内容説明
強盗にピストルを突きつけられたとき、その銀行員は、隣席の同僚に視線を走らせたという。そのために、同僚は、非常ベルに手をかけつつ射殺された。なぜ、彼は視線を走らせたのか。刑事が抱いた疑惑の到達点には何があったか。人間の微妙な心理、悪の衝動を、練達の手腕で描いた日本推理作家協会賞受賞作の表題作と、そのほか6編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
geshi
26
『視線』視線の疑惑の提出は面白いけど解決に偶然入っちゃうのは好みじゃない。『その犬の名はリリー』多角的視点により物事の意味が一転する構成がうまい。『五十五歳の生理』仮説を積み重ねる論理の詰めが正統派。『アドニスの花』光と影の対比の構成がそこまで鮮やかでは無いかな。『ガラスの家』駆け足感あるけど題名に綺麗に繋がる余韻。『一本の藁』松本の一人称ならラストのやりきれなさが更に活きたのに。『ある完全犯罪』二段オチの完全犯罪の意味がブラック。2019/02/13
マヌヌ2号
3
石沢英太郎が名手であることを思い知らされる一冊。石沢作品は、登場人物の人間性や心理を、幾つかの視点で多角的に描画するのがとても上手いんですが(『ブルーフィルム殺人事件』の解説ではそれを「立体的なリアリズム」と評している)、本作も例に漏れず、登場人物の感情が浮き彫りになっていく様に、胸を揺さぶられる作品揃いでした。全編素晴らしかったのですが、とりわけ、牟田刑事官シリーズのひとつである「五十五歳の生理」と、高級料亭の仲居の自殺を巡る「一本の藁」は、痛烈な読後感が胸の奥まで突き刺さる、文句無しの傑作短編でした2018/08/26
東森久利斗
2
❝所変われば品変わる❞、視線も変われば真相や容疑者、犯人も変わる? ダイバーシティな男と女の関係、日常に埋もれ隠された情念、その端緒が視線の奥底にふと垣間見える瞬間がスリリング。悪いことはできません、ホント…2018/02/25
Eri Asa
1
短編集。視線、ガラスの家が面白かった その犬の名はリリーはオチが読めてしまった その他の話もよくできてる。この作者の本探してみよう。2024/03/24
鳥居
0
短編集。どれもあまり読後感は良くなかったです。冒頭の表題作と最後の「ある完全犯罪」はともに銀行強盗もの。前者はタイトル通り、視線の動きだけで事件の様相が変わり始めるという秀逸なもの。2017/04/22