内容説明
仮想的近未来のなかでは、子どもに高い身長を与えようとするような、遺伝子改良が行われないとも限らない。これらの、子どもの身体的・精神的性質に踏み込む遺伝子改良は、絶対に許されないのか。それとも、許されるのか。ゲノム解読時代を背景に、多様な状況を想定して綴密に論じた問題作。
目次
まえがき
第一章 遺伝子改良の論理と倫理
1 ポストゲノム革命期の社会に向けて
2 遺伝子改良の暗渠
3 技術衝迫の〈遺伝子〉
第二章 遺伝子改造社会のメタ倫理学
1 クローン人間
2 遺伝子治療の倫理学
3 ゲノムの技術哲学
第三章 リベラル新優生学と設計的生命観
1 リベラル新優生学
2 技術的理性の狡知
3 「デザイナー・チャイルド」の哲学
4 設計的な未来と設計的な自然
第四章 対談──生命にとって技術とはなにか
1 人工性の哲学
2 生命操作技術とはなにか
3 リスクと優生学
4 生命への介入
5 生命技術の特異性はあるか
6 技術の論理と倫理
第五章 迂回路──クローン人間
1 クローンという文化的仮象
2 クローン戦争
第六章 アーカイヴ──遺伝子改造論の航跡
1 一九六〇年代から七〇年代半ば頃まで
2 一九八〇年代終盤から一九九〇年代終盤頃まで
3 大統領報告書『治療を超えて』(二〇〇三)
4 未然のものの胎動
第七章 homo transgeneticus
1 プロメテウス・コンプレックス
2 〈許容可能な改造〉の思考実験
3 〈ヒト流動化〉時代の倫理原則
第八章 参考資料──健康という名の規範
1 客観的病理学の否定
2 生物学的規範性
3 正常という名の設計
あとがき
註
人名索引
初出一覧