ちくま新書<br> 持統天皇と男系継承の起源 ――古代王朝の謎を解く

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ちくま新書
持統天皇と男系継承の起源 ――古代王朝の謎を解く

  • 著者名:武澤秀一【著】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2021/05発売)
  • 夏休みの締めくくり!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~8/24)
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  • ISBN:9784480073983

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内容説明

古代の大王・天皇には男性と女性、男系と女系が入りまじっていた。それが男系ばかりになったのは、なぜか? そして、いつ、誰が、どのように? 本書がまず注目するのは、天孫降臨神話とともに成立した持統「双系」王朝である。始祖となった女性天皇は代替りをタテの血脈でおこなう天皇制システムを創出し、皇祖神を祭る伊勢神宮に永遠の更新システムを埋め込んだ。しかし持統没後、双系継承は覆る。男系継承は藤原不比等が主導した平城京遷都に仕組まれていたのだ。神話、大嘗祭、王宮や王都、終末期天皇陵から古代王朝の謎を解き明かす。

目次

プロローグ──アマテラスと「男系」の溝
男系、女系、双系とは
天皇は男系だが、祖先神は女性?
神話と政治を結び付ける
天孫降臨神話とともに成立した〈持統王朝〉
第一章 女性を始祖とする王朝への五つの視点
視点1 列島社会は双系だった
父方も母方も等しく重んじる
儒教の中国と「無常」の列島社会
緩慢に進行する男系化
軍事的要因が男系化を促進した
視点2 歴代遷宮が停止して「国家」が出来た
「歴代遷宮」をご存知ですか?
代替わりごとに移動する王宮と王都
王権のリセットとその功罪
飛鳥に収束する王宮・王都
歴代遷宮が停止され、恒久の都と国家体制が構築された
視点3 現実を導くあたらしい神話
〈ヨコ〉を〈タテ〉に変えた神話
神話が現実を権威付ける
〝神として〟即位した天皇
法的にも認められた「双系」王朝
女性の皇祖神と「男系」天皇の溝
視点4 女性天皇は全て「中継ぎ」だったか?
女性天皇が頻出した飛鳥・奈良時代
「中継ぎ」説への疑問
〈タテ系列〉の天皇制システムを起動した
揺らぐ「天武系」史観
視点5 持統朝を総覧する
第二章 神話と結びつく〈持統王朝〉
1 積極的に政治をおこなう皇后
皇后が仕切った〝誓いの儀式〟
草壁と大津、二人の皇子
大津謀殺の怪
〈天武皇統〉から〈持統皇統〉へ
草壁葬儀で詠まれた「天の河原」「天照らす」
あたらしい神話づくりの第一歩
天孫降臨神話のあらまし
北方系vs.南方系、垂直的vs.水平的──神話の系譜
なぜ神話づくりを?
二カ月後に皇太子制を発布
2 〈天皇=神〉の構図を立ち上げる
従来の天皇との決定的な違い
即位式での三つの出来事
伊勢神宮は〈アマテラス=持統〉の宮殿
「板校倉造り」と「神明造り」の交代劇
なぜ神明造りに?
いつ神明造りに?
持統天皇がはじめた大嘗祭
新嘗祭は男子禁制だった
大嘗祭の舞台、大嘗宮──令和の大嘗祭から
産屋としての大嘗宮
女性天皇が主役だった
新天皇は大嘗宮で何をするのか
孫への譲位と「高天原」「神からの委任」
3 持統がアマテラスになった証
吉野行幸の謎
重臣の反対を押し切った伊勢行幸
強行する理由、反対する理由
斎王不在が意味するもの
第三章 天皇制の礎──恒久の都と更新の思想をつくる
1 〈持統王朝〉の都・藤原京
歴代遷宮から藤原京へ
天武朝の「新城」から持統朝の「新益京」へ
現在の定説は
天武天皇が間違えた?
新説の提示
重畳する正方形の世界──大地・王都・王宮
藤原京・絶対不変の世界観
新益京建設のプロセス
藤原宮のようす
内裏は〈持統=アマテラス〉の住まい
代替わりごとに建て替えられた内裏
ずらされていた大嘗宮
2 〈持統王朝〉の伊勢神宮式年遷宮
歴代遷宮の停止と式年遷宮の開始
建て替えること自体に意味があった
天皇としての正統性を誇示する──神話と建築から
3 天皇陵から血統が見えてくる
天武陵──中国的コスモロジーに眠る
草壁の陵墓──持統の偏愛がうかがえる
斉明陵──持統王朝のバックボーンの起点を示す
天智陵──夫より父を重んじた持統上皇
持統天皇と八角墳
王宮と天皇陵──王都を俯瞰する
石室内での天武と持統
4 〈持統王朝〉の空間的・時間的特性
〝絶対不変〟と〝生命的な若さ〟が共存する
律令国家「日本」の特性
幕間 世襲王権はいつから、そしてどのように?
縄文時代に中央集権勢力?
神武と崇神、二人の初代
女王の存在感
王統はいつから?
女性大王推古の場合──継体以後、持統以前(その一)
女性大王皇極・斉明の場合──継体以後、持統以前(その二)
兄弟関係をめぐる疑問
第四章 平城京遷都は「男系」継承への道
1 藤原不比等の企て
遅咲きだった持統のブレーン
不比等の娘が内裏に入る
畏れを知らぬ〝血の累乗化〟
暗黙のルールを破ると
藤原氏に取り囲まれる天皇家
皇族と臣下の区別
2 「男系」継承にむかって転換を図る
押し寄せる「男系」化の波
「男系男子」をめぐる本音と建前
〈子から母へ〉の代替わり
もどきの観念
「神話」から「常典」へのすり替え
〈父子直系〉の典拠
「天命を受けて皇統を開いた」天皇
〈持統王朝〉の換骨奪胎を図る
「双系から男系へ」の転換
兄弟間の継承は「乱」を引き起こす
〈父子直系〉という諸刃の剣
3 藤原氏の、藤原氏による、藤原氏のための平城京
なぜ遷都するのか──その建前
なぜ遷都するのか──その本音
「遷都は急がなくてよい」
発掘者を驚かせた長屋王邸の破格さ──不比等の懐柔策か
長屋王とは誰か
血統は父より聖武天皇より上
広大で豪勢な長屋王邸跡から類推すると
理念の都とリアリズムの都──藤原京と平城京の違い
不比等邸と皇太子の宮
政治的意図が込められた都市設計
二つある中枢ゾーンの謎
中軸としての朱雀大路と地形条件──新説の提示
第五章 「男系」継承の樹立と〈持統王朝〉の終わり
1 女系
女性天皇の時代
排除を経ての立太子
暗黙の、しかし無視できないルール
「娘に譲位する」──不比等があわてた元明のことば
誰が不婚を強いたのか
文武の後継は姉か、母か
元正即位をめぐる構図
満を持して即位する女系女性天皇
女系女性天皇の複雑な胸の内
天皇となって見えてきた別の道
女系女性天皇に献上された『日本書紀』
2 藤原氏に包囲される天皇の座
不比等の没後に残された難題
聖武の即位と父子直系の企み
後景に退く〈持統王朝〉
〈伯母─甥〉を〈母─子〉に読み替える
勝者の主張に囚われていないか
3 聖武・藤原氏と長屋王の確執
「皇」の字にこだわる長屋王
波乱呼ぶ立太子
祝意を表さない左大臣
幼い皇太子の死
長屋王家の滅亡
でっち上げだった「長屋王の変」
皇位継承の分岐点
女系皇族集団を一掃した大事件
蘇我女系皇族と入れ替わった藤原氏
貴種六名を殺害して得た「男系」
エピローグ──「黒作懸佩刀」の話はどこまでほんとうなのか?
「男系男子」の証とされる黒作懸佩刀の虚実
あの仲麻呂を信用できるか
もともと「男系男子」にこだわっていなかった
参考文献
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

90
持統女帝の右腕として王朝確立に貢献した藤原不比等が、天皇の死後は王朝を自分の血で乗っ取る沈黙のクーデターを皇位の男系継承という手段で遂行するとは。自分を登用し才を愛でた持統天皇を裏切って一族の繁栄を追求した不比等の政治的思惑が浮かび上がり、長く日本の歴史を縛り続けた強烈な意志が怖いほどだ。その間に長屋王をはじめ邪魔になる皇族を多数粛清した果てに、今日まで至る万世一系の幻想が生まれたプロセスを説得ある形で提示する。藤原京や平城京遷都や都市設計にも藤原氏の政治的意思を見るなど、古代史を視る視点を一変させる本。2021/08/31

syota

40
本書のキモは次の一文だろう。「男系継承による皇統は、太古の昔から自ずと続いてきたのではありません。臣下であった藤原不比等とその息子たち四兄弟が皇室に介入し、藤原の血を引く聖武天皇をつくりあげたうえにこれを囲い込み、長屋王家という有力な女系皇族集団を滅亡させたことによって確立されたのです。」今年刊行されたばかりだが、自民党総裁選に絡み皇位継承問題が改めて注目され、「男系継承でなければ日本は滅亡する」などと勇ましい発言まで聞こえてくる昨今、まさにタイムリーな一冊だ。2021/09/12

Toska

18
建築家の手による異色の古代史。藤原京と平城京の設計思想などは流石に本職の視点で興味深いが、それ以外は地に足のついていない印象が拭えない。そもそも古代天皇家は(系譜を信じるなら)濃密な近親婚による閉鎖的な親族集団で、このもつれた糸を解きほぐさない限り男系・女系の議論など成立しないのでは?父母双方に皇家の血を求める特殊な観念を「男女双系」として一般化できるものかどうか。2024/09/25

はちめ

15
アカデミズムの古代史家ではないのでときに自由に想像を膨らませて記述を進めることによってリアリティーが増していると思う。 本書は現在議論が行われている天皇の承継問題に一石を投じることを念頭に置いていることを序文で述べている。ただ、著者も記述しているように長屋王謀殺事件などによる藤原家による天皇家の血統の争奪は、あくまでも藤原家の血統を天皇家の中で維持することを目的としたものであり、女性天皇を否定したものではないし、男系継承を強調したものでもないと思うのだが。本書は面白さでは☆☆☆☆☆です。2021/05/26

犬養三千代

12
天武天皇よりも持統天皇の方がCIAだなと思う。男系継承というよりも我が子草壁そして孫への思いからなのかなぁ。 今の皇室典範に繋がる男系継承の礎は今後どう展開するのだろう。2022/01/30

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