内容説明
基礎的な生物化学,分子生物学を復習するための章を設け,融合領域学習の際に不足する知識を本書1冊で学習できるよう配慮した。また,苦手意識の多い計算式を丁寧に解説し,生物化学工学の基礎を習得することを目的とした。
目次
第0部:社会に役立つ生物化学工学
0. 社会に役立つ生物化学工学
0.1 社会のニーズと生物化学工学
0.2 私たちの身のまわりのバイオテクノロジーの利用
0.3 バイオプロセスの特徴と利用分野
0.4 バイオ法アクリルアミドの生産
コラム グリーンケミストリー
演習問題
第1部:生命科学の基礎
1. 微生物学の基礎
1.1 真核微生物と原核微生物
1.2 栄養形式
1.3 生育環境
1.3.1 温度
1.3.2 水分量
1.3.3 酸素濃度
1.3.4 pH
1.3.5 塩濃度,光,放射線,圧力
1.4 細菌の分類
1.4.1 分類体系
1.4.2 分類指標
1.4.3 形態学的分類指標
1.4.4 生理・生態学的分類指標
1.4.5 化学的分類指標
1.4.6 系統分類
1.5 培養
1.5.1 培地
1.5.2 培養形式
コラム 微生物との同居の心得
演習問題
2. 生化学の基礎
2.1 生体物質の構造と性質
2.1.1 生体物質
2.1.2 タンパク質
2.1.3 脂質
2.1.4 糖質
2.1.5 核酸
2.2 代表的な代謝経路
2.2.1 代謝と栄養
2.2.2 発酵(基質レベルのリン酸化)
2.2.3 呼吸(酸化的リン酸化)
2.2.4 光合成(光リン酸化)
コラム 砂糖はおとなしいからこそ甘い
演習問題
3. 分子生物学の基礎
3.1 セントラルドグマと遺伝子構造
3.2 遺伝子工学による異種遺伝子の発現
3.2.1 組換えベクターの構築
3.2.2 形質転換
3.2.3 目的組換え菌の増殖と選択
3.2.4 目的遺伝子の形質発現
3.3 遺伝子組換え技術
3.3.1 電気泳動
3.3.2 PCR
3.3.3 DNAシーケンス解析技術
3.4 遺伝子工学的育種のために重要な技術
3.4.1 突然変異
3.4.2 バイオインフォマティクス
コラム 省エネ微生物(遺伝子組換えで酸素供給を改善)
演習問題
第2部:生物化学工学の基礎
4. 生物化学工学とは
4.1 生物化学工学の位置づけ
4.2 生物産業への生物化学工学の適用
4.2.1 使用微生物の選定
4.2.2 種菌の培養
4.2.3 主発酵
4.2.4 生産物の分離精製と製品化
4.3 生物化学工学を学ぶにあたって
コラム 数学は嫌い,化学や物理も苦手…
演習問題
5. 単位計算の基礎
5.1 単位はなぜ大切か
5.2 SI単位系―世界標準の単位―
5.3 単位計算の基本
5.3.1 物理量の表し方と計算の考え方
5.3.2 単位の換算
5.3.3 マスターしておきたい単位
コラム 意外に使える「ざっくり計算」
演習問題
6. 物質・エネルギー収支計算の基礎
6.1 収支とはなにか
6.2 保存則と収支式の考え方
6.2.1 保存則
6.2.2 収支式のつくり方
6.3 エネルギー収支
6.4 物質収支
6.5 物質収支・エネルギー収支と生物化学量論
コラム 微生物の化学式?
演習問題
7. 生体触媒の特性
7.1 生体触媒とは
7.2 酵素反応の特性
7.2.1 活性化エネルギーと酵素
7.2.2 酵素反応の特徴:温和な条件(温度,pH)
7.2.3 酵素反応の特徴:特異性(反応,基質,立体)
7.2.4 酵素反応の仕組み
7.2.5 酵素の構造
7.3 モノづくりにおける酵素
7.3.1 化学反応との比較
7.3.2 酵素の多様性
コラム 遺伝子工学に欠かせない耐熱性DNAポリメラーゼ
演習問題
8. バイオプロセスとバイオリアクター
8.1 バイオプロセスの特性
8.2 各種バイオリアクターとその特性
8.2.1 運転操作法によるバイオリアクターの分類
8.2.2 型式によるバイオリアクターの分類
コラム 相反するニーズを満たす―王冠についているギザギザの数はいくつ?―
演習問題
9. バイオプロセスの操作要素
9.1 バイオリアクター内の物理現象―移動現象の基礎―
9.1.1 流動と粘度
9.1.2 熱移動と熱伝導度
9.1.3 物質移動と拡散係数
9.1.4 移動現象の相似性(アナロジー)
9.2 バイオリアクター内の物質移動―培養槽への酸素供給―
9.2.1 境界層と境膜説
9.2.2 二重境膜モデルと酸素移動容量係数kLa
9.2.3 kLaに影響を及ぼす因子
9.3 滅菌操作
9.3.1 微生物死滅の速度論
9.3.2 殺菌と加熱操作
コラム 培養液の流動特性とレオロジー
演習問題
10. 酵素反応速度論
10.1 酵素とは
10.2 酵素反応の速度論
10.2.1 律速段階法によるvpの算出
10.2.2 定常状態法によるvpの算出
10.3 酵素反応の阻害
10.3.1 拮抗阻害型の酵素反応
10.3.2 非拮抗阻害型の酵素反応
10.3.3 不拮抗阻害型の酵素反応
10.4 酵素反応における定数値の算出
10.4.1 Lineweaver-Burkプロット
10.4.2 各動酵素反応の動力学定数
コラム 「トリアエズ・ビール」は何社のどんな種類のビールですか?
演習問題
11. 微生物反応速度論
11.1 微生物量の測定法
11.1.1 重量法
11.1.2 濁度法
11.1.3 細胞数計数法
11.1.4 間接的測定法
11.1.5 その他
11.2 増殖曲線
11.3 単細胞微生物の増殖
11.3.1 基質濃度と増殖速度の関係
11.3.2 基質消費速度
11.3.3 基質消費速度の計算法(連続培養)
コラム 微生物の故郷―土壌―
演習問題
第3部:バイオプロセスの実際
12. 微生物(動物・植物細胞)のバイオプロセス
12.1 微生物培養による有用物質生産
12.1.1 化学生産への応用
12.1.2 医薬品(生理活性物質)への応用
12.2 微生物の培養方法
12.3 植物細胞培養による有用物質生産
12.3.1 植物培養細胞の大きさと工業生産に用いる利点
12.3.2 植物培養細胞の今後の課題
12.4 動物細胞の培養
12.4.1 工業生産に用いられる培養動物細胞
12.4.2 動物細胞の増殖速度
コラム 醤油やお酒をつくる人は納豆を食べてはいけない?
演習問題
13. 酵素バイオリアクター
13.1 モノづくりでの酵素反応の利用
13.2 食品分野
13.2.1 異性化糖
13.2.2 トレハロース
13.2.3 機能性油脂
13.2.4 核酸系うまみ調味料
13.3 化学品,ビタミン分野
13.3.1 ニコチン酸アミド
13.3.2 配糖体
13.4 医薬分野
13.4.1 光学活性アミノ酸
13.4.2 光学活性アミン
13.4.3 β-ラクタム系抗生物質
コラム アミノ酸系甘味料アスパルテームの製法開発
演習問題
14. 排水処理プロセス
14.1 排水処理の概要
14.1.1 排水処理の目的
14.1.2 水質の指標
14.1.3 好気処理と嫌気処理
14.2 浮遊生物法
14.2.1 活性汚泥法
14.2.2 嫌気性接触法(嫌気的活性汚泥法)
14.3 固着生物法(生物膜法)
14.3.1 生物膜法の特徴
14.3.2 回転円盤法
14.3.3 浸漬ろ床法
14.4 余剰汚泥の減容化と活用
コラム 小型浄化槽の小さな歴史
演習問題
第4部:これからの生物化学工学
15. これからの生物化学工学
15.1 バイオテクノロジーを飛躍的に発展させる技術革新
15.2 合成生物学による生物的モノづくりの革新
15.3 医療の変革
コラム 健康とバイオテクノロジーの進歩
演習問題
引用・参考文献
索引