ちくまプリマー新書<br> 「自分らしさ」と日本語

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ちくまプリマー新書
「自分らしさ」と日本語

  • 著者名:中村桃子【著】
  • 価格 ¥825(本体¥750)
  • 筑摩書房(2021/05発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480684004

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内容説明

ことばには内容を表現するだけではなく、〈その人らしさ〉を表現し、話している人同士の関係を作り上げる働きがある。ことばの背後にある社会の規範や価値観を解きあかす社会言語学の知見から、「名前」「呼称」「敬語」「方言」「女ことば」といった観点を通して、ことばで「自分」を表現するとはどういうことかを考える。

目次

はじめに
第1章 アイデンティティ表現の材料としての「ことば」
1 人との関係から立ち現れるアイデンティティ
2 「本質主義」と「構築主義」
人と関わり合う前の自分は空っぽなのか?
アイデンティティはいくつもあるのか?
3 アイデンティティの三つの側面──マクロ・メソ・ミクロ
4 表現の材料は無限にある
服装や髪型も「ことば」
アイデンティティを伝える「ことば」の種類
言語資源
5 「ことば」の制限と創造性
第2章 名前──「わたし」を示すことばの代表
1 名前に対する二つの感覚──「名実一体観」と「名前符号観」
一人一名主義
アメリカの命名と日本の命名の違い
2 人が変わって名前が変わる、名前を変えて自分も変わる
3 名づけには制限がある
4 婚姻改姓は何を変える?──ひとつの姓に束ねられた家族像
夫婦同姓と家族単位の戸籍
姓によって残された「家」意識
なぜ日本では女性が婚姻改姓するのか
女性の婚姻改姓にともなう問題
選択的夫婦別姓
姓が違うと、家族の一体感がなくなりますか?
5 たくさんの名前を持つ現代人──演じ分ける「わたし」
第3章 呼称──呼び方で変わる関係
1 「あたし・うち・ぼく・おれ」どれを使う?
女子が「ぼく」を使うのは、間違い?
男女で異なる自称詞は明治時代につくられた
異性愛規範を確実にする装置
LGBTを苦しめる「おれ」の男らしさ
2 女子が使う「うち・ぼく・おれ」
女子は「ぼく・きみ」を使いつづけてきた
突然の「わたし」への変身
「異性愛市場」の出現と「女」になることへの不安
新しい〈少女性〉の創造
「ボクっ子」を消費する
「ぼくは望んで妊娠しています」
「わて」と「あんさん」
3 ことばを変えることで関係を変える
第4章 「ことば」とアイデンティティの結び付き
1 言語要素
「スタンスと特質」と「社会的アイデンティティ」
直接的な結び付きと間接的な結び付き
言語イデオロギー
2 指標性
3 メタ語用論的言説
4 「○○ことば」とアイデンティティ
クイーンズ・イングリッシュ(女王の英語)
外国語なまりの英語を話すディズニーアニメの悪者
ネイティブ・アメリカンの高いほほ骨
グループを区別する理由がないと「○○ことば」は成立しない
第5章 敬語──「正しい敬語」から「親しさを調整する敬語」へ
1 日本語の敬語体系
敬意(上下関係)と距離感(親疎関係)
2 日本人なら「正しい敬語をマスターすべき」──敬語イデオロギー
「社会人」に鍛えなおすという権力
敬語をマスターすることは、エライ?
3 「正しい敬語」を決められるのか?
「上下関係」から「親疎関係」へ
敬語の岡田准一とタメ口の妻夫木聡
いつ、だれに、どのくらい、どの敬語を使うべきなのか?
永遠のベストセラー「正しい敬語」のマナー本
4 アイデンティティを変化させる敬語の使い方
〈親しい丁寧さ〉を表す「マジヤバイっす」
新聞にあらわれる皇室敬語の違い
「ため口キャラ」の登場
第6章 方言──「恥ずかしいことば」から「かっこいいことば」へ
1 「国語」の弊害としての「方言」の誕生
言文一致
上田万年と「国語」の創造
標準語イデオロギー
国語の成立をじゃまする方言
方言受難の時代
「方言について語ることば」がつくる「方言イデオロギー」
2 方言とステレオタイプ
地域・人物像・イメージとの結び付き
方言の「凝縮化」
疑似東北弁に翻訳されてきた黒人奴隷のセリフ
3 よその言葉を借りてくる──ことばの越境
方言とアイデンティティの三つの関係
「スタイル的な越境」と「パフォーマンス的な越境」
なぜ強盗は英語を話し、警察官は関西弁を話したのか
第7章 「女ことば」──伝統的な〈女らしさ〉から辛口の材料へ
1 「女ことば」とは女性が使っている言葉づかいなのか?
2 「女性が使ってきた言葉づかいだ」という考え方の問題点
明治時代の「女学生ことば」から派生した
女性はみんな〈女らしさ〉を持っているという前提
昔の女性も「女ことば」を話していなかった
3 「女ことば」をつくってきたメタ語用論的言説
「最近」の言説
翻訳で使われる「女ことば」
後からつくられる伝統
4 女性の言葉づかいの規範としての「女ことば」
内田裕也を動かした蓮舫の話し方
5 攻撃的な「女ことば」・オネエことば
主張や怒りを表現する「女ことば」
オネエことば
「女ことば」のパロディとしてのオネエタレントことば
なぜ「オニイことば」はないのか
おわりに
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

とよぽん

52
言葉づかいとは、とても社会的なものなのだということが書いてある。特に、「女ことば」についての分析が印象に残った。女ことばなんてものは、男社会がでっち上げたシロモノだったのだ。以下205ページから引用「女ことば」とは、女性が使ってきた言葉づかいではなく、その時々の日本の歴史や政治の中で、人々が「女性」に望むすがたを、ことばの側面から女性に押し付けてきた「概念(イデオロギー)」なのだ。言葉づかいの変遷をジェンダーの視点から分析している。言葉で「自分」を表現する・・・奥が深くて引き込まれるちくまプリマー新書。2022/01/20

しゃが

51
良かった、胸にストーンと落ちた内容だった。ことば=〈その人らしさ〉、つまりアイデンティティだった。そして、名前・呼称・方言・女ことばも社会の規範や価値観・時代に大きく左右されていたし、今も左右されている。方言のステレオタイプにもいつも違和感があった。TVなどのアフレコなどで…、確かに「風と共に去りぬ」の黒人メイドの翻訳など粗野で無教養の色付けにに方言が使われる。「呼称」も鈴木孝夫さんの頃、言語比較は文化として見られていたが、今はもっと多様に変わってきた。以前の日本語の細やかさは社会規範だったのかも…。 2021/07/17

tamami

44
まずはざっと流し読み。(失礼!)著者は版元から「若い読者に向けての社会言語学の入門書」の執筆を勧められたと、あとがきに記す。正しい日本語とは何か、というような浩瀚な話題には簡単には答えられないが、自分としては今の日本語を、テレビやラジオ、ネット、SNS、それに日々の読書の中で楽しませてもらっている、というのが現況である。全体を読んでの印象では、著者の日本語への見方として、女ことばや敬語などは、近代と共に創出され、現代はそれが話者のアイデンティティ演出の道具としては役割が弱まりつつあるというような形で、日本2021/05/12

タルシル📖ヨムノスキー

28
昔テレビのUFO特集で、アメリカの田舎の農夫のUFOの目撃情報のインタビューに東北弁の日本語吹き替えが当てられていて、子供ながらになぜ東北弁なのか疑問に思っていました。この本はジェンダーやアイデンティティの問題を社会言語学という立場から考えた本。実際にはほとんど聞かないいわゆる女性言葉の謎とか、なぜ男は僕で女は私を使うのかなんて疑問に思ったことすらありませんでした。出身地以外の知名度の高い方言を使うことを「方言コスプレ」と言うことも初めて知ったし、敬語の距離感の話もなるほど。「…っす」も立派な敬語なのね。2023/09/16

to boy

25
言葉はただ何かを伝えるためにあるのではなく、アイデンティティーを表現するための材料であるとして、ことばとアイデンティティーの関係を論じた入門書。社会の変化が言葉に変化をもたらし、また言葉の変化が社会を変化させていくというダイナミックな考え方に感心した。己のことをなんと表現しようか、「ぼく」「わたし」「わたくし」「じぶん」など悩んだこともあった若かりし頃を懐かしみながら読みました。2021/09/23

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