内容説明
図書館の自由、良書主義、蔵書の中立性などが今大きな問題になっている。この論点を図書選択という視点とからめて、図書館の本の構成について総合的・原理的に捉える。アメリカと日本の選択論の歴史を探ったうえで、選書ツアーをめぐる論争を整理、要求論と価値論をのりこえるために何が必要かを根底から明らかにする。
目次
はしがき
第一章 図書選択の正当性とは
1 本書の目的
2 本書の扱う範囲
第二章 アメリカの図書選択論
1 公共図書館における図書選択論の源流
2 フィクション論争と要求論の出現
3 図書選択論の体系化
4 要求論の退潮とシカゴ学派
5 図書館の目的
6 第二次大戦後の図書選択論
第三章 日本の図書選択論
1 一九七〇年以前の図書選択論
2 一九七〇年以後の図書選択論
3 価値の問題を完全に避けられるか
第四章 選書ツアー論争
1 選書ツアー論争の整理
2 選書ツアー論争の検討
3 選書ツアーはなぜ批判されたのか
第五章 図書選択を原理的に考える
1 潜在的要求とニーズ
2 要求論的言説の中の価値基準
3 何も押しつけないことは可能なのか
第六章 「価値論/要求論」を超えられるか
注
あとがき
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鳩羽
12
利用者の要望にすべて応えていく要求論と、いわゆる良書を揃えようとする価値論の対立から、図書館の選書基準の歴史、論争をまとめる。現場の図書館員に近い立場の要求論でも、利用者の潜在的要求を汲み取れているとは限らず、またその要求は抽出の仕方によっては型にはめられているかもしれない。その価値判断が無自覚に行われているのではないかということを、選書ツアー論争から考察していく。ヒューマニズム、共感は、市民性と言い換えてもいいのかもしれないが、これらはこれからより一層多様になると思う。要求論の方は無邪気に思えてしまう。2016/03/10
藤井宏
3
普段図書館は、学術雑誌の資料を探すくらいで、文芸書などは本屋をぶらぶら見て購入して読むが、図書館に置く本をどうやって決めているかについては考えたことがなかった。考えてみたら、動物園の動物や美術館の美術品て、どうやって選んでいるのだろう。歴史的に、利用者の要求に答える流れになっていることはよくわかった。図書館関係誌に「この世に図書館などいらない」という文章が載ることはありえないって、ちょっと閉鎖的すぎると思った。医療だったら「病院いらない」っていう記事が載ったら、意味があるはずだから、皆よく考えると思う。2017/06/09
西澤 隆
2
選書技法の説明ではなく選書方針についての議論の歴史をひもとき論点を整理する本。「リクエストにはできる限り答えるべき」vs「図書館には『良書』を収集するべき」。すべての本を購入する予算と書架を持てない以上本の選択は必須なのだけれど「ベストセラーばっかり買うな」と「ほこり臭い本ばっかり買っても誰も読まずに死蔵するじゃないか」の間を感覚ではなくいかに論理的に埋めるのかの努力は「読ませるなあ」と思う。とはいえ結局のところ価値観の多様化で『良書』も多様化するわけで「感覚を論理づける」ことは難しいなとあらためて思う。2013/07/26
呑司 ゛クリケット“苅岡
1
普段から図書館のお世話になっているので、この著作を手に取った。良書を多く置いて欲しいと思うのは当然ながら、要求、リクエストに答える根拠は何処にあるのかと思うことも多い。図書館員の資質が大切な要素だと思うが、自身に選書を委ねられても困るだろう。図書館のファンクラブをコミュニティ化して、リクエストを精査する仕組みがあれば良いと思う。2022/05/05
あああ
1
完全に専門外だけど、地元の図書館の本棚をみてて「なぜこの本を入れたのか?」と疑問に思うことがあり、そんなときにそのものズバリな本を見つけたので借りてみた。住民の要求を重視する要求論と図書館が価値あると思う本を選ぶ価値論の対立がある~みたいなざっくりした話ぐらいしかわからなかったけど、分野外の知見が得られたのはよかった。にしても、東大生ともなると、卒論ですら本として出版できるのね。。。あと、図書館ってすさまじく閉鎖的な世界なのね。感情論だけで議論が進んで、批判を許さないなんて。2020/12/31
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