内容説明
第二次世界大戦中、鉄船を失った日本は木船の増産を企図。個人の屋敷の巨木までを供出する「翼賛運動」が起こされる。木と木の船をも総動員する日本の戦争の知られざる実態!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
81
戦争中の資料がかなり散逸消失した中で、懸命に博捜された労作である。資料も豊富。巨木に限らず日本の森林や木々に関心があり、巨木などに纏わるちょっとした戦争秘話を楽しむつもりが、その内容の充実ぶりにじっくり読み浸ることになった。寺社の貴重な古木や屋敷林の巨樹などが(大政翼賛会などを通じての)実質国の命令でどんどん伐採される中、日光の杉並木や箱根の杉並木が残った秘話は面白かった。ある意味、奇蹟かもしれない。2021/04/15
まさこ
15
たいへんな労作(前書きの教え子の卒業論文を引き継いだ経緯が真摯。物事への姿勢は透明な眼でありたい。専門外でも5年程でまとめ上げる優れた研究者)。木造船の技術や統計も。でもやはり、供木献木、当時の様々な立場の人々の息づかいが聞こえてくるところ。写真資料も迫るもの。枝を落とした伐採前の巨木が、切腹前にお清めした武士のよう。子どもの日記も秀逸。あくまでも善意から、先祖伝来の木も出そうという雰囲気をつくる、翼賛的な機運の創出はこのように。「王様は裸だ!」と言える世の中でありたい。木ゼミ、入ってみたかったな。2023/06/11
アメヲトコ
11
21年1月刊。1943年、太平洋戦線への物資輸送のために大量に建造された木造船に注目した一冊。村々の屋敷林や並木がいかにして「自主的に」供出されていったか、造船はいかなる場所でどのようになされたのか、造られた後の船はどうなったのかを、戦時中の極秘資料、現地調査、関係者への聞き取りなどを交えて明らかにしています。著者は本来日本中世史が専門ですが、教え子の御手洗文さんの卒論をもとに、彼女の研究を(了解のもとに)引き継いで完成させたとか。関係者も物故し記憶も喪われていくなかで調べ上げた著者の思いに打たれます。2021/09/04
ムチコ
9
第二次大戦中、金属が不足する中で木造船の需要が急増し、各地の屋敷林や並木から巨木を供出する動きがあった。供出の状況を「させる」側「させられる」側の両面から丹念に追い、さらに供出された木材がどの程度木造船として役立ったか、戦後それらの船や使われなかった木材、伐られなかった木がどのような経緯をたどったかまでを、失われていく人々の記憶や資料から丹念にたどる。このような動きがあったことに疎かったのでテーマとしても興味深かったし、「調べる」ということがどういうことかを身体を張って示した書とも言える。2021/09/18
Toska
8
知られざる木造船建造の歴史に踏み込んだ労作。当局が国民運動として盛り上げようとした供木キャンペーンのみならず、造船所の再編や行政のテコ入れなどテーマに多様性がある。一口に「総力戦体制」と言っても、そう簡単な話ではなかったようだ。木造船を通してこれほど多くのものが見えてくるとは正直意外。供木運動で存在感を発揮する翼賛壮年団(大政翼賛会の下部組織)なんか、恥ずかしながらその存在すら知らなかった。2022/08/03
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