海馬を求めて潜水を――作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険

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海馬を求めて潜水を――作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険

  • ISBN:9784622090151

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内容説明

ノルウェーの神経心理学者イルヴァと作家ヒルデの妹姉コンビが記憶の不思議に迫る旅へ。実験やインタビューなど体当たりの探訪記。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

よしたけ

58
神経心理学者と作家のノルウェー人姉妹が、脳科学者から記憶障害患者まで、幅広い協力者へのインタビューを通じて書き下ろした一冊。記憶メカニズム(長期記憶は海馬に保存され数年かけ脳全体に分散)から、記憶はあまり当てにならないこと(簡単に操作される)、忘却の重要性(大切なことを覚えておくため)、進化における記憶の重要性(未来を想像ための人間の唯一無二の能力)が語られる。軽やかな文章で、壮大なストーリーが頭に入ってくる。重症患者の例を見ると、「記憶がある」という当たり前の有り難みを感じられた。読んで損はない。2021/10/25

たま

40
実家の整理や自宅の整理で記憶について考えさせられる日が続き、読んだ本。私はエピソード記憶が弱いのだが、この本を読むと記憶はあやふやで当たり前と分り安心した(※)。反対に予定には強いのだが、やはりこの本によれば過去を思い出すことも未来を想像することも脳の同じ働きらしい。作家と心理学者の共著で科学研究を踏まえながら読みやすい文章で一般読者に興味深いテーマを取り上げる好著である。ノルウェーの事件や人物の例が多く、馴染みが薄いのだけが残念。物語も歴史もすべては記憶に依拠している。2021/12/28

Risa Shimowada

9
驚いたのは過去の記憶と未来のビジョンは脳の動き的には同じだということ。過去と未来がつながるとは思わなかった。記憶そのものがあやふやで変わったり忘れたり、正確な記録装置ではないのは元々そういう目的ではなく、未来を考えるための素材に過ぎないからなのか。生物が生きていく上で過去をベースにした未来の想像が大事、ということなのか。本全体は物語調なのか、結論が無いというか正直私には合わなかったが所々で面白い驚きがあった。匂いや音よりも断然位置情報が記憶とセットというのも意外だった。位置が分からなければ記憶できないとか2022/01/18

ルーシー

7
16世紀、海馬の発見から物語は始まる。特に面白かったのは第7章で、記憶想起と未来思考について。未来のシナリオを作成し将来に備える能力が人類の進化上大きな利点となったこと。脳内では何も考えていない(と思っている)時でも記憶と未来思考で使う領域は常に活動している、つまり覚醒時間の半分を過去の記憶と未来に起こりうることを考えながら過ごしているということ、などとても興味深く面白かった。脳科学についての本ながら語りが優しく、読みやすかった。タイトルと表紙も美しい。2021/11/03

nranjen

6
記憶研究のオマージュ、と帯に書いてあるように、バリバリ研究書なわけでもなく、かといって宙に浮いたような根拠のないエッセイでは決してない(ちゃんと論拠がある)不思議な雰囲気の書物。作家と神経心理学者の姉妹が書いた共著というのもおもしろい。文学、現実において、意外に当たり前のように扱われている「記憶」が、実は正体不明のものであり、なかなか曲者であることがわかった。虚偽記憶、物語と記憶、など気になる主題が。タクシー運転手の土地を司る海馬の発達が他の箇所を圧迫しているというのも面白い話だ。2021/12/27

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