文春e-book<br> 西暦一〇〇〇年 グローバリゼーションの誕生

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西暦一〇〇〇年 グローバリゼーションの誕生

  • ISBN:9784163913704

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内容説明

西暦1000年。
西ヨーロッパはいまだ暗黒時代からの復興の途上にあり、大航海時代は遠い先のことだ。
しかし本書はその西暦1000年こそが「グローバリゼーションが誕生した年」である、と西欧中心の史観を離れて描き出す。

中国からインド、アラビア半島、さらにアフリカまでの海上交易ルートはこの頃初めて結合した。さらにカナダに到達したバイキングが、南北アメリカで発達していた交易路を、その海上ルートと結びつけた。

史上初めて、異国のもの、技術、情報、宗教が遠く離れた国に到達し、一般の人々まで影響を及ぼす「グローバリゼーション」が始まったのだ。

イェール大学歴史学教授である著者はは西暦1000年の各地の交易品を手がかりに、世界中で同時進行していた変化を生き生きと再現する。世界的な交易は農業生産性を高める反面で感染症を広め、知識を広める反面で固有の文化を分断し、新技術を伝える反面で伝統工芸を消滅させた。
宗教を変え、他国向け製品をつくり、反グローバリゼーション運動を起こす人々の姿は、驚くほど21世紀と似ている面がある。

西暦1000年、カナダに到達したバイキング。
丸木舟で南北アメリカを往来するマヤ人。
4つの世界宗教から改宗を勧誘されたウクライナの大公。
すでに奴隷貿易が活況を呈していたアフリカ。
そしてグローバリゼーション最先端の地としてハイテク製品である陶磁器を輸出し、世界中から富を蓄積していた中国――平安時代の日本もその経済圏に組み込まれていた。

西暦1000年から、ヨーロッパの支配という世界史の新たな局面が始まる1500年までの500年間、「最初のグローバリゼーション」が世界を大きく変えていた。
バラバラに知っていた世界史の知識が新たなフレームで再定義され、読者に知的興奮を呼び起こす。現代グローバリゼーションの世界を生きる者への教訓に満ちた胸躍る歴史書。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

サアベドラ

39
1000年前後における南北アメリカを含む世界の人とモノの動きを描いた一般向け歴史啓蒙書。著者はアメリカの中国史家。この時期のユーラシアにすでに国際的な交易ネットワークが確立されていた話や、最大の貿易大国は中国の宋、ポリネシア人の太平洋の拡散、ノルド人のアメリカ大陸到達など、大体のトピックはどれも各論で聞いた話ではある。収穫は、マヤの神殿に金髪碧眼のノルド人らしき人物やヴァイキング船らしき船が描かれていることを知れたこと。東欧やアフリカ、中央アジアなど文明の周縁部はどこも奴隷貿易が盛んだったことも印象的。2022/04/27

Shin

18
タイトル通り西暦1000年の世界をグローバリゼーションの観点から描いた歴史ドキュメンタリー。この時代の世界をグローバルヒストリーの観点から切り取っている本そのものが珍しいのだけど、その視点もユニークで知的興奮に溢れている良書。バイキングの北米渡航やロシア建国、ローマカトリックvs東方正教会、ユーラシア大陸でのイスラム教と仏教の割拠、中国と東南アジアの貿易圏、等々、その後の世界の輪郭を浮き彫りにするダイナミックな人々の動きと相互作用。大航海時代に欧州人に滅茶苦茶にされてしまう前の彩り豊かな世界絵巻。2021/07/14

MUNEKAZ

17
あとがきによれば、著者は宋と遼の「澶淵の盟」、カラハン朝のカシュガル征服、バイキングによる北米到達が同時期であるということから本書の着想を得たとのこと。前2つはともかくバイキングの件は「到達」であって「グローバル化」とまでいえるかどうか(中南米まで到達していたかもという試論は面白いが)。ただカラハン朝、ガズナ朝といった中央アジアの勢力まで目配せして、ユーラシア大陸全体の動きを描いているのは興味深いところ。ありがちな中国、イスラム世界の紹介にとどまらず、新大陸や中央アジアにも目を向けているのが新鮮である。2022/02/27

リットン

8
コロンブスの偉業は、南北で交易路が既にあったアメリカ大陸を見つけ、ヨーロッパと結びつけたことであり、なにもないアメリカ大陸を見つけたというわけではないというのは確かに、と思った。コロンブスですら、それ以前のアメリカ、ヨーロッパの人々の築き上げた交易路や技術、文化の上に最後にイチゴを載せたに過ぎないという捉え方もあると思うと、人間ちっぽけなものだなあと感じる。自分たちの生活や社会は過去の人たちの小さい積み重ねの上にあることを自覚した上で現代人としてうねぼれてはならないなあと感じた。2021/11/08

coldsurgeon

8
グローバリゼーションは、11世紀ごろに始まったという説を、広範囲の地域、多くの証拠により、展開する。それそれの地域での宗教圏、経済圏が、すこしづつ接触し、重なり合っていくことが歴史をたどって示される。グローバリゼーションは、勝者と敗者とを生み出し、経済的格差を生み、知識の向上とともに文化的分断を、新技術の伝搬とともに伝統工芸の消滅をもたらし、感染症の蔓延を容易にする。グローバリゼーションは、全員に利益をもたらしたわけではないが、新しいものを受け入れた人々は、大きな成果を収めたのだ。2021/06/25

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