内容説明
「多文化共生」の概念は社会に浸透しつつあるが、実状はどうか。本書では「移民」と「多文化共生」をテーマに、教育学者らが縦横に論じる。ニューカマーとオールドカマーをめぐる異同の問題、マジョリティとマイノリティが当事者性を共有するためのストラテジー、海外での取り組み等の検討を行い、問題解決のための政策提言を行う。
目次
目次
はじめに
第I部 政策・カリキュラムと現場
第1章 多文化共生社会をめざして──異文化間教育の政策課題[山田礼子]
1 はじめに
2 学問の制度化に果たす学会の役割
3 高等教育における異文化間リテラシーの獲得
4 アメリカの高等教育機関における多文化主義を取り入れた教育プログラム
5 提言
第2章 多文化共生をめざすカリキュラムの開発と実践[森茂岳雄]
1 はじめに
2 多文化共生のカリキュラム開発の視点──思考モデルとしてのJ. A.バンクスの多文化カリキュラム論
3 国際理解教育のカリキュラム開発と学習領域「多文化社会」の構想──学会の取り組み
4 渡日児童と共に歩む多文化共生教育のカリキュラムづくりと実践──学校全体の取り組み
5 継続的・包括的多文化教育のカリキュラム構想と実践──教師による取り組み
6 おわりに──多文化共生のカリキュラム開発にむけた実践の課題
第3章 権力の非対称性を問題化する教育実践──社会状況とマイノリティ支援の関係を問う[清水睦美]
1 はじめに
2 同和・在日朝鮮人問題とニューカマー問題
3 ニューカマー問題の理解と新たな教育実践
4 社会状況の変化に伴う新たなる取り組み
5 おわりに
第II部 可能性への模索
第4章 多文化共生をどのように実現可能なものとするか──制度化のアプローチを考える[金侖貞]
1 はじめに
2 多文化共生をめぐる今日的状況
3 実践的概念としての「多文化共生」
4 「多文化共生」を実現可能なものとするためには
5 どのように多文化共生の制度化を日本社会で可能とするか
第5章 共生社会形成をめざす日本語教育の課題[石井恵理子]
1 はじめに
2 地域社会を基盤とした日本語教育の展開
3 日本語教育の理念と方法の問い直し
4 共通言語としての日本語
5 多文化共生コミュニケーション能力
6 多文化共生社会をめざした社会システムの構築
7 生涯学習支援としての地域日本語教育
8 人を支える言語教育として
9 おわりに
第6章 多様性と共に生きる社会と人の育成──カナダの経験から[岸田由美]
1 はじめに
2 必然としての多文化主義
3 社会づくりとしての多文化主義とシティズンシップ育成
4 多様な市民の社会的統合の経路
5 参加に導くシティズンシップ教育
6 多文化共生に向けたカナダの政策の特徴
7 おわりに──日本の思想的・実践的課題に寄せて
第III部 「多文化共生」は可能か
第7章 「共生」の裏に見えるもう一つの「強制」[リリアン・テルミ・ハタノ]
1 はじめに
2 現状と課題
3 もう一つの強制──新しい在留管理システム
4 「他者の問題」という誤解
5 地球の「反対側」の、正反対の動き──ブラジルのアムネスティの事例
6 おわりに
第8章 共生への活路を求めて[馬渕仁]
1 はじめに
2 これまでの検討と課題
3 問題意識
4 政策決定過程の分析における視点
5 海外の事例から得られる知見
6 歴史的先例から得られる知見
7 まとめと今後に向けて
多文化教育・多文化共生教育に関する邦語文献目録[森茂岳雄・中山京子]
索引