内容説明
今まで虚構を描いてきた。
初めて本当に思っていることを書きました――麻枝准
***
『CLANNAD』『Angel Beats!』『神様になった日』――
話題作を作り出し続けるカリスマの内心が初めて明かされる処女小説、緊急刊行
***
海辺で出会った彼女は、美しく饒舌で世界で誰よりも――死にたかった。
猫が戯れるのを眺めていた女子大生・時椿は、断崖絶壁に立つ女性に声をかける。
飛び降りようとする黒髪の美女・十郎丸は、多くのヒット曲を手がける作曲家だった。
彼女は予想に反して、雄弁で自信に満ちた口調で死にたい理由を語ってのける。
人生で初めて出会った才能豊かな人間が、堂々と死のうとしている事実に混乱する時椿。
なんとかその日は十郎丸を翻意させ、下宿に連れて帰ることとなる。
なぜか猫に嫌われる死にたい天才作曲家と、何も持たない大学生。
分かりあえない二人の、分かりあえなくもあたたかい6日間が、始まった。
麻枝 准の生きている世界はこんなにも苦しくて、理不尽なものだった――。
「泣ける」ことだけにこだわり創作してきた彼が純粋に書きたいものを初めて書いた処女文芸作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゼロ
109
カリスマシナリオライターの処女小説。登場人物は、女子大生・時椿と作曲家で黒髪の美女・十郎丸。十郎丸は、死にたがりの女性で、時椿がそれを止めようと6日間の共同生活が始まります。十郎丸は、著者の移り変わりかの如く、作曲家としての愚痴や生きることの絶望を語ります。「この世に生み落とされることなんて頼んでいないぞ?」の言葉が全てであります。小説として出版されてますが、描写が足りてない所や終盤の感情の爆発は言葉だけなど、テキストゲームでやれば、より楽しめたのかなと。オチも唐突であり、残念。ファン向けの本でした。2021/05/29
いちろく
33
自殺しようとした女の子と自殺を止めた女の子、黒髪の美女十郎丸と女子大生の時椿が過ごした6日間の物語。2人の掛け合いや状況描写を含め良くも悪くもアドベンチャーゲームを眺めている感覚の文章であり、以前に著者が関わった作品や世界観に触れた事がある人なら、麻枝准らしい、ときっと思える内容。所々挿入されるリアルで細かい文章は、著者自身の経験や体験も反映させているのか?と錯覚しそうになった。私にとっては、昔の思い出にサヨナラを貰えた文芸での処女作だった。2021/05/22
椎名
12
どこまでいっても麻枝准だなあと。これまでの作品をほぼほぼ追ってきたということもあるが、個人的には非常に面白かった。ただ生きるということがどれだけの苦痛を伴うか、普通に生きるということがどれだけ自分にとって難しく理解し得ないものなのかを滔々と語り続ける作曲家。そしてそれらの言葉に微塵も共感できない、普通になんとなく幸せに生きている女子大生。わかりあえないことをわかりあうまでのようなささやかな6日間。大切なたったひとつを待ち続けること、その待つということの意味や強さをどの作品でも繰り返し描いている印象。2021/05/23
ざぼ
11
麻枝さん原作のゲーム・アニメ・漫画はほぼ全作コンプしてきたが、どれも根底の思想や物語の構成は変わらない。コミカルトーク満載の日常の煌めきと、世界の真理への探求から明かされる謎深さと、積み上げた日々が瓦解する儚さ。ある意味予想がつくので、今作のシリアスシーンも何故か笑いが込み上げてくるほど。麻枝さんの真価は何でもない日々が幾重にも積み重なってこそ発揮されると思うので、アニメや小説の短尺では収まり切らないんじゃないかなぁ。十郎丸はリトバス来ヶ谷かクラナド智代、時椿はサマポケ鷹原(男だけど)の絵が脳内で流れた。2021/05/19
かっぱ
10
僕の青春のもっとも近い場所にはいつだって麻枝准がいた。だから、死の影を背負った十郎丸に彼の存在を被せてしまうのはファンとしては仕方のないことなのかもしれない。繊細すぎる心を持って生まれたゆえに生を放棄したい十郎丸と、そんな彼女になんとしても生きてほしいと願う時椿。二人の小気味の良い会話の掛け合いがとても好みだ。噛み合っているようで噛み合わない。分かってるようで分かっていない。絶妙なバランス感覚のあとに迎えるラストはとても印象的で著者らしさを感じる。読み終わったあとにタイトルの意味を何度だって考えてしまう2021/05/19
-
- 電子書籍
- 初心者からちゃんとしたプロになる PH…