内容説明
フェルメールの名画は「パン屋の看板」として描かれた!? ガラクタ扱いされていた印象派の価値を「爆上げ」したマーケティング手法とは? 美術の歴史はイノベーションの宝庫である。名画・名作が今日そう評されるのは、作品を売りたい画家や画商、そして芸術を利用しようとした政治家や商人たちの「作為」の結果なのだ。ビジネス戦略と美術の密接な関係に光を当てた「目からウロコ」の考察。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
105
タイトルが誤解を招きかねないが、実際は、社会の変化とともに美術作品の役割がどう変わってきたかというような内容。宗教改革とオランダ絵画、メディチ家の闇金融とルネサンス、王権神授説とアカデミー、ナポレオンのブランド戦略、アメリカの隆興と印象派などの事例を通じて、美術を、芸術至上主義的成就としてではなく、社会(ビジネス)のニーズに対応したものとして捉えようという意図なんだろう。ただ、これまで様々な「名画の暗号」を教えてもらった西岡先生の著作にしては、新鮮な指摘も少なく、少し刺激に乏しい一冊だったような気がする。2021/11/17
ホークス
38
2021年刊。かなり辛口。宗教改革によりプロテスタントの国では聖像・宗教画が壊され、風景画や静物画が人気に。特にオランダは多様な絵を量産し、視覚消費財市場を作り出す。一方カトリックの国では感情・感覚に訴えるバロック的宗教画が栄える。双方とも、絵画は脱教会を目指す組合=ギルドの徒弟制に。優れた個人は反発し、絶対王政の庇護でアカデミー化する。絵画の変革は闘争を伴いつつ、教会支配→ギルド支配→アカデミー支配(観念含む) →画家の自立と続く。平民国家アメリカのパリ信仰が、印象派を「爆上げ」する顛末も面白い。2023/04/02
ま
28
アートと実生活の接続点が見えてくる本。当時酷評された印象派の絵で敵兵を追い払う絵がとにかく面白かった。人間の審美眼ってあてにならないなと思い直す。2022/12/15
おせきはん
26
時代の変化とともに、画家が描くもの、画家の支援者が変わってきた状況が説明されています。印象派の作品の価値を上げるために画商が採用した戦略は、特に興味深かったです。作品を取り巻く人々のお金にまつわることは、美術の話題としては控えられがちなのかもしれませんが、社会の実像をよく表していると思いました。2021/10/08
kyoko
12
わたしは従来、「中世はキリスト教社会だから宗教画が描かれ、ルネサンス後は市民階級の台頭とともに経済力を持った北ヨーロッパ中心に市民階級の日常を描いた絵が広まった」と捉えていた。それが、宗教改革の影響で偶像崇拝が禁止されたプロテスタント国でスポンサーがいなくなったから写実的な絵が描かれ(フェルメールの絵はパン屋の看板)、さらに印象派でありながら金ぴかの額縁と猫脚家具によって箔付けをすることで成金趣味の金持ちが買って行った、だと!(最初と最後を乱暴に抜粋)とにかく目から鱗の美術史。大変面白かった。2021/10/13
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