なぜ自殺は減らないのか - 精神病理学からのアプローチ

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なぜ自殺は減らないのか - 精神病理学からのアプローチ

  • 著者名:大饗広之
  • 価格 ¥2,860(本体¥2,600)
  • 勁草書房(2021/05発売)
  • ポイント 26pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784326299027

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内容説明

自殺元年といわれた1998年以降、この国の自殺者数は昨年まで毎年3万人を越えたまま推移してきた。自殺の原因としてよく取りざたされるのは高い失業率や経済的混迷、うつ病の増加などであるが、本書はそういった現実レベルの諸要因の背景に流れる時代状況と、そこに日本人に特徴的な心的状況が絡み合うところに本質的要因を探っていく。

目次

はしがき――問題の所在

第一章 不可解な死
 1 隔たりの消失
 2 読めなさの背後にあるもの――多元化する物語たち

第二章 物語とその限界――古典的プロトタイプ
 1 物語をリセットする――全生活史健忘の場合
 2 物語に没入する(インクルデンツ)――うつ病の場合
 3 物語から転落する――統合失調症の場合

第三章 心的・社会的複合としての自殺
 1「わからないこと」の増殖
 2 鍵は実証研究の外にある
 3 自殺もひとつの兆候にすぎない
 4 三つの通路

第四章 攻撃性とその変容
 1 メンタルヘルスと攻撃性
 2 過剰としての攻撃エネルギー
 3 攻撃エネルギーの時代変遷
 4 九八年の謎――反転、屈曲がもたらしたこと

第五章 物語とその変容――いじめからみえてくること
 1 小さな物語たちのなかで
 2 いじめとアソビの関係性
 3 いじめをどう定義するのか
 4 中立者の消失――小さな物語による占拠
 5 ナルシシズムの温床としての小さな物語
 6 拡散するナルシシズム
 7 いじめにどう取り組むのか

第六章 気分性とその変容
 1 うつ病だから死ぬのではない
 2 アンヘドニア――実感のわかない青年たち
 3 トラウマを受けやすい心/来歴の否認
 4 流れることと立ち止まること

第七章 なぜ自殺は減らないのか
 1 なぜ中心の喪失が進んでしまうのか
 2 小さな物語への引きこもり
 3 要因Xとは何だったのか
 4 解決の糸口――新しい物語への抜け穴

第八章 間違いだらけの心理療法
 1 心理療法が危機に陥っている
 2 それでもよき隣人をめざすのか
 3 心理療法の入り口
 4 みえないものに向かう――共感できなさが手がかり
 5 隠された物語に遡る
 6 どう見立てるのか――物語分析と症状学のコラボレーション
 7 何のための心理療法か

おわりに――物語のゼロ点に立って
索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

24
自殺研究論の参考資料として読了。戦後による来歴の否定からポストモダンにおける大きな物語へ依拠できずに「自分でもあるがその実感がない」多々ある役を演じて暮らすやり場のない憤りから帰結する虚しさはすとんと腑に落ちます。息抜きも出来ず、狭い世界観へと固執してしまい、底なし沼のような気分になる鬱病傾向が当て嵌まって怖かったです。ナルシシスの者の舞台へ突然、苛められ役として引っ張り出せれてもその世界が絶対と思ってしまい、弾かれることを恐れて抜け出せないというジレンマ。しかし、昔の苛めについての対比は腑に落ちません。2013/06/27

コージー

22
★★★★☆この本は「なぜ自殺が減らないのか」を、著者が専門とする精神病理学から明らかにし、解決に向けての手がかりを示したものです。個人の症状に直結する解決策が書かれているわけではないですし、内容が難しいため、強くおすすめしません。しかし、社会システムの変化やいじめの構造などからひも解いていく展開は、非常に興味深い内容でした。【印象的な言葉】過去を否認することによって、ますます中心は揺らぐようになって、そうなるとさらにトラウマに曝されやすくなるといった悪循環を招いてしまう。2019/07/31

ぽんぽこ

1
「大きな物語」(みんなが目指す目標みたいなものでしょうか)を失ってしまったために自死が増えているというのが著者の主張。これが多様性の弊害でしょう。ダイバーシティが持て囃される現代、ますます事態は悪化しているかもしれないと思うとゾッとします。今は学校がイジメを必要以上に恐れすぎて排除しようとしますが、そのせいでイジメが助長されているというのが驚愕でした。今回は子供の問題だったので、次は大人の自殺についての本を読みたいです。2024/07/31

aaaaki

1
なぜ自殺は減らないのか、客観的に理化学的に説明する。けど、理化学的に説明できないという理論説明。コレという何かが原因ではない。それがハッキリしていたら自殺なんかしないし、その問題解決しようと試みるだろう。何かが分からないからモヤモヤしてこれ以上考えるのも面倒になってそれなら楽しいこともないし、生きるの辞めちゃおうかな。というね。これからも増えるだろうな。世界は便利になったのもまた。死ぬ方法なんて簡単に調べることもできるし。死にたいとググると相談窓口の画面が出てくるのなんてなんの気休めにもならない。2017/09/19

二月

0
なるほど彼は裕福な家庭に溺愛されて育ち、両親も協力的で、少なくとも外から見るかぎりは何不自由ない生活を送っていた。しかしそれでも、彼の人生は決定的な限界につきあたっていたのである。2022/08/08

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