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内容説明
『さよならテレビ』『人生フルーツ』『ヤクザと憲法』など、話題作を世に送り続けてきたテレビ界の異才によるドキュメンタリー論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
imagine
11
毎度楽しみにしている東海テレビのドキュメンタリー作品。傑作を次々と放つ著者の、おそらく初書籍。セリフを多用する独特な文体から、理屈よりも情熱で動く人柄が伝わってくる。局内で上司とぶつかり合い、取材相手と気持ちを通じ合う姿は、古き良き報道マンのお手本といったところ。樹木希林さんから絶大な信頼を得ているのも大いに納得。個々の作品について苦労話や後日談が読めるのもファンにとっては嬉しい。働く者への人生論、組織論としても面白い。最短距離でマネーや成功を掴むことばかりが良しとされる今の社会、若者に届いてほしい一冊。2023/06/19
まろまろ
8
目を引いたのがダム建設、権力者のエゴ丸出しの背景がよくわかった。集落が水没する悲しみ、村道が無くなる恐怖。ダムが奪う人間らしさを追及する取材の苦労が忍ばれる。そしてドキュメンタリーの重さを知った。2022/06/25
梅田
6
「ドキュメンタリー好き」を自認していてもそれはたいてい「ドキュメンタリー映画好き」であって、TVドキュメンタリーの存在感はとても小さい。この本はドキュメンタリーの本である以前にTVの本である。もはやTVは主要メディアではなくなった世代からすると、逆にその世界は新鮮に映る。NHKの「再現映像」への辛辣な批判や、仲代達矢と樹木希林の痺れるエピソードなど引きの強い部分も多い。2021/08/28
sekkey
4
著者ほど番組制作の数々の困難さに向き合って戦っているテレビマンは他にいるのだろうか。取材対象者との丁寧な関わり合い、「組織」のしがらみをものともせず、タブーや一見地味で視聴率に繋がらなそうな題材にも果敢に取り組む。「組織」より「個人」、「会社」より「社会」という考え方が大事。ドキュメンタリーはコツコツ、ゆっくり「時をためて」作り出されるもの。人間は多面体で怪しげなことも純粋なことも理解不能なこともある等々現場を知り尽くした説得力のある言葉の数々。後進の方々には阿武野さんのDNAを引き継いでいただきたい。2023/05/21
お抹茶
4
著者は東海テレビで多くのドキュメンタリーを作ってきた。安全・安心を上位概念に位置づけてしまったテレビには自由に表現を繰り出すことが困難になったが,著者はドキュメンタリー映画にも活路を見い出し,世の中の現実を伝えていく。「最後に番組に映り込むのは制作者の裸」と言うくらい,何かを脱ぎ捨てて,目の前の理解できないことをカメラで捉えていくジャーナリストの矜持を感じる。2022/01/27