内容説明
気鋭の歴史学者による初の評論集。シチリア王国を専門とし、中世地中海世界を舞台に異文化の接触と共存を論じてきた著者は、歴史学者としての視点から、現代世界のグローバル化についても積極的な提言を行っている。本書はその思索の全体像を示す。
目次
はしがき
I グローバル化と歴史学
グローバル化する世界
グローバル化時代 国家の役割
学問としての歴史学
歴史認識の枠組み
II 中世ヨーロッパ世界
神秘の中世王国
中世シチリアの三言語併存状況
中世シチリアのノルマン王と官僚、貴族たち
シチリア紀行
フランス中世における地域と国家──国家的枠組みの変遷
III 日本の高等教育
グローバル化と日本の高等教育
東京大学をどう変えるのか
〈知〉の世界を貫く二つの原理
世界中のライバルと競争しなさい
日本の大学でエリート教育は可能か
日本の〈知〉のゆくえ
「大学」を取り戻そう
グローバル化の波「個人」へ
あとがき
初出一覧
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Go Extreme
2
9.11同時多発テロ ニューヨーク世界貿易センタービル崩壊 国防総省への攻撃 約3000人の犠牲者 アメリカ国民の意識変化 アメリカ政府の方針転換 他国への先制攻撃 イラク攻撃を巡る対立 国連の弱点露呈 突出した軍事力を持つアメリカの意思 国際関係破壊 国際秩序維持システムの破壊 人情報資本の移動 情報伝達速度の向上 インターネットの成立拡大 国民国家の変化 主権と領土の掘り崩し 国家の権力装置の組み替え グローバルな企業や非国家組織の力 既存の国家の役割喪失 ネイションとナショナリズム 民族紛争の勃発2025/05/15
すがの
1
03年刊。筆者は、現役の西洋史家のうち、一流と呼ばれるべき人のひとり。専門は中世シチリア史であり、シチリアで文化的接触が恒常的に行われていたさまから、グローバリゼーションへの関心も強い。本書は、筆者がさまざまな媒体で執筆した記事を一冊にまとめたもの。提唱以来、毀誉褒貶の甚だしい「ハードアカデミズム」論についての言及も多い。/日本のグローバル知識人が03年現在、どのような現状認識、未来像を描いていたのか、という目線で読んだ。正直のところ、あまり賛意はない。2016/11/28