内容説明
遠い太陽の光が海辺の一日に降り注ぎ、生まれては消える波のうねりを情感豊かに描きだす。男女六人の独白が物語るのは、幻想のように過ぎた半生の思い出。くり返す描写と語りが重なるとき、意識が風景に打ち解けていく。ウルフの傑作、四十五年ぶりの新訳!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
88
素晴らしい! 感想など書けない。訳者の森山恵さんのあとがきもいい。正直、本作品で初めてウルフの真髄にほんの少しだけど触れた気がする。これも訳者のお蔭なのかな。「源氏物語」を再読したくなってしまう。2024/06/25
アナーキー靴下
86
言葉はコミュニケーションに不可欠なもの、と思っていたが、それは思い違いだったのだろうか。人と人とを繋ぐ橋に見えていたものはただの隔たりでしかなく、言葉にするほどに断絶を意識させる。誰かと、同じ場所で、同じものを見て、同じように感じられたならば、それこそが完全なコミュニケーションだろうか。言葉は、文字は、無益なのだろうか。ああ、違うのだ。言葉を辿り、時間も場所も越えて、見たことのない世界を見せてくれる、それもまた、コミュニケーションなのだ。タイトル通り、寄せては返す波のように、その想いが交互に心を満たした。2021/07/22
yumiha
46
『幕間』は、劇の合間にポインツ・ホールの住人達の言動や思いが重なるように差し挟まれていた。本書も6人の男女の独白と成長に重なるように、波など自然の様子が詩的に語られる重層的な小説だ。6人それぞれの感じ方や生き方がある一方で、バーナードは互いに影響し合いどこかで繋がり合っていると思う。あるいは「暗青灰色の輪のなかで、回り回る鎖がある」と思うルイのように、何か大きなものに捉えられているとか、同じ流れにあるとか、そんなことを考えさせてもらった。 2022/11/07
燃えつきた棒
44
本書の刊行記念イベント 「ヴァージニア・ウルフとの新たな出会いとその先」に参加する前に読んでおこうと思って手に取った。 イベント開始10分前に、なんとか読了することができた。 僕のような生来の愚図には、この読書法はかなり有効なようだ。/2021/07/17
SOHSA
42
《図書館本》ヴァージニア・ウルフの作品を読んだのは「ダロウェイ夫人」に続き2作目。本作品は冒頭から続く独白形式に驚き、物語の展開を理解できないままに詩的表現の美しさに翻弄されながら読み進めた。訳者あとがきで述べられているとおり最初の100頁を過ぎたあたりから徐々に作者の描く世界が明瞭になった。6人の登場人物はそれぞれに自身の思考と人生とを語り、時間の経過とともに離れ散り散りに別れていくかのように描かれる。それはタイトルのとおり寄せた波が崩れそれぞれの方向へと広がっていくように。(→)2024/02/04
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