岩波新書<br> 地域衰退

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岩波新書
地域衰退

  • 著者名:宮崎雅人
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 岩波書店(2021/05発売)
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  • ISBN:9784004318644

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内容説明

なぜいつまで経っても地方に「景気回復の温かい風」は届かないのか.長野県須坂市,同県王滝村,群馬県南牧村などの事例を通して,製造業,リゾート,建設業等,基盤産業の衰退後に地域が辿ってきた「衰退のプロセス」を詳細に検証.国の「規模の経済」に基づいた政策誘導が逆に危機を深刻化させている実態を明らかにする.

目次

はじめに┴「景気回復の温かい風」は届かない/新型コロナウイルスと地域/本書の構成┴第1章 地域はどのくらい衰退したか┴第1節 進む少子高齢化┴人口減少と高齢化/労働力人口の減少┴第2節 衰退を示す社会経済指標┴商店数の減少/失業率の上昇/地方都市の衰退/課税対象所得の減少/病院数・医師数の減少/高等学校数の減少/増えたのは空き家/止まらない地域衰退┴コラム1◆空き家問題と地方財政┴第2章 衰退のメカニズム┴第1節 製造業の衰退と「企業城下町」の終焉┴製造業従業者数の減少/富士通の城下町だった須坂/一九七〇年代から九〇年代にかけての動き/「富士通城下町・須坂」の終焉/「城主」企業の縮小・撤退の影響┴第2節 リゾート開発と自治体財政の危機┴村営おんたけスキー場の衰退/町村合併からの「排除」/自治体財政健全化法と「財政危機」┴第3節 単独事業への政策誘導と建設業の衰退┴補助事業から単独事業へ/自治体の財政悪化と土木費の減少/建設業の立地状況と土木費削減の影響┴コラム2◆オーストラリアの地域衰退┴第3章 衰退の「臨界点」┴第1節 基盤産業を失った地域┴山村のケース 群馬県南牧村の場合/旧産炭地のケース┴第2節 サービス経済化と地域衰退┴事業所サービス業の拡大/サービス業と大都市集中┴第3節 社会保障給付が支える地域┴医療・介護サービスの拡大/都道府県内でのサービス業の分布/社会保障が地域の産業構造を形づくる┴第4節 「臨界点」はどこにあるのか┴なぜ衰退が止まらないのか/財政にも及ぶ衰退┴コラム3◆「発展なき成長」┴第4章 「規模の経済」的政策対応の問題点┴第1節 農業の大規模化は農村の持続を困難にする┴農業経営と「規模の経済」/農地の集積は進みつつある/大規模化でコストは削減されるのか/農業の大規模化が及ぼす悪影響/国連「家族農業の一〇年」┴第2節 林業の規模拡大でも森林の荒廃は止まらない┴森林経営管理制度の導入/市町村は森林を適正に管理できるか/森林環境税の導入とその配分/「意欲と能力のある林業経営者」と五〇年皆伐/「自伐型林業」という可能性┴第3節 市町村合併は歳出の効率化をもたらさない┴平成の大合併/経費の削減は実現したのか┴第4節 大規模化は人口減少に対応できるのか┴大きいことはいいことか?/小規模自治体が大半を占める可能性/「小規模」を前提に政策を組み立てる┴コラム4◆「密度の経済」┴第5章 地域衰退をどう食い止めるか┴第1節 人々が生きていくために必要な社会サービスを確保する┴後期高齢者の減少と社会保障給付の減少/医療サービスを維持する┴第2節 国による政策誘導をやめる┴「地方創生」の問題点/政策誘導がもたらしたもの リゾート開発の例┴第3節 地域に産業を興す┴容易ではない基盤産業の復活/「まちづくりの成功事例」は参考になるか?/地域における小水力発電の可能性/地方から都市に電気を売る/事業所サービスの「地産地消」┴第4節 分権・分散型国家をつくる┴「疎開」ではなく,「定着」をつくる┴参考文献一覧┴おわりに

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

60
財政の専門家の書だが、地理学的なアプローチが見られ、地域を重層的に捉えながらその衰退の原因と、対策を考えている。基調に少子高齢化があり、その進行が様々な影響を与えるという見方は『地方消滅』に通じるが、本書は衰退要因としての基盤産業の衰退に注目している。つまり基盤産業(自伐林業とか地域医療とか小規模水力発電とかかなり多様)を重視する。しかも外部からの需要に依存するのではなく、積極的にアウトプットする産業を、国の計画でなく、地域(住民+自治体か?)が構築することに活路を見いだそうとするのだ。2021/02/12

けんとまん1007

56
地方創生とか、規模の追求は、基本的に信用していない。それを裏付けてくれる、真摯な一冊。都合のいいような数字だけを持ってきて、しかも、そのフォローもしない風潮。規模の追求は単一につながり、それは、柔軟性に乏しい。柔軟性が乏しいということは、持続性が薄いということ。規模ではなく、範囲の経済という概念が、ある意味、わかりやすかった。規模の小さい、ゆるい繋がりをたくさん持つ。ウィークタイズがキーワードだと思う。2021/04/01

壱萬弐仟縁

40
第1章の各表をみると、長野県関連では、天龍村や大鹿村が衰退しているデータとなっている。小売業商店では朝日村がマイナス77.5%(9頁)。だが、近くにザ・ビッグやファミマもあるようだ。深刻なのは、自治体に医師が居ない平谷村と売木村(17頁)。近隣に頼る以外ないのか。伊那市のようなワンボックスカーでMaaSが肝心に思える(「移動」の概念が変わる? 新たな移動サービス「MaaS(マース)」 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp) 。 2021/04/15

おせきはん

30
基盤産業の衰退とともに活力を失っていった地域の実態を明らかにしています。サービス経済化が、都市では事業所サービス、地域においては高齢者医療・介護サービスによるものである、まちづくりの成功事例が必ずしも雇用創出につながっていないとの指摘は、地域の人材や資源を活かした新たな基盤産業創出に向けて重要な視点だと思いました。2021/03/06

たばかる

26
筆者は経済学者で、地方衰退の原因を地域の基盤産業の衰退・消失に見る。例えばバブル前の製産業や観光業など、自治体が財政収入の多くを依存している産業が衰退し財政収入だけでなく雇用までも減少する現状を示す。最終章では対策について語られ、国による一律な政策や成功した事例の模倣は、地域の固有性に適合していないことが多い。困難な道ではあるが、そうした自治体に対しては、最も地域に詳しい住民たちが試行錯誤するしかないのだろう。2021/05/10

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