知ることができました。2022/11/29
ゴンゾウ@新潮部
141
最近注目している芦沢央さん。今回も期待していた以上です。本当はホラーは余り好きではないのですが。残酷な描写はないですが心理的に追い込まれるぞくぞく感。そして気を許した時に最後にぞっとさせる。更に書き下ろしの終章で繋がった時の恐怖。上手いなぁ。【新潮文庫の100冊 2021】2021/07/08