内容説明
野生動物を殺すことは、結果的に「護る」ことにつながるのか? カメルーン共和国の一地域を題材として、スポーツハンティングを取り巻く保護と利用の二項対立論に挑み、「持続可能性」の再定義の必要性を説く。環境社会学、環境倫理学、アフリカ地域研究、人類学、歴史学等の学問領域を貫く「弾丸」となることを目指した筆者の処女作。
目次
はじめに
第1章 人,獣を狩る
第1節 スポーツハンティングの現状とアフリカ
第2節 スポーツハンティングの「誕生」とアフリカへの進出
第3節 「時代遅れな狂気の遊び」か,「現代の野生動物保全の特効薬」か
第4節 本書の視座と目的
第2章 カメルーン北部州のサバンナに響く銃声
第1節 スポーツハンティングと自然保護政策の歴史
第2節 スポーツハンティングのいま
第3節 政府と観光事業者にとってのスポーツハンティング
第3章 スポーツハンティングがもたらす光と影─A村の事例
第1節 狩猟区に生きる人々
第2節 A村周辺の地域史──スポーツハンティングとの「遭遇」
第3節 スポーツハンティングがもたらす「光」
第4節 狩猟区に住む人々にとっての野生動物
第5節 スポーツハンティングがもたらす「影」
第6節 「光」の拡充と「影」の固持
第4章 新たな銃声がもたらすもの─X村・Y村の事例
第1節 発砲を妨げるもの
第2節 差し込む「影」
第3節 「私はラミドの言葉に従う」
終章
第1節 護るために「殺されるもの」と欠けた柱
第2節 「持続可能性」と重い歴史の「桎梏」
おわりに
初出一覧
参考文献
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かやは
3
スポーツハンティングとは、アフリカ諸国で行われている、観光や娯楽のために野生動物を狩猟することである。以前ドキュメンタリー番組で存在を知って、そんな残酷なことが観光資源として活用されているのかと愕然とした。しかし、地域住民が経済的に豊かになるのであれば、悪い面ばかりでも無いな、と思った。ところが、実際はそううまく行っていないようだ。経済的豊かさか全ての住民に行き渡るわけでは無く、狩猟地確保のために長年住んでいた場所を追われたり、野生動物保護を理由に今までの儀礼的狩猟を禁止されたりもしている。2013/05/20
しまゆう
1
鬼頭秀一「自然保護を問い直す」のカメルーン版、のような印象。とりいそぎ。2016/02/12