内容説明
「頼んだぞ、約束だ」目を見て頷いた。優しい目で父は、よしよしというように二度頷いた。一年経った祥月命日の頃には、私の生活は父が生きていた頃とほとんど変わらない毎日に戻っていた。しかし、時々はふっと思い出す。あの時、父は私に何を頼んだのだろうか、父と何を約束したのだろうか。葬儀の日に大人たちが私に言ったこととは違う、何か特別の大事な約束だったのではないかと。第3回人生十人十色大賞長編部門最優秀賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スパナ
1
年老いた母を介護することになった男性のはなし。短い小説だけど、老いや死についてたくさんのことを考えさせてもらった。 介護や別れはもちろん大変なことだけど、辛いばかりではない描かれ方が良かったです。泣けました。2021/08/13
山内正
0
九月二十日母が逝った 月命日は実家に、窓を開け風を通す 母の椅子に座り暫くそのままに 五つの頃父の仕事場の巻場と呼ばれるとこへ、トロッコを巻き上げる仕事を 炭鉱で体をこわし入院した 下の川で魚取りして遊び本を読んでもらい 眠った 頭に手を乗せ頼んだぞ約束だと 母が三十二で父が死んだ 伯父さんの子になるかと聞かれ嫌だと私が 父は何を頼んだのか 五年の頃に炭鉱辞めて引越す友達が 減っていった 姉はバスの車掌になり 皆変わりないかと 私に聞く 伯父さんは借金で大変だと母が言い お前がイヤだと言ったのが良かった 2024/01/30