内容説明
いまだ令嬢の如き若奥様柿内園子が語る、船場のお嬢様徳光光子との異常で官能的な物語。文豪による「女性同性愛小説」。昭和6年4月、改造社より初めて単行本として刊行された。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
64
去年のいまごろ、『細雪』の3冊本を読んでいた。それ以来の谷崎文学である。同じ関西を舞台にしており、西宮の高級住宅地香櫨園に住む柿内夫人園子と船場の羅紗問屋徳光のお嬢さん光子との同性愛に、綿貫という光子の恋人を登場させての三角関係、さらには夫を巻き込んでの愛憎や奸計をめぐらす内紛劇へと発展し、人間同士の絡み合う姿や女の業の深さを描き込んだ大阪言葉による語りの物語だ。改行の少ない語りがだらだらと続くので、読み難さは否めない。この中公文庫版の巻末には、光子役と園子役で共演した女優の若尾文子、岸田今日子と谷崎の鼎2017/09/17
そのじつ
12
読み終えると共にゾっ、ゾワ〜!!ときた。私はてっきり恋愛小説だと思って読み始めたのだけど、途中からなんだか様子がおかしくなってきたと思ったら・・・これは心理的ミステリであり、ホラーでもあったのか!?こっ、こわっ!!2015/07/26
qwer0987
8
関西弁の流麗な語りが美しい。しかし流れるような文章のわりにそこで描かれる人間たちは実に身勝手。けどそれゆえ起こるごたごたをにやにやしながら読めた。光子は一筋縄でいかない人で周囲を振り回すし、園子も光子が好きすぎて嫉妬したり地味に周りに迷惑をかけるし、綿貫も紳士然と見えながらこすっからい男だったりする。どいつもこいつも困った人たちだがリアルで存在感があって良い。言うなればこの入り組んだ四角関係は人間というものの滑稽さそのものとも言える。そんな可笑しな悲喜劇が面白く、心に残る作品であった。2022/11/24
カイロ
4
同性愛と異性愛が絡まりあって、尚且つ嫉妬、ツンデレ、メンヘラ、精神的加虐等の要素が加わっていて「卍」の複雑さをゆうに越えていた。日本には男色や男娼等は古くから存在していたので、男性の同性愛は珍しくも何ともない話だけれど、女性の同性愛はどうだったのだろう。大正期の女性の同性愛を取り上げた論文は見たことがあるが、当時の一般の認知はどのようなものだったのか気になった。2014/05/20
IKUNO
1
女性の同性愛小説だと思って読んでいてはすぐ飽きてしまうだろう。 虚実織り交ぜて提示される進行は、だれがだれを騙しているのか、それともだれかが全ての糸を引いているのか、読者を混沌の渦に突き落とすだろう。 そして訪れる不気味な結末。 当事者の独白だけで表現される妖しい世界は、まさに天才谷崎潤一郎の面目躍如といったところだ。2019/03/15
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