ちくま新書<br> 9条の戦後史

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ちくま新書
9条の戦後史

  • 著者名:加藤典洋【著】
  • 価格 ¥1,265(本体¥1,150)
  • 筑摩書房(2021/05発売)
  • ポイント 11pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480074027

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内容説明

世界に先がけた理想として敗戦国日本にもたらされた憲法9条。だがその9条とのあいだに、私たち日本人は生きた関係を築けずにきた。原初からの問いを育てることができなかったからだ。もし9条が役に立ちうるとすれば、それを生かすのにいま、何が必要なのか――。日米安保条約締結から、改憲派・護憲派の二項対立が形成される高度成長期をへて、冷戦終結後、対米従属を深め混迷にいたる現在まで。戦後史の深層を丹念に掘り起こし、ゼロからの問いを提起する。『9条入門』の後半として書き下ろされた、著者さいごの提言。

目次

それが僕の夢だ。君らはどう思う?──「はじめに」に代えて(野口良平)
第Ⅰ部 日米安保条約と憲法9条──1950年代
第1章 改憲論の登場
1 吉田茂と憲法9条
2 改憲論の創始者たち──重光、鳩山、岸
3 重光外交と「相互防衛条約」
4 「押しつけ憲法論」について──石橋と中曽根のあいだ
5 存在した脅威──安保改定とキューバ危機
第Ⅱ部 安保闘争と日米安定期──1960~80年代
第2章 さまざまな護憲論
1 ユルくてずぼらな護憲論
2 丸山眞男の護憲論
3 理念的把握と国際的文脈
4 坂本義和の非武装中立論
第3章 折り返し地点──保守系ハト派の護憲型政治
1 日米安保と9条の結婚
2 吉田ドクトリンと「解釈合憲」システム
3 「護憲体制」への懐疑──清水幾太郎と江藤淳
4 森嶋通夫の「ソフトウェア国防論」
第Ⅲ部 冷戦終結から日本の閉塞へ──1990年代以降
第4章 冷戦以後の日米安保
1 なぜ日本の対応は遅れるのか
2 久保卓也の「積極的平和主義」
3 「見直し」の攻防──ジョセフ・ナイ対都留重人
4 新日米安保と日本社会の変容
第5章 21世紀と凋落のはじまり
1 護憲派の安全保障論──平和基本法に欠けているもの
2 自民党の従米改憲案──なぜ戦前回帰が必要か
3 徹底従米と明治憲法復元──安倍晋三と日本会議
4 「正しさ」のゆくえ──九条の会
5 「正しさ」からの離脱──立憲デモクラシーの会、SEALDs
第6章 歴史像の改定──捨象される経験の核心
1 護憲的な歴史像の改定──和田春樹の「平和国家論」
2 アメリカ国体論──日米同盟は永遠なり
おわりに 憲法9条
使用法
1 対案について
2 2009年の蹉跌と新しい展開
3 憲法9条の使用法──私の対案
参考文献
この本の位置──「あとがき」に代えて(野口良平)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

61
コロナ禍のなか、変質してしまった世界を踏まえた論考を加藤氏の筆で読んでみたかった。理想も理念もなくてはならないものだが、目の前にある現実をどう乗り越えていくか。第二次世界大戦の地獄を体験した最後の一人が地球上から亡くなるとき、またそれ以降、ひとりひとりがどういう実感を持てば戦争は回避できるようになるのだろう。2021/06/22

壱萬弐仟縁

46
日本社会の安定のカギとして機能していた(225頁)。高坂正尭、永井陽之助、猪木正道は保守現実主義的解釈合憲の『中央公論』。これに対し、革新中立主義的護憲論の丸山真男、坂本義和の『世界』。60年代以降の構図(227頁)。米国にとって最も好ましいのは、政治・軍事・経済で日米が米国優位の従属関係が保たれていること(241頁)。252頁~森嶋通夫先生。自分流に考える破天荒な人物(254頁)。他、都留重人(311頁~)。良心的兵役拒否は、誰もが服すべき規範に全身的拒否で対する行為(330頁)。2021/11/27

ころこ

37
批評の本ではなくて、政治の本になっています。色々調べています。しかしそれを一気通貫で書くことは、以前の著者の仕事を裏切ることになるのではないか。日米の「ねじれ」を国連に託すことで解消するとは、著者が批判する典型的な護憲派が9条に無謬性を託した対象が変わっただけではないかという疑問が残ります。自衛官の身体性に想像が及んでいない、つまり、左派からは指揮系統の曖昧な軍隊ほど危険なものはない、右派からは動機の曖昧な組織に命は懸けられないという容易に思い当たる反論に耐えうる結論にはなっていないと思います。2021/05/10

Kai Kajitani

7
護憲/改憲という戦後政治の対立軸は、当初は対米自立を訴える改憲派と、平和主義の理念と経済的繁栄がぼんやりと共存していた護憲派、という構図だった。それが、冷戦の崩壊とそれを受けたジョセフ・ナイによる日米安保の「見直し」により、対米自立どころか米国の安全保障政策にどこまでもついていくことを主張する改憲派と、それに対して実利という手ごまを失い、安全保障の代案もなく、旧来からの平和主義しか対抗軸を持たない護憲派、という構図に変化した、という指摘は目から鱗だった。安保法制をめぐる議論を総括する意味でも有意義な本。2022/08/15

おっきぃ

1
9条を巡る改憲と護憲の歴史がこれほど内容のあるものとは思ってもみなかったし、中には先見的な方もいたとは。それにしても、憲法第9条と平和主義、日米安保についてゼロから考えることが角も難しく、一方でそこから考えないとどうしようもないこともわかる。何が大事で何をすべきか、その観点から今一度9条を位置付けること、対米従属から離れてもいかに日本の安全を守るかを考えること、戦後あまりにさぼり過ぎたと思う。2022/08/13

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