内容説明
自殺元年といわれた1998年以降、この国の自殺者数は昨年まで毎年3万人を越えたまま推移してきた。自殺の原因としてよく取りざたされるのは高い失業率や経済的混迷、うつ病の増加などであるが、本書はそういった現実レベルの諸要因の背景に流れる時代状況と、そこに日本人に特徴的な心的状況が絡み合うところに本質的要因を探っていく。
目次
はしがき――問題の所在
第一章 不可解な死
1 隔たりの消失
2 読めなさの背後にあるもの――多元化する物語たち
第二章 物語とその限界――古典的プロトタイプ
1 物語をリセットする――全生活史健忘の場合
2 物語に没入する(インクルデンツ)――うつ病の場合
3 物語から転落する――統合失調症の場合
第三章 心的・社会的複合としての自殺
1「わからないこと」の増殖
2 鍵は実証研究の外にある
3 自殺もひとつの兆候にすぎない
4 三つの通路
第四章 攻撃性とその変容
1 メンタルヘルスと攻撃性
2 過剰としての攻撃エネルギー
3 攻撃エネルギーの時代変遷
4 九八年の謎――反転、屈曲がもたらしたこと
第五章 物語とその変容――いじめからみえてくること
1 小さな物語たちのなかで
2 いじめとアソビの関係性
3 いじめをどう定義するのか
4 中立者の消失――小さな物語による占拠
5 ナルシシズムの温床としての小さな物語
6 拡散するナルシシズム
7 いじめにどう取り組むのか
第六章 気分性とその変容
1 うつ病だから死ぬのではない
2 アンヘドニア――実感のわかない青年たち
3 トラウマを受けやすい心/来歴の否認
4 流れることと立ち止まること
第七章 なぜ自殺は減らないのか
1 なぜ中心の喪失が進んでしまうのか
2 小さな物語への引きこもり
3 要因Xとは何だったのか
4 解決の糸口――新しい物語への抜け穴
第八章 間違いだらけの心理療法
1 心理療法が危機に陥っている
2 それでもよき隣人をめざすのか
3 心理療法の入り口
4 みえないものに向かう――共感できなさが手がかり
5 隠された物語に遡る
6 どう見立てるのか――物語分析と症状学のコラボレーション
7 何のための心理療法か
おわりに――物語のゼロ点に立って
索引
感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
コージー
ぽんぽこ
aaaaki
二月