チンギス・ハンとモンゴル帝国の歩み

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チンギス・ハンとモンゴル帝国の歩み

  • ISBN:9784775942161

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内容説明

チンギス・ハン率いるモンゴル軍は25年間で、ローマ帝国が400年かけて征服した以上の土地と人びとを配下におさめた。

それは13世紀においてもっとも人口密度の高い諸文明を征服したのだ。打ち負かした人びとの数、併合した国の数、占領した土地の総面積、いずれをとっても、チンギス・ハンは征服者として歴史上のあらゆる追随者を2倍以上引き離す。最盛期のモンゴル帝国は、アフリカ大陸に匹敵する30億ヘクタールにおよんだ。今日の世界地図でいえば、チンギス・ハンの版図は30か国、30億人以上を擁する。シベリア・インド・ベトナム・朝鮮半島からバルカン半島までが含まれる。これだけの偉業を百万人のモンゴル民族で果たしたのは驚異的なことだ。

モンゴルの栄華はすぐれた軍事力のみによるものではなく、むしろ科学を活用した賜物だった。モンゴル人は戦好きではあったが、彼らの興隆は「余暇を哲学の諸原理探究に注ぎ込んだ」ためだった。

モンゴル人の来襲を受けたほとんどすべての国では、見知らぬ蛮族による征服当初の破壊とショックは、たちまち未曾有の文化交流ブームと、交易拡大と、文明開化とに取って代わられた。モンゴル人たちは、商品や産物を活発に流通させ、それらをうまく組み合わせて、まったく新しい製品や前例のない発明を生み出すことに力を注いだ。

モンゴル軍は、当時のヨーロッパが中国やイスラム諸国と比べおおむね貧しかったことに落胆し、略奪行為に及ばなかった。そのため、最小限の被害で、新しい技術と知識を得た。商業の生み出す富がルネサンス(文芸復興)をもたらし、そのなかでヨーロッパはみずからの伝統文化を再発見した。もっとも重要なことは、印刷技術と火器と羅針盤と算盤を東洋から伝えたことだろう。

本書は3部構成になっている。

第1部は、チンギス・ハンが草原で権力の座に上りつめる物語と、1162年の生誕から1206年に全部族をまとめてモンゴル帝国を打ち立てるまで、彼の人生と性格を形づくったさまざまな力を取り上げる。

第2部は、チンギス・ハンの孫たちが争い合うようになるまで五世代続いた「モンゴル世界大戦」(1211~1261年)を通じ、モンゴル人が歴史の表舞台に登場する経緯を追う。

第3部は、そののち百年の平和と、現代社会につながる政治的・商業的・軍事的構造の基礎を築いた「グローバルな目覚め」(1262~1962年)を掘り下げる。

チンギス・ハンとモンゴル帝国についての暗部を解明した本書の魅力は色あせることなく、読み語り継がれていくことだろう。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

カルパッチョ

33
2006年に刊行された「パックス・モンゴリカ」の改題改訂版。元が十数年前の本なので今読むと内容に古臭さを感じる部分もあるが、元朝秘史が伝えるチンギス・ハンの生涯とその後のモンゴル帝国がわかりやすく書かれている。モンゴル史入門書としてオススメ。2020/05/27

マーロウ

4
モンゴル帝国の歴史が知りたくなり読了。 「文化を破壊した遊牧民」という見方が、かなり変わった。 チンギス・ハンは偉大で尊敬されるべき君主で、世界に文化を行き渡らせることに大きく貢献したことを知り、モンゴル帝国の縮小は黒死病が大きな原因になったことも初めて知った。 モンゴル軍が海戦は不得手だったとはいえ、日本が助かったのは本当に神風が吹いたとして言いようがないのだと、改めて実感。2023/01/25

sa10b52

0
モンゴル帝国の歴史と功罪について。概して残虐な印象を持たれ日本の歴史でも元寇として大きなインパクトを残した帝国は、イメージ通りの残虐な部分もありながら、先進的で寛容なところもあるのだとわかった。たとえば今日でいう信教の自由や女性の社会・政治への参加など。また経済システムやテクノロジーの点でも受容と発展を推し進めた。東西の人的・技術的交流を進めヨーロッパの躍進の礎ともなったのだと気付かされる。戦争ではほぼ無敵に見える帝国だが、チンギス・ハーン亡き後はお家騒動に振り回されっぱなしなのがなんとも。2024/06/14

そうけん

0
概ね読了 チンギス・ハンの一生と、モンゴル帝国の興りが語られる。モンゴル帝国は、世界史の中ではおよそ悪役といって良い立ち位置であるが、筆者はモンゴル帝国を養護する立場。ちょっと寄りすぎでは、と思うところもあるが、新たな視点が得られて面白かった。「ヨーロッパ(東ヨーロッパは除く)は略奪・支配を免れ、むしろパックス・モンゴリカの恵みを受け発展していった。」との主張があるが、なるほどな〜、と感心した。もちろん、ペストの流行を伴ったが。2022/10/19

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